<あけましておめでとうございます、坂本龍一です>
2009年になりました。2008年は何だったんでしょう。微かに覚えてるのが、北極圏に行ったことかな…。2008年の後半はね、ずっとアルバム作りに没頭していたんですよね。今はマスタリング (最後のレベル調整・CDの工場に入れる前のプロセス) をやるだけになっていますけどね。今回の番組でも2曲、お聞かせできました。
<ニュー・アルバム『out of noise』>
(ちょっと大きな声で) できましたね。いやー、長かった。5年ぶりだそうですけども (笑) 。リリースは3月4日ですので、3月のRADIO SAKAMOTOで大特集をやりたいと思います。音楽のことを言葉で表すのは難しいんですけど、まずタイトルね… "out of noise" 。"art of noise" じゃないですよ (笑) 、意味は皆さんの想像にお任せします。
イギリスの古楽をやってるグループ : フレットワーク (Fretwork) 。彼らにどうしても弾いてもらいたい曲があって、10月か11月にロンドンに二泊でひょいと行ってきまして。初めてお会いするひとたちで、初めてのスタジオ、初めてのエンジニア。初めてづくしだったんですけど、和気あいあいとレコーディングは終わりまして。その後、パブに集まって雑談をしたりしている中で、不意にこの言葉が僕の口から出てきたんですね、"out of noise" 。
だから、そのときのレコーディングの風景というか皆さんの表情とか、パブでの雰囲気、等々を懐かしく思い出させるタイトルになってる訳なんですけども。もちろん、その情景だけのつもりじゃなくてね、いろんな意味を含めたつもりなんで、これは敢えて僕の口からは、粋じゃないんで黙っておきましょう (笑) 。
<北極圏での影響も反映されたアルバム>
前回も言いましたけど、アルバムの制作モードに突入した後に、それ以前から約束していた "北極圏への旅 (Cape Farewell) " というのが入っていまして…。中断されるのがとても嫌だったんですね。でも行ってみたら、すごい経験をしてしまいました。ちょっと言葉では言い表せないようなその、景色というか体験というか…寒さも含めてね。当然、影響を受けちゃったんですよね。
グリーンランドで録音した音も、とても面白いんでアルバムには入れてるんですけど、氷河の下を流れる水の音とか、犬ぞりの犬の声とかね…。でもそれらは体験した事のほんの一部にしか過ぎなくて。…うーん、いちばん度肝を抜かれたのは、その水と氷の "量" というか "巨大さ" というか "重さ" というか。それって、この地球を成している物質の一部なわけですけど…。よく地球というのは "水の惑星" と言われるわけですけど、ホントにそうだなと。その重量というものも、想像を絶するようなものだなぁと。でもなんでそのことに衝撃を受けるのか。という、その自分の中のことっていうのが、未だによく分からないんですよね。…ただ、衝撃を受けたのは事実で。そういう気持ちっていうのかな、当然、アルバムにも反映されているわけですけどね。
<5種類の形態でリリースします>
今回のアルバムは通常のCD版も、二種類ありまして。パッケージレスと言っていい、最低限、簡素にしたCDと、フル・アートワークCD (通常よりも少し豪華な情報や写真を詰めたもの) 、この二つの形態があります。それから僕の希望だったアナログ盤 (二枚組) ですね、これはどうしても出したかった。そして当然、ダウンロード版もあります。高音質のものと通常のMP3 (128kbps) のものと、二種類用意します。中身・音楽は全部同じですので、皆さんのニーズに合わせてお買い求めください (なんつって・笑) 。
アルバムのリリース後、すぐに日本でツアーを演ることになっています。"Ryuichi Sakamoto Playing the Piano 2009" 全国21公演。とても多いです。もしかしたら生涯で一番多いツアーになるのかもしれませんけども (笑) 。日本各地で美味しいものを食べられるのは本当に嬉しいですねぇ。ピアノを主体にしたツアーになります (ニュー・アルバムからも弾きますけどね) 。で、このツアーはですね、全公演のライブの音源を、終演後24時間以内に iTunes Storeで販売することになったんです。Appleさんの協力を得て、世界で初めてということで話題に (なっているのかな・笑) 。
<番組投稿オーディション総評>
今回はエントリーが少なかったです、音楽作品が約60。他、刺繍・映像作品などがありました。インパクトがあったのはね、土橋稔さんの民族系のボーカル (サンプリングだと思うんですけど) とかね、いいなと思いました。簾内ケ蟲さんのモールス信号とタイプライターなどを使った四重奏 (ジョンケージのような作品でしたが) …逆に新鮮でしたね。今回は投稿も少なかったんですけど、優秀作も少なかったです (苦笑) 。いま冬で、寒くて創作意欲が沸かないのかなぁ。みんな忙しかったのかなぁ…。次回、3月に期待します。
オーディション・コーナーで紹介した作品はこのサイトでも試聴できます。またコーナーは、全体を世界へ向けてポッドキャスティングでインターネット配信しています。すでに著作権管理団体に登録している作品の応募は受け付けられませんので、オーディションに応募される方はご注意下さい。
※オーディション応募作品をじっくりと聴けるポッドキャスティングは近々このサイトにUPされます。お楽しみに! |
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<新春にふさわしく「声の年賀状」が届いています>
「明けましておめでとうございます、細野晴臣です。2008年はね、何だかライブが僕は多くて、ずっと歌ってたような気がします。なんか歌手のような気持ちになっています。2009年の坂本さんに期待することは、3月にソロが出るでしょう。3月というとね、 (高橋) 幸宏も出るという話で、これはスゴイな・・・活発でいいですよね。元気なことが一番。誰よりもいっぱい音楽をやってください。僕も負けずにやります。えー、今年の抱負って言うのは無いんですけど、ぼちぼち予定が入ってるのをこなしてくという、割と作曲の依頼が多くて、昔に戻ってポップミュージックを作ってみようかなと。そして何よりも僕はソロを作りたいので、皆さんには遅れますが5月か6月には出したいなと思ってます。また一緒に何かやる機会があると思いますが、よろしく」
—— 若々しいですね。歌手、細野さん。2009年はじまったばかりでわからないですけど、また何かできたらいいなと。三人ともポジティヴに思ってますけどね。
「えー、坂本くん。いや教授。高橋幸宏です。新年あけましておめでとうございます。なんで新年って明けるとおめでたいんでしょうね (笑) 。とりあえず謹賀新年、ということで。教授もソロ・アルバムが出来上がって、今年は発売日が近いですね。店頭で展開しやすいというウワサがあるので、お互いがんばりましょう (何をがんばるんでしょうねぇ、プロモーションですか・笑) 。とにかく、久しぶりのソロ・アルバム、教授のも楽しみにしています。僕のも暇なときに聴いてやってください」
—— いろいろ分からない幸宏さん。僕も分からないことばかりですよ (この金融危機も分からないし) 。まぁ、あのー、だんだん年とってきてね、忘れっぽくなっているので、せっかく2008年・・・ロンドンとヒホンでYMOとしていいコンサートが出来たので、忘れないうちに今年も何かできるといいんですけどね。ロンドン公演を観たプロモーターの方々から "こっちにも来てくれ" というお声もかかっているのですが、幸宏さんは飛行機が怖いということで、ツアーが苦手な二人だし大変なんですけども。
なんかKRAFTWERKとYMOと、何かな・・・往年のテクノ・グループ (往年のっていうのはイヤだけど・笑) を集めて、一大イベントをやろうという企画がイギリスにあったんですけども、お金が集まらなくて、今年はスキップして来年やりたいなんていう話がありますけどね。
「みなさん、あけましておめでとうございます。コトリンゴです。去年はいろいろなことを経験させて頂きました。ミニ・アルバム、セカンド・アルバムもリリース。ロハスクラシックにも参加させて頂きまして。あとは先月、九州カフェ・ツアーなどもやらせていただきました。バンド・ツアーでのライブも経験しまして (バンドはメンタルが強くないとダメですね) 。えっと…2009年の抱負を発表します。漢字一文字で言いますと、柔らかいという "柔 (じゅう) " です。いつも柔らかく対応したいなと思ってますが、いろんな所にもっと柔らかさが出るといいな、と思っています。硬さも出たらいいんですけどね。新しい曲もどんどん作っていきたいなと思っています」
—— 元々、かなりふわふわ…一見ふわふわしているようですけど、実はコトリンゴの中身は "剛" な女なんじゃないかと…私は睨んでいますが (笑) どうなんでしょう。そしてカールステン・ニコライとバイトーンことオラフ・ベンダーからも声の年賀状が届きました。先日、来日していたみたいだけど、ほんとに彼らはいつもノリノリで、日本が大好きなんですよね。
いやー2009年始まってしまいましたね。どうなるんでしょうか。1月20日オバマ新大統領の主任式ですけど、無事に滞り無く行われるといいですが。2009年が皆さんにもいい年になりますようにお祈りしています。次回は3月8日放送の予定です。それでは! 坂本龍一でした。
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