RADIO SAKAMOTO


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本年もよろしくお願いいたします 2020 RADIO SAKAMOTO

「坂本龍一です。2ヶ月に一度お届けしているレディオ・サカモト。もう本当にLAZYね……2ヶ月に一度ですよ。こんな番組、珍しいですよね。あんまり他にないですかね。皆さん、お元気でしたか。なんともう新年ですよ、2020年。僕だいたい、新年を迎えると、ああ今年も終わったな、という気分になるんで……もう僕は、気分は2021年なんですけども、それは置いておいて。皆さんは、お元気でお過ごしでしたか。またお会いしましたね。今年もよろしくお願いします。さて、えー今年最初のレディオ・サカモトはですね、六本木のJ-WAVEのスタジオからお届けしています。」

「今年も恒例ですね、新春放談。1組目は、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん。2組目は、メディア・アクティビストの津田大介さん。放談ですからね、もう言いたい放題。漫談というか、放談というか。対談にもなっていない。台本なしで、思いつきで好きなことを喋るという。」

<新春放談「ウーマンラッシュアワー村本大輔さん」>

坂本「今夜1組目のゲスト、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんです。」
村本「あ、お願いします。初めまして。お願いします。」
坂本「お願いします。初めましてですね。僕はあの、テレビとかYouTubeとかでお顔は見て、漫才も見てるんですけども。」
村本「本当ですか。」
坂本「別にここは、あの、なんていうのかな。生の村本くんをえぐってやろうとか、そういう企画では全くなくて(笑)、ただ会って、何となく話してみたいなと思っただけなんですけど。」
村本「はい、ありがとうございます。」
坂本「僕、別に普段、お笑いとか全然フォローしてないんですよ。」
村本「はい。」
坂本「で、ニューヨークに住んでるんですね。でも、そういう人間にも、村本さんの名前が届いてきたんですね。で、あの、見てみたいなぁと思って。」
村本「本当ですか。ありがとうございます。」
坂本「YouTubeで見られるものは全部見たりして。」
村本「はい。」
坂本「アメリカに来てたんですか?最近。」
村本「アメリカに一ヶ月間、行ってました。一ヶ月間のなんかこう、ドキュメンタリーを撮りたいと言って、テレビ局の人が密着したい、と。"アメリカの挑戦"みたいな。」
坂本「うんうん。」
村本「それが決まってたんですけど、ちょっとTwitterで「大麻を合法化した方がいい」って言ったら、テレビ局の人から「ちょっと今回ナシで」言われちゃって。」
坂本「あ、その企画流れちゃったんだ(笑)。」
村本「それで一ヶ月間、休みになっちゃって。」
坂本「時間があったんだ、それ用に。」
村本「はい。それだったら、これでアメリカにプライベートで行って、そのことをちょっと英語にして、喋ろうと思って。で、劇場飛び込んで、やってきました。」
坂本「なるほど。すごいですね。noteをやっていますよね。」
村本「noteで書きました。」
坂本「noteで読みました、その時のようす。まずどこ行ったんですか。」
村本「まずLA行って、LAで色々、コメディストアっていう有名な劇場があって、そこでお笑い観に行って、で小さな劇場で試して、そのままテキサス行って、テキサスの語学学校行って。」
坂本「へえー。」
村本「劇場出て、またニューヨークに戻って、ニューヨークで最後、劇場また何個か出て、やってきました。」
坂本「英語は少し、話したり聞けるようになったりしたんですか?」
村本「いいや、もう全然。あの、コメディアンが使う英語はスラング…………ですので。」
坂本「そうですね。」
村本「この学校で先生がすごい汚い、授業で教科書にないやつを教えてくれて。」
坂本「いい学校ですね。」
村本「そうですね。」
坂本「汚い言葉を教えてくれる。」
村本「特別に、芸人になりたいんだったら、汚い言葉を覚えなさい、みたいなことを、すごい……」
坂本「いい人、その先生。ま、その辺、お笑い万国、どこでも世界共通かもしれないけど、スレスレのことを言うから面白いっていうことありますよね。別にまともなことを、誰かが喋っても面白くないもんね(笑)。」
村本「確かに。え、坂本さんは、僕の何に……呼んで頂いた?」
坂本「うーんとやっぱり、すごい漫才の世界でトップのところまでいっているのに、こういう社会的な関心があるというのは、他にいないじゃないですか。僕が子供の時に、コロムビア・トップ・ライトっていう人がいて、知らないと思いますけど(笑)……多少、そういう時事ネタを言って、皮肉を言ったりしてたんですけど、その程度で、まぁアメリカを実際に見て感じられたかもしれないけど、アメリカって今、トランプ大統領じゃないですか。」
村本「はい。」
坂本「稀に見るルール破りの大統領じゃないですか。本当に就任する前から、深夜11時半くらいかのお笑い枠で、各局、徹っ底的にやっつけるんですよ。」
村本「うんうん。」
坂本「で、現職の大統領になっても全然止まらずに、もう、おちょくりまくる訳なんですよね、今でも。だからトランプで食わしてもらってるとも言えるんだけど(笑)、全然日本と土壌が違うんですよね。だからその中でひとり、今思ってたのが、そういう問題を取り上げているのは、ものすごく僕は嬉しくて。まぁアメリカ目線っていうこともあるのかもしれないけど。」
村本「不思議なもんですよね。なんかこの、それこそ『THE MANZAI』という漫才の番組で、例えば、朝鮮学校とか沖縄の辺野古とか、ああ言ったことをぽぽっと入れるだけで、なぜかお客さんはお笑い番組で笑っているのに、終わった後にいろんな芸人達から、あれ怒られたの?とか、あれなんて言われたの?よく放送したね、ってよく言われるんですけど、何も……あるものをあるって言っるだけで、なぜそれを怒られるのかが分からなくて。」
坂本「うんうん。」
村本「あるものをあって、ちゃんと笑いをとってたら、あるものはあって、ないことを言うんだったら分かるんですけど……ただある現象、事実じゃないですか?この一つの方向からみた。周りの芸人達が、大丈夫?とかって言ってくることへの違和感の方が強くて。」
坂本「なるほどね。」
村本「マニュアルで例えばルールブックがあって、この言葉を使っちゃいけませんよ一覧があって、そこに「朝鮮学校」とかいっぱい入ってたら、分かりますけども、誰かが勝手に、皆の中でやめよう……」
坂本「皆、自主規制なんですよ。その基準が分かんないですよね。」
村本「はい。」
坂本「その年、その時の気分ですよね。」
村本「勝手に皆が、時速60kmで走ってるから、70km出した瞬間に、「70km!?」って言うけど、ねえ、どこにも道路標識はなくて。不思議な……」
坂本「違反ではないですよね。でも実際そういう、あの、時事ネタを取り上げる時も、お客さん笑ってますよね。」
村本「笑ってます笑ってます。」
坂本「ウケてるんですよね。」
村本「ウケてるんです。だから、笑えないって言っている人は、その人のことがちょっと見えて。」
坂本「そうですよね。」
村本「ちょっとスケッチできて、こういう人なんだなっていうことを勝手に想像するのが面白いですね。」
坂本「うん。引いちゃう人とか、笑えない人は、そういう人なんだなっていう、そのリトマス試験紙のような感じにもなりますね。」
村本「これがおもしろいですね。原発のネタをやって、もちろんウケたんですけど、ウケた後に年配の男性が、「あんな政府芸人を出すな!」みたいな、クレームみたいなことがあって。で、まったく違うときには、おじいさんが事務所に来て、「あいつを絶対守ってやれ!」みたいな事、言うひともいるんですよ。」
坂本「おおー、面白いね(笑)」
村本「すごく両極端でなんかね……なんか自分自身がいつの間にか原発みたいな存在になってて。」
坂本「何言ってるんですか(笑)」
村本「あいつをなくせ、とか、必要だ!みたいな、そういう現象が面白い。」
坂本「放射能じゃないけど、放射力が強いって……そりゃもう芸人としては、もう本当にめでたいことじゃないですか。」
村本「確かに、はい。」

坂本「もともと普通に、何千人もいるらしい、そのお笑いの学校の生徒さんだったんでしょう。」
村本「そうです。30になったら、お笑いを辞めるっていう約束を。」
坂本「誰としたの?」
村本「家族に。福井の田舎で……早く諦めて田舎に帰ってきて。」
坂本「あーそういうことか。」
村本「それこそ、親父から原発のコネがあるから、そこで働ける話なんかも聞いたりとかして。」
坂本「何がきっかけだったの?」
村本「なんかこう……違和感はずっとあったんですよ。この漫才とかマイク通して喋る時の、嘘を……つくというか、笑いをとるという事に対して、「俺、昔野球選手なりたくて、一回ちょっとまたやりたいから、練習してみていい?」とかって漫才で言うんですけど、じゃ、バッティングセンター行け!って思う訳ですよ、嘘つけって、すごい思う訳ですよ。そいう違和感がずっと漫才とか、テレビのバラティエ見てて、なんか人形劇見てるような感覚になってきて。でもマイクの前では、自分の思ってることは、その時は政治的なこととか一切……政治的という言い方も嫌いですけど、ま、自分が思っていることを漫才にしてたんですけども、あるきっかけで、ジャーナリストの堀潤てという人がいて……」
坂本「友達です。」
村本「あ、そうですか!堀潤と番組一緒になって、で、僕はその時ニュース番組に、「知らない人代表」みたいな感じで出させてもらって、で衆議院と参議院の違いなんかも全然知らなかったんで、いい年なんですけど、それを教えてもらってもいいですかって、それを堀潤に言ったら、夜中の2〜3時くらいまで、お酒飲みながらずっと色んな原発の事とか教えてくれて、で、面白くて、沖縄の話をすごい、ちょっと怒りながら喋った事が印象的で。」
坂本「堀さんがね。」
村本「堀さんが。で、ちょっと漫才にしてみて、その時のネタが「思いやり予算、沖縄にも思いやりを持て」みたいな感じのやつやったんすよ。それを沖縄の劇場でやったら、拍手が止まらなくなって。」
坂本「すごい。」
村本「初めて、お笑いで「あれ?何この感じ……」、ウケるんですよけど、沖縄のお客さんの拍手が止まらなくなって。初めてそういう光景を見て。」
坂本「なんかグレードの違うウケですよね。」
村本「それこそスタンドアップコメディとかの、トランプをバーンってやって、黒人とかのコメディアンの、内側からドーンっとくるような、ものを味わっちゃって。で終わった後、音響さんの沖縄の人が追いかけてきて、僕の肩掴んで、目に涙を溜めて、「ありがとう。」って言われたんですよ、それが印象的で。それを堀潤に喋ったら、堀潤が「良かったね。」って泣いてたんですよ、酒を飲んで二人で。そんなに喜ばれることがお笑いで、今まで面白いってのはあったけど、面白い+ありがとう、というのはなかなか。」
坂本「そうか。お笑いで、ありがとうってなかなかそういうリアクションないかもね。」
村本「触れてこなかったものが、マイクの前にあるなと思って、そこからなんかこう。」
坂本「それが何年くらい前ですか?」
村本「これが3〜4年くらい前ですね。」
坂本「わりと最近なんだね。」
村本「海外のやつをみたら、海外じゃ、結構当たり前になってて。」
坂本「当たり前だよ。そのガツンていうのがウケるんですよ。テレビでもやってるからね、そのガツンもね平気で。」
村本「スティーヴン・コルベアとか。」
坂本「そうですそうです、その通りです。いやー、面白いなぁ。後続部隊が続くといいんだけどな。」
村本「いや、僕も思うんすよね。結局、ビジネスになれば流行るんじゃないかなっていう……原発なんかも、結局、原発の利点で金が生まれるから。こういうお笑いなんかも、あれ、こいつスターになってんじゃねえかって。 」
坂本「コルベアだってそうですよね、トランプをネタにしてウケてる訳ですから。」
村本「はい。」


<『社会がもうボケてる、芸人がボケなくても。』>

坂本「あの、僕もYouTubeいくつか観させてもらって、本当に……喋りの天才なんですね。」
村本「いえいえいえ。」
坂本「すごいですよね。子供の時からそうじゃないでしょ、生まれもったものもあるかもしれないけどれど。ものすごく磨いた訳でしょう、自分で。」
村本「いや。え〜。練習とは全然してないですけど、本当に感情が乗れば、みんな本気で喋れば、伝わると思うんですよね。本気で喋ってないことなんか、嘘っぽい会話がなんか多くて……」
坂本「でも、それは社会全体に言えませんか?」
村本「はい。」
坂本「予定調和的な会話で。僕はそれが嫌で、こういうのやってるんですけど(笑)」
村本「本当の話を今日はしたくて……せっかく一分一秒もったいない。」
坂本「そうなんですよ。そのネタっていうのは、ほとんど村本さんが考えてるってnoteにも書いてましたよね。」
村本「そうですそうです。相方も付け合わせみたいな……パセリみたいな感じに見て頂ければ。一応、彼がいるからパッとこう彩りが出てるんで、彼ももちろん必要なんですけど。 」
坂本「うん。もちろんね。普段話したりするんですか、あんまりない?」
村本「普段めっちゃくちゃ喋ります。それこそまあでも、沖縄の話とか、そういった福島の話とか、漫才に出てくるようなことは、彼は全く興味がないらしいので、なのでちょっと漫才には、僕がちょっと喋らせてもらって、その中で、視聴者と同じ顔をしてもらえば……」
坂本「あ。でもその役割は良いかもしれないですね。」
村本「ワイプみたいな、こういう顔ですよっていう感じ。」
坂本「ちょっと酷くない?(笑)でもその関係がなんか見ていて、凄くいいなって。」
村本「これがベストの形です。」
坂本「長く想ってるしね。」
村本「はい。」
坂本「noteでも、本当に相方のことを気遣って書いてるのが、すごくグッときました。」
村本「あ、本当ですか。ありがとうございます。読んで頂いてるんですね。」
坂本「読んでます(笑)、ポチっとおひねりも押したり。」
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村本「あ、本当ですか!ちょっと見てみます!」
坂本「原発もあるおおい町(福井県大飯郡)の出身でしょう?まぁ、あそこの若狭湾、原発天国じゃないですか、もう。」
村本「はい。もんじゅが廃炉になってから、屋台がほとんどなくなって、もんじゅバブルで店をバーっと始めた人が、全員、職失ったという話をきいた時に……」
坂本「あとは、宿とかね。」
村本「宿とか。僕の友達も宿やってるんですけど、3ヶ月間、大飯原発が稼働停止した時に、もう本当に大変だったっていう話……もうちょっとで廃業するところだったって聞いた時に……」
坂本「だから、続けろって言う人もいるんですよね、地元には。」
村本「そうですね。」
坂本「職がなくなるから。でも、それもなんか本末転倒な気がして。その代わりの職って、いくらでも考えられるような気がする……例えば、今アメリカだと、グリーン・ニューディールといって、20代の女性の(アレクサンドリア・)オカシオ゠コルテスというのが議員になったんですけど、要するにエコでたくさん産業を起こして、大量に雇用を送出しよう、と。グリーン・ニューディールっていうのがあるんですけど。」
村本「へぇー。」
坂本「それは絶対出来ると思うんですよね。」
村本「僕のこの怒りというか、そういうネタのあれは、福島の原発の事故があった時に、なんか東京の人が、「いや〜本当怖かったよね。でもここまで放射能こなくて良かった。」って言ってて、その「ここまで来なくて良かった。」っていうこの言葉とか、あと北朝鮮がミサイルを撃ってきたら、原発に……っていう話があるじゃないですか。その時に、SNSをバーっと見てた時に、「でも、だいたい原発は田舎にあるから、(被害が)最小限で済む」とかって言葉なんかをこう、見る訳ですね。」
坂本「酷いね……」
村本「その時に、ちょっと待ってくれと。原発必要だって時に、そこの犠牲に対しての感謝が……」
坂本「沖縄基地と同じ、見方としてね。本土からの見方として。」
村本「そうですよね。だから僕は本当に台風19号の時のホームレスが避難所から追い出されたやつも、あれも、避難所の人っていうのは安心を求めていく訳だから、そこにホームレスが来たら、ホームレスが来るということの不安が来て、だからホームレスを追い出したら安心出来る。でもその安心というのは、ホームレスの安心を犠牲にして、自分達が安心してる。それを追い出されるやつが悪いとか、基地を作らないといけない状況にある町が悪いとか、原発の町が悪いとか、このなんかね、お前らの自己責任論に仕立て上げる感じがして。いやいや、なんか安心とか安全への感謝というのが、全然見えなくて……」
坂本「生まれる場所は選べないしね。親も選べないしね。東京にいるのはほぼ偶然に近いんで……そんなことを傘に着て、文句言うなって言いたいですね。」
村本「仰るとおり。それがもうね、でもこれまた難しいもので、僕の弟自衛隊なんですよ。」
坂本「ま、田舎は多いよね。」
村本「で、親が結構、自衛隊で原発の……で、僕は自衛隊員としての彼じゃなくて、家族としての彼として見てるんで、もう自衛隊なんか俺はいらないと、国を守りたくて入ったんじゃなくて、給料が良かったり……」
坂本「まぁ、就職だよ。」
村本「就職じゃないですか。まさかそんな……ね。」
坂本「戦争になるとは思ってない。ほんとにね、ほとんどの人はね。」
村本「思ってないじゃないですか。いやな〜みたいなことを、漫才とかテレビとかでも、『朝まで生テレビ!』に出た時に、俺はもう、尖閣諸島をそれだったら俺はあげてもいいってことを言った訳ですよ。弟が銃を持つぐらいなら……」
坂本「戦争になるくらいだったら。」
村本「なるぐらいだったら。そういう話を弟と一緒に二人で飲んだ時に、どう思う?って言ったら、まぁお酒の勢いで、弟も結構お酒飲んでて……「まぁ、いろいろ言われるよ、自衛隊で。」とかって、僕が発言するたびに。」
坂本「あぁ、そうか(笑)。仲間上げする度に、上官とかね。」
村本「そうなんですよ。」
坂本「それは居心地悪い、可哀想(笑)。」
村本「で、親父は親父で、地元で多分何か言われてるかもしれない。そう考えた時、俺はもう……もう、すまん!と。」
坂本「あのね、キリスト教を作ったイエス・キリストっているじゃないですか。」
村本「はい。」
坂本「あの人は、キリスト教の創始者だけど、彼自身はユダヤ教徒な訳ですよ。で、ユダヤ教徒の村で生まれて、周り全員ユダヤ教……まだキリスト教がなかったから、あの人が生きてた頃は。死んでから出来たんで。」
村本「へぇ。」
坂本「で、だけど自分は預言者だって言ってある日、30ぐらいで。イスラエル中をこう歩く訳ですよね。で、またある人達は、ほんと「預言者、来た!」と思って、信じてついて来ると。で、ある日、自分の村に帰るんですよ。そうすると、自分の村では、「あいつは、あそこの大工のヨセフの倅じゃないか。何なんか髭なんか伸ばして、預言者なんて言ってんだ、あいつ。」みたいな事を言われるわけ、村で。あぁこれはダメだなぁって思って、自分の生まれ故郷はダメです、と。」
村本「自分の生まれ故郷はダメだと。」
坂本「もうダメだと。そんな家族なんてダメだと、捨てろと。」
村本「ええ!?」
坂本「そういう過激なことを言ってるんだけど(笑)、まあ、そういうことになってるんです、村では。」
村本「へぇ。」
坂本「面白いなぁと思って、それを今思い出しちゃって、今。もちろん家族関係ね、大事だし、弟のことも大好きなんだろうけど、まぁあんまり気にすると、自分の芸が鈍るので……」
村本「それもう言いました。お兄ちゃんもう、我慢できへんと。もうこれ言わずには、俺もう昔から何かあると言わずにはいられないんですよね、こう何でも。」
坂本「でも、きっと自衛隊の弟も、尊敬していると思いますよ。」
村本「本当ですか。」
坂本「うん。」
村本「なんか、ニューヨーク行った時に面白いネタ聞きましたよ、なんか芸人の。」
坂本「何ですか。」
村本「そのキリストがなんか、さっきの大工のやつで、こんなネタやってると。……なんかこう十字架にやられた時に、大工の息子だからそこは釘の打ち方違う、みたいな事を言うってネタ、アメリカ人が言ってましたよ。」
坂本「それね、あの、アメリカって、多分普通の日本人が想像しているよりも、遥かにキリスト教国なのね。もちろん、憲法で、宗教と政治は切り離されているんですけど、日本と同じように。もう本当にクリスチャンの信仰が強くて、30年前に初めてアメリカに移住して住み始めて、ちょっと田舎の方に住んでたんですけど、もう本当に保守的ですから。怖いぐらいに。」
村本「へぇー。」
坂本「今ではやっぱり、真ん中の広大なアメリカのトランプを支えている人達は、そういう人達が多い、ね。」
村本「中絶禁止とか、そういうのも……」
坂本「学校で進化論を教えない訳ですからね。ということは、神が何年前に創造しました、っていう教科書を教えてるようなところが、未だにたくさんありますから。」
村本「日本は全く、そうないじゃないですか。あんまり滅多に、宗教の話は聞かないじゃないですか。」
坂本「そうだね。強いですよ。」
村本「それは、何を信として、日本人というのは生きるんですかね。」
坂本「そこですよ。そこですよね。逆に。向こうは、絶対信じているものが強くまだある人がまだ多い……アメリカはね。ま、ヨーロッパの方がかなりこう、それは下がっているんですよね。アメリカの方がそう信仰深い人が多い、不思議なことに。」
村本「日本人は何を……?」
坂本「まぁほら、全部……神仏習合ですから、何でもありですよね。こう、折衷して、全部こう追撃されても、誰も問題にしないっていう(笑)。」
村本「いや、僕この前、感動したシーンがあって。この前、天理大学に学園祭で呼ばれて、学生がばーっていたんですけど、相方が「みんな、天理教なん?」ってでかい声で言ったんですよ。」
坂本「(笑)」
村本「その時に、えっ?と思って、みんな天理教?って言って、「あ、天理教です。」とかって学生が「こんなストレートな男、初めてだ。」みたいな空気で。」
坂本「あ〜なるほど。」
村本「「え、これって天理教推薦?」とかって学生に聞くわけですよ。「いや、まぁ、推薦もありますね。」とかって……」
坂本「おばあちゃんもお母ちゃんも天理教でしたみたいな(笑)。」 
村本「え、どういう?……「信仰してる心が強い人とか」ってある学生が言った時に、相方が「え、あれ、じゃあハマってるもん順?」」
坂本「(笑)」
村本「そのハマってるとかっていう言い方(笑)……と思ってたら、学生がなんか「面白いっすね。天理教パーカーをあげましょう。」つって、なんかね学生祭で使った、”天理教大学”って背中にでっかく書いた、赤紫色のパーカーを……」
坂本「僕、紫じゃないかなぁって思いました。」
村本「それを相方がもらって、それを毎日のように着てるわけですよ。」
坂本「えぇ、天理教(笑)」
村本「何が面白いって、彼は創価学会なんですよ。」
坂本「えぇ!?(笑)」
村本「創価学会の男が天理教パーカーを着ながら、でも、創価学会も、その先輩に言われて無理やり入れられてるんですよ。自分から入ったわけじゃないんですよ。ちょっと入ってくれへん?つって、別にええよ〜つって入って、天理教パーカーを着て歩いてるわけですよ。」
坂本「面白いなぁ。」
村本「これがねえ、また名前が「パラダイス」つーんでね、またね、色んなものが変わってる。もうずっと、それを僕が一個感動したのが、「天理教なん?」って普通に聞けることが実は普通なのに、さっき言ったクリスチャンと一緒で、大丈夫か?って思うこと自体もあるのかなって……」
坂本「ちょっとこっちもね、ビクッとしますよね。」
村本「ビクッとなる。」
坂本「この社会ではね。」
村本「そうなんですよ。これは何なのかなっていうね。」
坂本「でも、ま、むしろアメリカやヨーロッパとか他の国では、いろいろな宗教を持ってる人がいるのは当たり前だから、イスラム教徒もいるし、お互いにクリスチャンなのか?とか、或いは会話の中でそれを確かめ合ったりとか。それが普通ですよね。だから別に聞いても全然おかしくないし。」
村本「そうなんですよね。」
坂本「うん。」
村本「これちょっと……。カナダのトロント行った時に、トロントのお笑いの劇場でもネタやらしてもらったんですよ。これ日本語で、日本人を集めてやったんですけど。トロントの劇場にトイレが男女一緒で、1個だったんですよ。「え、これ男も女も一緒?」つったら、「やっぱLGBTの人とかいるから、だから1個なんだよ。」つった時に、よしもとの劇場のトイレも1個なんですよ。」
坂本「(笑)」
村本「1周差ついてるんすよ(笑)。これはもう作る予算の問題で1個で、向こうは一周して1個なんですよね。」
坂本「そうそうそう。」
村本「その時に、「あ。ちょっと、色んなものが一周差ついてんな。」と思って。」
坂本「ついてますねぇ。結局、男女だけでは分けられない人がたくさんいる、という社会的なコンセンサスが出来つつあるので。でね、うちの息子はアメリカの大学に行ったんですけど、大学のクラスメイトで、「今日は俺は、男なような気がする。でも明日は女かもしれない。」……自分でもどっちか決められない人もいるんですよ。で、それも認められてるんですよね、もうもはや。でも、やっぱりその南部とか保守的な州に行くと、そのLGBTの人が、例えば一応見た目が男性の人が女性トイレを使ったりするとダメみたいな問題も、今でも、まあアメリカでもあります。」
村本「それこそ保守っていうのは、たまに僕も思うんですけど、僕の地元の福井で長男が家を継ぐっつって言うんですけど、でも僕は長男なんで大阪に行くって言ったら、そうなったら代わりに次男が継がないといけないような感じもあるんですよね。」
坂本「はい。」
村本「そうするのって、他の家も「だったら俺も俺も」ってなる可能性があるということへの怖さ、崩壊するんじゃないかと。お笑いでも、こういったことをやると、今までお笑い漫才はこれでやってきたのに、急にそんなものを入れると……という恐怖を恐れる人達がいる……」
坂本「みたいですね。でしょうねきっと。」
村本「崩壊することを……恐れる。」
坂本「それは人間の中にもそれはありますよね、確かにね。誰にでもあるでしょうね。だけどまぁ、もう出来上がったがんじがらめのものを、壊して、もっと風通しを良くするという事に気持ちを感じる、というのも誰にでもあるだろうし。あまりにもやっぱり今の日本社会って、僕があの若い時、10代、子供の時よりも、遥かに息苦しく感じるんですよね。」
村本「そうですか。それは、坂本さんが色んなことを知ったからではないんですか?」
坂本「うーん、それも、歳のせいもあるかな。だけど確かに僕は子供時代の、(村本さんが)生まれる前だったと思うんですけど、60年代、70年代ちょっとぐらいは、ものすごく自由で、もしかしたら聞いたことがあるかもしれない……クレイジーキャッツってお笑いの集団がいたんですけど、戦後に。本当に無責任で自由で気ままで何言ってもOKみたいな。あれが戦後の日本の自由な空気の、僕にとっては象徴なんですけど。そのお気楽な時代、もちろん見方によっては、それはでも、アメリカの軍事戦略の傘の下でね、のうのうとそんな自由を満喫していい気なもんだ、というような批判も出来るんだけど、本当に自由でしたね。今は息苦しく感じます。」
村本「自由というのは、この、思想とか……」
坂本「思想も自由だし、言いたいことも自由。だけど逆に言うと、やっぱ戦後すぐだから、今よりも言ってみれば、その家制度とか上下関係とか、強かった面もある。それと自由さが共存してたのが面白いなぁと思うんですけどね。」
村本「たまに思うんですけども、不自由の中にこそ自由があるんじゃないかと。」
坂本「それもありますよねえ。」
村本「すごくこの、これやっちゃダメだ、あれやっちゃダメだ、の中にこそ。一回、忌野清志郎さんがなんかこう、歌でなんか「FM東京〜」みたいな悪口をずっと言うやつを、動画で見た時に……」
坂本「友達でしたから(笑)」
村本「あ、そうですか。ああいうちょっと、言論のテロリスト的なやつは、本当になんかこう、僕も今回の『THE MANZAI』で……ちょっと前ぐらいにファッションショーの動画を見て、ファッションショーをずっと女の人達が歩くわけですよ。普通の服を着て。なんの派手な服も着てないんですけど、普通のジョギングウェアとか着て歩いて、でファッションショーを終えるんですけど、終わった後に、バーンと画面暗くなって、「この服を着て女性たちはレイプをされました」って出てくるんですね。ハッとする訳ですね。まさか、皆ファッションショーだと思ってて、そういうのって漫才だと思って、わーっと来た時に、急にそういうのパーンと頭に落としてやる、みたいな。」
坂本「できるね。」
村本「なんかちょっとね、エンターテインメントっつーのは、エンターテインメントだからって言うけども、エンターテインメントやから……こそ可能性があるわけなのに。」
坂本「ありますね。」
村本「それがエンターテインメントだから、になってる感じがして。」
坂本「笑えるからこそ、ね、真面目な場では言えないこともたくさんあると思います、うん。そういう役割じゃないかな。大体あの、トリックスターという言葉を聞いたことがあるかしら?」
村本「知らないです。」
坂本「例えばね、真面目なシェイクスピアの悲劇、みたいなものがあります。それの幕間に、トリックスターと言われる、道化のようなもんですね……が出てきて、めちゃくちゃね、かき混ぜるんですよ。真面目な芝居の途中に。」
村本「へぇ〜。」
坂本「で、それのかき混ぜ方も、例えばシェイクスピアだとしたら、聞いているのは王侯貴族……もう徹底的にいじるわけ。もう本当に危ないぐらいに。それで王様に本当に怒られちゃったら、そいつ処刑になっちゃかもしれないけども、そういう役割っていうのは西洋にもいるんですよ。で、日本で言えば、狂言みたいなことで……狂言回しって言いますよね。能っていうのは、すごく重くて、神秘的な静々としたものだけども、そこにまた狂言が必ず入って、聞いてる大名方とか貴族の方達をいじってしまうという。」
村本「へぇ〜。」
坂本「そういうのやっぱり日本にも昔からある。だから、お笑いっていうのは、やっぱり世界共通、普段みんなが思ってても言えないことを、敢えて言うという、そういう役割は絶対あると思うんですよ。」
村本「坂本さん的にこう、ずっと日本のテレビとかメディア見てて、なぜこう……僕は感じないわけですよ。その、あの人にもこの人にもその人にも、それは彼らはいつの間にかそうなったんですか。それとも、そういう人がそうなっただけなんだけすか?」
坂本「そういう人が、まぁ、局も扱いやすいしね(笑)……あの、危険のない人を出すんでしょうね。もう本当に予定調和な、誰もが同じような答えを出すことを言う人が便利なんでしょうね。でもまぁ、つまんないよね、見ててもね。」
村本「つまんないです。面白いのは、例えば、よしもとの上の大御所の悪口というか面白くネタにしてたんですけど、舞台で言うじゃないですか。その時にお客さんが「えぇ、大丈夫なの?」みたいな。いや、あんたらの先輩でもないのに、なぜこっちの上下関係を心配するのかというぐらい……」
坂本「もう、社会全体がそうなってるわけ。」
村本「後輩とか下に言うと、笑うんですよ。これが不思議な。上に言ったら一緒に怖がって。だからやっぱ何かしら……弱いのかなこの国の人はっていう。本当に強いやつは、常に上にいくんですが。下に言うことは……」
坂本「例えば……80年代の『THE MANZAI』という番組の方で、出たことあるんですよ、実は(笑)。」
村本「えぇ、本当ですか。」
坂本「そのたけしさんとかさんまさんとかと絡んで。何でって言われると何でなんだけど、なんか……別に面白いこと出来ないんですよ、この喋りだし。90年代は、ダウンタウンの番組出たりしたこともあるんですね。だからそれなりに、少しずつ日本のお笑いの移り変わりってのを見てきたんですけど、見てはいるんですけど……90年代ぐらいからかな、そのねテレビでも、弱いものをいじめて皆で笑うみたいな。多分、生まれてから、見てきたお笑いっていうのは、そういうものばっかりだったかもしれませんけど……」
村本「まぁ確かに、えぇ。」
坂本「以前はそんなことなかったのに、なんか90年ぐらいから、そういう風潮になってきたの。で、どんどん弱いものをいじめて、あれは残酷だなぁと思って、僕があんまり好きじゃなかったんだけど。やっぱり今言ってた、上、下っていうのか。下は扱ってもいじっても、皆平気だっていう……まだありますよね、全然。」
村本「ありますね。アーティストって言うのは……スタンドアップコメディとか海外のやつを見たときに、なんか、コメディアンが自分のことをアーティストって言ってもお客さん笑わないわけですよ。でもここだったら、「芸人がアーティストって……」ってなったりするんですよね。でも表現することは、自分の笑いを通してやるだけの話なのに、そのなんか、歌手は歌うし、絵描きは絵描くし、お笑いは漫才やりゃいいのに、いつの間にかテレビの方でバラエティをやる。テレビに出なくなったことを「消えた」っていう人がいるんですが、そもそも、彼らがマイクの前から消えただけの話であって、なぜかこっちにいて表現している人が芸人じゃなくて、お笑いタレントの方が芸人みたいな価値観の方にすれ変わってった感じがして。」
坂本「テレビに出てる人がね、活躍してる人でね。」
村本「それはそれでいいんですけども、アーティストでいたいわけですよね……こう、表現したわけですよね。なぜ、アーティストじゃなくなったのかっていう。」
坂本「いいんじゃない。最初にも言ったんだけど、僕はただの音楽家なので、その何もその、社会的なこととか、社会に出て文句をいう必要もなくて、文句を言わなければTwitterで攻撃されることもなくて、原発のことだって黙ってたっていいんですよ。わざわざ出ていって、なんか集会行ったりしてね、マイクで喋ったりして、批判されるの分かってんのに。で、やらない人がほとんじゃないですか。」
村本「ええ。」
坂本「そもそも音楽家が音楽やってるだけでいいんだったら、こんな嬉しいことはないんですよ、僕も。別にわざわざやりたくはないんですよ。でも、いる人が少ないし、実際、これおかしいと思う事が、もう世の中たくさんあり過ぎるんで、つい言っちゃうんですよ、僕は。自分を抑えられれない。そこは、ちょっと似てるのかもしれないけど。それだけのことなんですよね。」
村本「僕はもう面白い、ずっと面白い。世の中がそういうのが面白くて面白くて。脳性麻痺のちえちゃんっていう女の子がいて、バスの中でたまにおばちゃん達が、この子が足引きずって歩いてるから、「どうしたの、可哀想。」って言うんですって。「可哀想。もう代われるものだったら代わってあげたいわ。」とかって言われるんですって。で、ちえちゃん毎回心の中で、「そもそもお前とは代わりたくない」と思ってるんですって。」
坂本「(笑)」
村本「もう、これがね面白いんですよね、既にね。可哀想っていうことが面白いっていう。だからこれ、ちえちゃんはボケてるんじゃなくて、ツッコミですよね。世の中そういう風にして、いやいやお前のやってること面白いんだよってことがもう、もちろん安倍政権にしても、原発にしても、もう本当に面白くてしょうがないんですよね。それをどうやって見せるか、みたいな。本当に面白いですね。」
坂本「鏡だね、一種のね。こんな酷いことがまかり通ってるっていうのが、笑っちゃいますもんね。」
村本「笑っちゃう。」
坂本「本当にね。」
村本「ボケ、社会がもうボケてる、芸人がボケなくても。」
坂本「ボケてる暇ないっていうかね。」
村本「はい。ツッコミどころだらけみたいな。」
坂本「それはまぁ、アメリカも同じですけどね。」
村本「そう、アメリカも。」
坂本「もうあーんな人が大統領なっちゃうわけだから。もうどうしようもないっちゃ、どうしようもないけど。」
村本「それを当たり前だと思うこと、そういうもんだと思うこと……自体に、ツッコミを入れると、当たり前がおかしかったんだってことに気づくというか。黒人のコメディアンが、ずっと怒りながら「どうして黒いバンドエイドがねーんだ」って怒ってたんですよ。」
坂本「(笑)」
村本「もうこれも面白くて、これも当たり前だと思ってるじゃないですか。これと政治なんか、社会問題にしても、おかしいなと思わずに当たり前になっちゃって、テレビのニュースを生まれて一番最初に見たらもっと驚くと思うんですけど、それが毎日にあるから当たり前になっちゃって、どんどん残酷なことも景色になっちゃってる。」
坂本「どんな人でもやっぱり。自分の見えてる窓からしか世界は見えないんだけども、でも、人によってその見えてるものは皆違うわけですよね。で、皆違うんだけど、隣のA君と自分はほぼ同じものしか見てないという例もたくさんあるわけですよ。クラス30人いたら、29人ぐらいまでほぼ同じことを見てる。先生が言ってることを大体同じように見ている。でも、一人全然違う、90度くらいとこから世界を見てるやつもいていいし、こういう風に見えるぜ、と言って、コンコンと打ち砕くっていうのかな、この窓を。それは僕、すごい大事だと思うんですよね。」
村本「ここから見たら、こう見えるぜって。」
坂本「お前ら、そういう風に見えてるよ、僕からは。」
村本「ええ。ええ。」
坂本「もちろん一人ひとり、自分が偉いとかじゃなくて、見え方が違うってことがあるよっていうの、言われないと気がつかない人も多いんじゃないかなと思う。」
村本「僕からはこう見えてるよっていいっすね。もちろん自分も、誰かからこう見えて。」
坂本「そうそう。自分だってそういう枠に嵌ってる危険性はいつでもあるんだけど、でも、違う見方があるというのは社会にとってはとても大事なことだし。いや、すごい社会貢献してると思わない?」
村本「そうなってくるとまた、こうちょっと、やりにくくなるんですけどね。」
坂本「やりにくいでしょうけどね(笑)。」
村本「友達がなんか豚飼ってて、寂しくて豚飼ったら、豚食えなくなったらしいんですよ。」
坂本「はい。」
村本「あ、豚飼ってるんですか?」
坂本「いや、僕はにわとりです。」
村本「あ、鶏食べれないんですか?」
坂本「食べれます、もちろん。暫くは、卵も食べられませんでした。」
村本「これですね。これ例えばよく、韓国人と友達になったら、韓国差別しなくなるっていうじゃないですか。そんな感じでこう芸人も……今までなんかこう、例えば沖縄とかのことも違う方から笑いにしようと思えば出来るのに、友達になっちゃったら……」
坂本「知っちゃったからね。」
村本「知っちゃったからこれ、犠牲……結局自分の笑いの犠牲。だったら……ね、そうなった時、世界中の人と全員……それはもちろん、安倍総理と友達になったら、安倍総理のことを飯行く人いなくなるし、だからこそやっぱりこう、豚を食べるには豚を飼わない方がいいのであれば、安倍総理と友達にならない方が、安倍総理を攻撃しやすいっていうことになるか分かりませんね。」
坂本「僕もね、会いたくないですよ。会いたくない人いっぱいいますよ。もし会ってさ、意気投合しちゃったらまずいから。やだもん、会って(笑)」
村本「僕も、先輩でも絶対にご飯いかないです(笑)」
坂本「ああ、えらい。正しい。」
村本「もうあの人にもこの人にも誘われたけど。」
坂本「だってもう、言えなくなっちゃうんだもん。」
村本「言えなくなっちゃうんですよ。」
坂本「会ってそんなに嫌なやつ悪いやつって、世の中にあんまりいないから。」
村本「はいはい。」
坂本「会って話したらね、ちょっと好きになっちゃったりするんですよ、絶対に。それ困る(笑)」
村本「そうそう。そうなんですよ。ね。」
坂本「もうね、すっごい面白くて話が尽きないんですけど、時間になっちゃってるみたいなんで。」
村本「あ、そうですか。」
坂本「すいません。」
村本「いえいえ、ありがとうございます。楽しかったです。」
坂本「すっげー楽しかった。」


<新春放談「津田大介さん」>

坂本「今夜、2組目のゲスト、メディア・アクティビストの津田大介さんです。」
津田「はい、どうも。おめでとうございます。ありがとうございます。」
坂本「今年も始まりましたね。津田さんにはね、例の、あいちトリエンナーレ芸術監督、就任のときにも来ていただいて。アーティストおふりたりもいっしょに来てもらったりね。」
津田「この番組で2回も取り上げてただいて。しかも会期中の騒動があった渦中にも、ちゃんとアーティストに焦点を当ててくださって、ほんと感謝しています。」 
坂本「実際、今回終わってみて、ざっくり今の心境としては、どんな感じなんすか。」
津田「あまりにも毎日いろんな事が起きて、なんか映画みたいな急展開がたくさんあったので、まあ一言でいえば、疲れたなあっていう事とともに、こうやって振り返りながらしゃべることができているのは、『表現の不自由展・その後』という企画が脅迫で中止になってしまって、最後に3日間ですべての作家が戻ってきて終えることができた……ま、自分が見せたかったトリエンナーレを、すべての作家が戻ってきて終える事ができたという事自体が、何とかギリギリ形を作ることができた。その過程ではすごく大変な事があったり、いろんな人に迷惑もかけたので、手放しで喜んだりできる状況じゃないんですけども、ただその中では、何とか最後までやり抜くことができたので、それは良かったと思ってますけど。」
坂本「うん、ま、3日間でも、ちゃんと全部を見せることができた。3日にほんとにたくさんの人が押しかけて、観に来たでしょ。それもまあ、嬉しかったんじゃないですか。」
津田「そうですね、ああいう形で注目をされて人が来てしまうっていうこと自体は、その事自体が狙ってたんじゃないかとか炎上マーケティングじゃないかっていう人もいて……」
坂本「あ、そう(笑)。穿ってるなあー。」
津田「もちろんそんな事もなくて……やっぱり本来はトリエンナーレって、全部で106個ある中のひとつの企画で、逆に言うと他の105個をお互いに引き立たせるように組んでいたつもりだったので、もちろんディレクターとしては75日間の会期すべて、毎日観てもらうという事を目指していたので、ああいう形で話題になって、ある意味で言うと展示の内容とかトリレンナーレの伝えたいメッセージみたいなものが一人歩きしちゃって、表現の不自由展だけがクローズアップされてしまったというのは、非常に、自分としても忸怩たる思いはありましたね。」

津田「ただ数字を見ていると、実はそれだけではないところも見えてきていて……あいちトリエンナーレって名古屋のローカルイベントなので、全国紙のメディアって基本的に今までほとんど取り上げられてこなかったんですよ、テレビとか。ところがああいう騒動があったので、全国ニュースや朝日新聞の一面やらで取り上げられて。」
坂本「注目を浴びた。」
津田「ただ、それだけではなくて、前回と比べても個別の作家に焦点を当てた記事はね、3倍ぐらいに増えてるんですよね。内容に注目してくれたメディアもけっこうあたりしましたし、ツイッターとかの感想とかも、僕、全部取ってたんですけど、やっぱりすべての作家で感想とか写真の投稿があって、インスタグラムなんかでも1.5倍くらい投稿が増えてるんですよね。そう考えると、マスコミやネットがそこしか注目しないけれども、トリエンナーレに来たお客さんが「いや、もっと幅広いしおもしろい芸術祭になっているから、これをちゃんともっと注目してよ」っていうんで、一般のお客さんとかがどんどん発信していって、それが流通して、それを見た人が訪れた部分もあって、過去最高の来場者数を記録できたので。何ていうか、観客が自分たちの芸術祭に取り戻していくような作業……というか、それがネットであったんじゃないかなって気がしているんですよね。」
坂本「あいちトリエンナーレって、僕も過去に何回か観に行ったことありますけども、長年かかって地元に密着してきて、地元のボランティアもたくさん働いているじゃないですか、何百人と。ボランティアの人たちとは何か交流はありました?」
津田「ああ、そうですね。むしろ、ボランティアの人たちがいなければ今回、たぶん
トリエンナーレは崩壊してたと思います。不自由展が中止になってアーティストがボイコットになるとか、どうやってこれ再開するんだと。でも「再開しろ」っていうアーティストもいれば、「するな」ってアーティストもいて。で、知事も「再開しろって意見は分かるけれども、安全管理ができなきゃできないでしょ」でも、不自由展実行委員会の人たちは「再開しろ」……みんなある意味、正しいというか、自分たちの正義を言っているので、まあそれがぶつかっている中でどう調整できるんだ、とりわけ職員はある意味、電凸によってトラウマを抱えているような状況なので、そういうケアをしつつも対策を考えなきゃいけないということでやってて。そういう時に、ボランティアの人がほとんど不満を言わなかったんですよね。僕、今回、芸術監督になったときに、まずボランティアと交流したいって言ったんですよ。過去の3回のディレクターがほとんど交流がなかったらしくて、やっぱり北川フラムさんとか見てると、ものすごくボランティアと距離が近いんですよね。僕は会期が始まる前に4回くらいボランティアと飲み会をやっていて、それで忌憚のない話をしていたんですね。その時に必ずどこでも話をしてたのが、トリエンナーレとか芸術祭って、主役はだいたい、みんな作品とかアーティストだと思いますと。だけど、こういう国際芸術祭っていうのは地域振興のイベントだし、終わったらアーティストも作品もどこかに行ってしまうので、だから主役はあなたたちなんですよと。ボランティア……要するにここに住んでる住民で町づくりに積極的に関わっているあなたたちが主役だから、頑張っていい芸術祭に作っていきましょう。っていうような話を割と強くしてたんですね。後から、終わったあとに言われたのが、あのとき言われたときは、まあそうは言ってもほんとかな、と。ボランティアの人たちが。お世辞なんじゃないのって思ってたと。ただやっぱりああいう騒動が起きて、いろいろ怖い人が来たりだとか、あるいは現場でいろんな問い合わせを受けたりとか、現場がすごく大変だったときに、ボランティアの多くの人から言われたのが、「あのときに自分たちが主役って言ってくれたので、自分たちの芸術祭を自分たちで守らなきゃいけないと思った。」って言ってくれて。それでものすごくボランティアの人たちが結束固く、いろんな形で手伝ってくれて、それがすごくいいコミュニティになってるんですよね。」
坂本「うんうん、なるほどね。」
津田「終わったあとも僕、ボランティアの人たちと交流を続けてて、定期的にこれからも続けて、次のトリエンナーレにいい状態で渡したいなあと思っていて、なんかほんとボランティアの人たちに助けてもらったなあという感じですね。なんかこういう騒動が起きたからっていうこともあるんですけど、ああいうボランティアが、自分たちのこういう文化事業を、自分たちの手で守っていこうということで、それでまた新しいコミュニティが生まれるのを見たときに、新しいシチズンシップとか、あ、民主主義って……それを支えてるのってこういう事だよな、っていう……そこを実感したっていう事でもありましたね。怪我の功名みたいな話で、ああいう事にならないのがもちろん一番なんですけど、なってしまったことで、このレディオサカモトにも出てもらった加藤翼さんとか青木美紅さんとか、いろんなアーティストがずっと名古屋に居てくれたんですよね。名古屋に居て、自分の作品に居たりとか、あるいは再開に向けた動きをやるので、結果、ボランティアともすごく交流したり話したり飲みに行ったり、それがあったことで恐らく、ボランティアの人もあんなに作家と直接、意見交換ができたっていう話も聞きましたし。」
坂本「怪我の功名ですよね。」
津田「そうなんですよ、ボランティア同士の交流も加速したんですよね。」

津田「なんかこの番組に関係しているところで言うと、僕も友達の親友のU-zhaanが、今回、参加してくれて。」
坂本「40日間ね。」
津田「そう。毎日8時間、タブラの練習をし続けるっていう。ほんとに大変な。」
坂本「ほんとかよっていう(笑)。俺、生まれてから1日も8時間ピアノの練習したことないと思うんだけど。」
津田「僕の友達のゴリゴリのアート好き、もう美術にしかほんと興味ないっていう人がU-zhaanのやつを観に行ったら、「全部観たけどあれがいちばん良かった。」っていう。あらゆる美術を差し置いてU-zhaanが一番良かったって言ってましたねえ。」


<「あらゆるクリエイティブ業界がジェンダーバランスの適正化へ>

津田「今回、トリレンナーレって実は、男女平等にしたんですよね、参加作家の男女数を平等にして、ヴェネツィア・ビエンナーレもそうなってきて、けっこう今、あらゆるクリエイティブ業界がそうなってるんですよね。例えば広告のカンヌライオンズって、審査員の男女数がほぼ同数なんですよ。ハリウッドも今、2020年までにちゃんと半々にしようって動きを始めてますし、何よりも音楽業界でキーチェンジ (Keychange) っていうのがあるんですよね……フェスがやっぱり、音楽フェスも男性中心じゃないかっていう。」
坂本「ああ、多いですよね。」
津田「だから女性シンガーがその分、出演の機会を得られてないんじゃないかっていうことで、ヨーロッパを中心にフェスのジェンダーバランスをちゃんと変えていこうっていう動きがあって、実はそれを提唱しているのが、(今回のレディオサカモトで津田さんが選曲した)ガービッジのシャーリー・マンソン。彼女なんかがそのキャンペーンの親善大使なんかやってるんですよね。」
坂本「ま、世界人口、女性の方が多いからね、51パーセントだからね。」
津田「ある意味でいうと、国際潮流として、すべてのクリエイティブのジャンルが、ジェンダーバランスを意識せざるを得ない時代になってきていて……」
坂本「プラス、男と女という二分法だけじゃないからね。」
津田「もちろん。そこに、ゲイやバイやトランスジェンダー、あるいは自分のシェクシャリティが分からないっていう人……まずはだから男女の平等の不均衡っていうことを考えて、その先も含めた多様な性っていうのを考えるきっかけになりますよね。でも日本って、フェス……キーチェンジって世界中のフェスがだいたい200ぐらい参加してるんですよ、ジェンダーバランス適正化しますって。日本のフェス、一個も参加してないです。」
坂本「ええー。」
津田「中国も韓国も台湾もちゃんと参加してるんです。ていうあたりで、日本のちょっと遅れたジェンダー意識みたいなのも出てるかなとは思いましたね。」


<デモテープ・オーディション「2019年いちばんのお気に入り」>

坂本「2020年の年頭という事でね。2019年、去年1年間、僕たちが面白いと思ってオンエアしたものの中から、それぞれ、U-zhaan賞、長嶋りかこ賞、坂本龍一賞、まあ賞ってつけると、なんか、格差がつきすぎちゃうんで、いちばん面白かったなって心に残っている、記憶に残っている、もう一度聴いてみたいな思うもの、ひとつずつね、あれば。」
U-zhaan「はい。」
長嶋「はい。」
坂本「えーと、全部で、これ年間オンエアしたものって何曲あった?」
U-zhaan「50〜60ですね。」
坂本「じゃあ誰から行こうかなー。な・に・に・し・よ・う・か・なー。か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り!はい、長嶋りかこさんです。」
長嶋「いいんですか。」
U-zhaan「今、すごい古風に指を回して。」
坂本「そうしないと、分かんないんだもん。頭の中でやるの?」
U-zhaan「(笑)ね、この光景を見ましたよね。」
長嶋「(笑)すごい久しぶりに見た。この、これ…。」
坂本「最近やらないな。なんでだろう。」
U-zhaan「ランダムに決めるとかいう事、考えることがもうないのかもしんないですね。」
坂本「えぇ。それどういう。管理社会なのそれ?年功序列?」
U-zhaan「そうですね。なんか、誰かが決めちゃうんでしょうね。きっと。ランダムって。じゃあ、長嶋さんですね。」

長嶋「えー環境音の荒立神社。(「環境音 - 荒立神社 - 御手洗いの屋根に当たる雨」) 11月オンエアのオーディションより。」
坂本「ありました。」
長嶋「じゅんじゅんじゅんじゅん。雨の音とは思えない音ですね。」
坂本「荒立神社ね。この人は年間通して、たくさん、フィールドレコーディング音を送ってくれていますよね。チュンチュン言ってる。トタン屋根なのかなんか知らないけど、この蛙と…。蛙だけってのもありましたよね。」
長嶋「ありましたね。」
坂本「2種類ありましたね。別の場所で。」
長嶋「でも、蛙だけはやっぱり、蛙の音像綺麗だなぁっていう感じが。これはもう予想を超えて、まさか雨の音とは思えない。」
坂本「こんな音するのか〜みたいなね。」
U-zhaan「生音ですもんね、これがね。」
長嶋「ねぇ。」
坂本「まぁ最初に言っちゃうと面白くないのかもしれないけど、やっぱり、フィールドワークというか生の音世界って、むちゃくちゃ強いですよ。お得といえばお得。ねぇ。」
長嶋「ねぇ。」
坂本「ずるいといえば、ずるいかもしれないけど。でも。」
長嶋「なんかじゃあ、これを作れって言われた時に、出来ないんじゃないかなと思いますよね。」
坂本「できないですよ。もちろんできない。人智の及ばぬところですよ、これは。」
U-zhaan「あとこの方、録音も上手いですよね。毎回綺麗な音で。」
坂本「バイノーラルでね。もう一人いますよね。菅原さんて人だっけね。」
長嶋「あ、そうですね。」
坂本「ま、たくさんフィールドワーク、フィールドレコーディングを送ってくれて、なかなかいいんですよね。そっちも。」

坂本「じゃ、年功序列でいきなりなってですね、U-zhaan。」
U-zhaan「はい。長嶋さんはその11月分から選んでるんですけど、僕も11月ですね。」
坂本「あら。」
長嶋「あら。」
U-zhaan「僕は、Miyu Hosoiさんの「Orb」という曲です。」
坂本「きれいだね、やっぱりね。これね僕も好きだったんですよ。」
U-zhaan「ああ、よかった。」
坂本「11月のときから、もちろん好きでしたけどレベルが高いですよね。」
U-zhaan「そうですね。これがいちばん、やっぱ印象的でしたね。欲しいな音源として、と思ったのは一番これでしたね。総合的にみると、毎回ポテンシャルの高いものを送ってくださる、3brancheさんとか、本当にすごいなと思うんですけど。」
坂本「高いですねぇ。うん、素晴らしい。これずっと聴いていたいね。」
長嶋「うん。」
U-zhaan「はい。」
坂本「あと、3D的というか、最近流行りのイマーシブ空間ていうか、イマーシブサウンドというか、こう立体的な音響で聴くのもいいですね、これ。」
U-zhaan「そうですね。本当に声だけしかないから、邪魔な音がやっぱりないですよね。なかなかここに、何かをちょっと入れるっていうの難しい。」
坂本「タブラ入れますか?」
U-zhaan「タブラ、うまく入れられるかなぁ。台無しになりそうだな。」
坂本「これはね、大変だよ。」
U-zhaan「そうですよね。」
坂本「センスが問われるからね。ピアノでさえ危ないもんね。」
U-zhaan「これに何かを入れる対決とか、すごい難しいだろうなぁ。」
坂本「今度やってみようか、それ。」
U-zhaan「教授とですか?絶対嫌だわ!」
坂本「いやいや、誰かと。」
U-zhaan「あ、誰かと。」
坂本「うん。」
長嶋「面白い。」
坂本「特別そういうの選んできて、入れなきゃいけないの。僕も。U-zhaanも。」
長嶋「それちょっと次回、投稿してください。」
坂本「そう。そして無残に負けたりする。」
U-zhaan「本当に憂鬱な番組になっちゃうじゃないですか。」
坂本「根に持ってさ、U-zhaanに負けた人ってずっと思って、なんかいじめに走ったりする、みたいな。やめとこうか、やっぱり。平和にいきましょうね。」
U-zhaan「これでも、教授、音を入れるとしたら、ピアノじゃないですよね、きっと。」
坂本「いや、ピアノも入る。」
U-zhaan「あ、入れます?」
坂本「うん。ピアノを入れたいわけじゃないけど、ピアノでもOK。でも、鍵盤よりも中の弦の方かな。」
長嶋「ああー。」
坂本「シュッとする音とか。コンと叩いた音とか。そっちの方が入れやすいよね。」
長嶋「U-zhaanが太鼓を入れるとしたら、どんな感じで?」
U-zhaan「えぇ、ちょっと「中の音」は出ないんで太鼓は。なんでしょうね。」
坂本「革をこする音。シューシューシューシュー……」
U-zhaan「あぁ。まぁそういう。いや、でもやっぱりタブラのタブラらしい音で。」
坂本「で対決ですか、男らしい。」
U-zhaan「いやいや。どこか入れていい場所を探し続けて……ってなると思いますね。せっかくならと思っちゃいますね、きっと。」
坂本「あと、ものすっごく脂汗かいてさ、パーンって1発だってするよね。」
U-zhaan「もう鼓のように。」
坂本「ね、ね。それになりがちだよね。」

坂本「あの、なんか皆の評価を散らすってわけでは全然ないんですけど、僕もほとんどここに上がっていたフィールドレコーディングとかは、本当に素晴らしいなと思うし、もちろん普通の楽曲でも良いのたくさんあったんですけど、自分でもちょっと不思議なんですが、2018年1月放送分から、アーティスト名 Otaruさんていう人の「Sail」。ま、航海ですね。船を航海させる「Sail」。ワンツー聴いてみよう。」

坂本「これはね、特にどっか優れてるとも思わないんですよ、僕。自分で選んでおいて何ですけど。でもものすごく気になる音で。あの、悪くもないんですよ。だけど、じゃ、そのさっきも名前出た3branchesさんと、その本当に優れた楽曲に比べて、何かいいかと言うと、殊更ここがいいという、優れているというところはないにも関わらず、この全体の音像というか……に惹かれるんですよね。もう一つ好きだったのは、皆も覚えてると思うんだけど、その自分の子供の声をコラージュした。11月だったかな。ありましたよね。」 
長嶋「あれも良かったですよね。」
坂本「あれもすごく好きなんだけど、あれ、前半の子供の声のコラージュだけで終わって欲しかったのに、なんか音楽になっちゃったじゃない、最後の方。」
長嶋「ドラムとかが入ってくるんですよね。」
坂本「あれ〜って感じで。ま、本人はもちろん色んな糸や思いがあって、やってんですけど、僕は子供の声のコラージュだけで聞きたかったな。それで残念だったな、というのが僕の個人的な評価。で、これは本当に、なんか好き、なんか惹かれるっていう、もう理由がない、あんまり僕も言えないです。」
長嶋「これ作った人、それすごい嬉しいですよね。」
U-zhaan「ね。」
長嶋「なんかこう、肌感が合うというかね。嬉しいですよね、きっと。」
坂本「別になんか賞勲が出るわけじゃないよね。なんか偉いわけでもないの、ほんと言うと。言われたかと言って威張ったりしないでください。」
U-zhaan「威張るくらいはいいんじゃないですか。」
坂本「威張るくらいいいんだ。」
U-zhaan「教授、一番良かったって言ってくれたんだよって、言いたいですよね、友達に。」
坂本「あぁ、そう。人のこといじめたりしないでくださいね。」
U-zhaan「あ、これでですね。」
坂本「俺は選ばれたのにお前は、みたいな。それはやめましょう。」
U-zhaan「それは良くないですね。」


<2020年、最初のオーディション総評。>

坂本「じゃあ、いざ総括を…。」
U-zhaan「まぁ多分、教授も僕も長嶋さんも、今日は塩釜港が一番好きだったのかもしれないですね。」
長嶋「そうですねぇ。」
坂本「良かったですねぇ。」
U-zhaan「とにかくあれが本当に良かったっていう。」
坂本「水琴窟も良かったですけどねぇ。」
長嶋「活版印刷も良かったですね。」
坂本「良かったですねぇ。」
U-zhaan「いい三拍子になってるんですよね、活版印刷が。」
坂本「大ファンの福島諭さんからも来ててね。」
長嶋「あ!そうそうそう。福島さんも良かった。」
坂本「これもね、トランペットの曲でね、すごくいい曲なんですよね。」
U-zhaan「3branchesさんの曲もすごい良かったですよ。」
坂本「良かったしねぇ。」
長嶋「うん。良かった。」
坂本「三船くんのも、僕好きだったよ。」
U-zhaan「三船寄道「わさび」。」
坂本「うん、「わさび」。あと、トマトスターさんなんかも面白かったし、Klagen Fishermanさんとか、良かったですよ。」
U-zhaan「面白かったですね。受験が嫌で作りましたっていう高校生の作品もすごい良かったです。」
坂本「toulaviさん。」
U-zhaan「はい。」
坂本「良かったですね。」
U-zhaan「いやー良い曲ばっかりだったんですけど。」
長嶋「ねー。あと、久々に銀河スープさんを聴くと、なんか沁みるなぁっていう。」
坂本「もうね、古典。」
長嶋「そうそう(笑)、沁みる。」
坂本「もうハッピーエンドなの?っていう。70年代の懐かしい曲みたいな感じで。沁みるよね。」
長嶋「沁みる。」
U-zhaan「というわけで、J-WAVE『レディオ・サカモト』デモテープオーディションコーナーはおしまいです。リスナーの皆さん、今年もよろしくお願いします。」

RADIO SAKAMOTOオーディションに、インターネットから作品を応募できるフォームができました。作品はファイルのアップロードのほか、YouTubeのURLを指定しての投稿も受け付けます。
詳しくは、エントリーフォーム内の応募要項をお読みください。

AUDITION ENTRY FORM

RADIO SAKAMOTOオーディションに御応募頂いたデモ作品にまつわる個人情報の管理、作品の管理は、J-WAVEのプライバシー・ポリシーに準じております。詳細は、こちらを御確認ください。

<エコ・レポート>

坂本「ドイツのシンクタンクの発表によれば、2019年の気象災害の影響が大きかった国のランキングで、日本は、なんとワースト1位となってしまったんですね。まぁ、毎週のようにね台風がきて、大災害になって、甚大な被害を被りましたけども。たまたま日本はワースト1位だったかもしれないけど、世界中に山火事とか水害とか、大変な状態になっているのも、皆さんお気づきですよね。今年、もっと酷くなってしまわないといいなと思いつつも、本当に今年もどうなってしまんでしょうか。それでは、上岡裕さんによるエコ・レポートです。」

上岡「エコロジーオンライン、上岡裕です。10月に台風19号の被害を受けてから、この2ヶ月はその対応に追われる日々でした。僕らの活動で言うと、ずっと20年に渡って気候変動を止めるための活動をしてきたわけですけど、その活動も続けながら、今年また、同じような台風がやってくる可能性も否定できないわけで、河川の堤防強化なんかについても学びながら、市民の皆さんといっしょにその学びを具体化するような取り組みをしています。実際にいろんなことを学んでいくとですね、日本の今の社会制度が、気候変動、気候危機に対応できてないと、そんな壁にぶち当たります。グレタ・トゥーンベリさんが気候変動のリスクの高まりについて、世界的に語られるようになりました。「気候危機」と言われるようにもなりました。その動きに対して、例えばダムひとつ作るっていっても、何十年もかけてダムを作っていたら、ほんとに目先の気候危機に対応できないんじゃないかなっていうように思うんですよね。で、やっぱりまだまだ日本の政治や経済のリーダーたちは気候変動に対して、自分の事というよりは他人事の雰囲気が感じられるので、そこはもっともっと危機感を募らせて、気候変動で命を失ったり、様々な被災で経済的に苦しくなったりとかで悲しむ人をなるべく減らすためにも、この気候危機に対して、多くの人にしっかりと考えて対策を取ってもらいたいと思っています。まあ、僕らはまず身近な堤防のところから、どうやって堤防を補修するのかとか。あとは障害を持った人たちをどうやって避難所に誘導したり、避難が続くことになってもストレスのない避難をしてもらうのか、そういった勉強会なども地道にやっていこうと思っています。坂本さんと20年前に出会って、エコロジーオンラインの活動を続けてきたわけですけど、今年3月で創立20周年になります。これからも元気に活動してきたいと思っておりますので、この1年、坂本さんやリスナーの皆さんに幸せが訪れますように、お祈りして。エコロジーオンライン、上岡裕でした。」

■エコロジーオンライン
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