「坂本龍一です。2ヶ月に一度お届けしているレディオサカモト、皆さん、お元気でしたか。この2ヶ月、コロナウイルスの影響で様々なイベントが中止になっていて、大変なことになっているようですね。えーと、僕が住んでいるアメリカ、ニューヨークでは……まぁアメリカ全体ですか、あまりまだ感染者は多く出ていなくて、それほど騒ぎにはなってないんですけども、中国を中心としたアジア、そしてまた今ヨーロッパの方にも広がっているようですけども、大きな関心を持ってみんな注視しているようです。なんとかね、手洗いとかうがいとか、また人がたくさん集まるところなどに行かないように、自分で身を守っていただきたいですね。」
<まずは、近況報告。>
「えーと、この春からスタートするドラマのテーマソングを手掛けたんですよ、まだタイトルとか言えないんですけど。それもですね、久々の歌ものですね。まぁ僕が歌っている訳じゃないですよ。でも、歌の楽曲を書くというのは本当にあまりないことで、昔は自分でも歌いましたけども、あまりにも歌が下手なんで、もう自分で呆れているので、えぇ……もう最近は自分でも歌いませんし(笑)、なかなかこの、歌というのは苦手でね、僕ね。そもそも歌を聴いても、歌の音楽を聴いても、歌が聴こえてこないんですよね、僕ね。昔よく仕事をしていた大貫さんとか矢野さんなんかにも、「本っ当にあなた歌、聴いてないわね。」ってもういつも言われて、「歌を聴いていないのに、よくアレンジしてるわね。」って言って、毎日のように非難されてたんですけども。そのくらい聴こえてこないんですよね、なんか楽器の一部のように聴こえてしまう。だから歌の曲を作るのも下手なんですよねえ。歌心がないとか……そもそも歌が聴こえてこないんだから、その歌心が分かんないじゃないかな(笑)。いや、自分でもね本当に分かってんのかどうか分からないんですよね。えーまぁそんな人がですね、久々に歌ものを作りまして、歌詞はなんとあの、U-zhaanが担当しました。U-zhaanに頼みました。なかなかいいんですよ、U-zhaanのあの独特のユーモアがとても活きる内容でして、もうU-zhaanしかないなということで頼んだんですけど。えっと、3月末頃に発表だそうです。」
「先月ですね、中国人の若い映画監督で……まだ確か、31くらいじゃないかな。ビー・ガンさんというね、非常に才能のある監督と対談をしまして、彼の最新作『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』がですね、2月28日から公開されています。言ってしまうとネタバレなんですけど、すごい映画なんですよ。で、これはビー・ガンさんの第2作目なんですけど、1作目まぁデビュー作は、ビー・ガンが27の時に作って、それがもうそのままロカルノ映画祭で、優秀賞を獲ったりとかっていうね、非常に驚くべき人なんですけども。そのデビュー作の『凱里ブルース』という映画なんですけど、それは凱里という中国の奥の山の方の小さな町というか、まぁ自分の故郷を舞台にした作品なんですけど、実はこの2作目の『ロングデイズ・ジャーニー』も、その同じ凱里というところで撮っているんですけど、まぁ内容はもちろん違いますけどね。そのデビュー作もねとても面白くて、僕は両方好きですね。その凱里という町がある山の方というのはですね、あの中国の少数民族のミャオ族が住んでいて、実はビー・ガンさん自身もミャオ族の人なんですね。えー、まぁそういうところも……そして彼らのとても独特の音楽とか、文化、着るもの、習慣なんかも少し出てくるんですけど、それをドキュメンタリー的に追った映画ではないんですけどね。機会があれば、ぜひそのデビュー作も観て頂きたいと思いますけども。」
「それでですね、今月はたくさんの人が集まるようなイベントとかですね、そういうものの中止が相次いでいるので、まだどうなるか分かりませんけども、このままいけば今月末にですね、恒例の東北ユースオーケストラの定期演奏会があります。3月27日サントリーホール、28日が東京芸術劇場コンサートホール、29日が福島県文化センターなんですけどね、3日間、今回は演ります。東京なんと2回も演るということで。今回5回目なんですね、東北ユースオーケストラの定期演奏会が。5年続いてきたということで、それを記念してですね、まずベートーヴェンの有名な第九を演奏します。ご存知のように第九には、あの、四楽章目に合唱が付いてきますね。で、その合唱を、2011年3月11日の大震災以降も、毎年のように、日本で、各地で、大災害が起こっていますので、地震や水害など。その被災地を繋いでですね、被災地から合唱の方々に参加してもらって合唱を構成してですね、子どもたちオーケストラと演るという。そういうことにして、鋭意、準備をやっているんですけども。まぁ果たして本当に公演が実現出来るのかどうか。もう1つ、今回5回目の公演ということを記念してですね、このオーケストラ……ユースオーケストラを結成した当初から言われていたことなんですけど、まぁ、東北ユースオーケストラの為の新曲を僕に作ってくれということで、はいはいと言いながらですね5年経ってしまって(苦笑)、やっと今回出来ました。えーと、東北ユースの為に書いた新曲ですね、オーケストラの曲。えー、少し変わったタイトルなんですけども、「いま時間が傾いて」という曲です。まぁ15分ぐらいの曲ですけどもね。えー、この新曲の初演、発表もします。なんとかね、本当出来るといいんですけど。」
「また今月の後半にはですねあの、『ぴあフィルムフェスティバル』ってご存知ですか、PFFという。70年代末からやっているんじゃなかったかな。で、今でも続いていて、そこから育ってきた、たくさんの日本人監督が排出されているわけなんですけども、その『PFF』がですね、新たに創設する「大島渚賞」という賞がありまして、なぜか僕が審査員長の拝命を受けましてですね、……いやぁ、ちょっと荷が重いんですけども。先日ニューヨークで選考会議をしました。えっと、黒沢清さんと、あともう一人ぴあの方ですけども、3人で数時間あーだこーだと会議をしまして、やっと決まりました。で、今月の19日に授賞式を予定していますけども……まぁこれも、なんとか出来るといいんですけども。うーん、分かりませんね。その決行されるならば、5月のこの番組でその模様をね、お届け出来るかもしれません。できるといいんだけど。」
「えーとまだあります。来月、4月からは僕が音楽を手掛けた台湾のツァイ・ミンリャン監督……映画監督の作品、日本語のタイトル『あなたの顔』というんですけども、英語だと『Your Face』ですね。が、日本で公開されます。ツァイ・ミンリャン監督というのは、あまり馴染みのない方もいるかもしれませんけど、非常にユニークな映画をたくさん作っている、僕より少し若い監督で、もともとはマレーシアの出身なんですけども、長く台湾をベースにして、まぁ台湾人映画監督という風に思われている、カテゴライズされている人ですね。いろいろな特徴があるんですけど、あまり言葉で説明してもしょうがないので、ぜひ観てください。渋谷のシアター・イメージフォーラムなど、全国にて順次公開されるそうです。いろいろね、経緯があって、6〜7年前かな……最初にヴェネツィアフィルムフェスティバルに、僕が参加した時に、ツァイさんの映画もコンペティションに入っていて、それで観まして。僕はそれ以前からツァイさんの映画は観ていたんですが、その時初めてヴェネツィアでお会いしました。そしてその後また、3年前かな、またヴェネツィアに行く機会があった時に、またツァイさんが来ていて、ヴェネツィアの浜辺で僕が散歩してたら、遠くで「サカモトーー!」と呼ぶ声がするんですよ。ふと振り返ると、ツァイさんが、もう満面の笑みを浮かべて(笑)、手を広げて「おぉ!サカモトー!」とか言って走ってくるんですね。こんなに親愛の情を示されたことも、本当に珍しいんですけども。まぁそれで一挙に仲良くなりまして、それで僕もともと、非常にツァイさんの映画を尊敬していたので、機会があれば何でもやるからと盛り上がって言ってたんですけども、その後すぐメールがきて、「実はこういう映画あるんだけど、音楽を作ってくれ。」と。で、「音楽を自分の映画の為に頼むのは初めてなんだ。」っていうことで、えー、それは本当に光栄です、ということで。じゃあどういう音楽にしますか、って言ったらですね、「もう全部100%君が決めてくれ。」ということで、まぁそういうオファーも珍しいんですけども。そういうオファーはですね、一番最初に映画音楽をやった大島渚さんの『戦場のメリークリスマス』以来ですね。100%好きにやってくれ、と言われたのは(笑)。いつもなかなか難しいんですよ、ここあーしろ、こーしろ、とね。直してくれ、と言われることが多いんですけども。それで作ったんですけど、この映画音楽で第21回台北映画賞の音楽賞を頂きまして、こんなまだ聴いてない人も多いから言ったら悪いんですけども、こんなに抽象的というか、え、音楽なの?というぐらいに……うーん、まぁちょっとこう、分かりにくい音に対して(笑)、音楽賞をあげようという、その映画祭もすごいですね。自分でびっくりしました。まぁそれはともかく。」
「えーと次はですね、こちらも僕が音楽を手掛けたアニメーション映画があるんですよ。アニメーションの音楽をやるのは、多分、80年代に『オネアミスの翼』をやって以来だったと思うんです。これはですね、『さよなら、ティラノ』というタイトルでして、ティラノザウルス、ですよね、恐竜が主人公の映画です。本当に久しぶりにアニメの音楽をやるので、なんか、童心に帰ってというか、それはそれでなかなか大変でしたね。でも、結果とても満足しています。」
「僕が昨年、制作した音楽をひとまとめにした、アナログ盤のボックスセットを作ったんですよ、『Ryuichi Sakamoto 2019』という。これをcommmonsのECサイトから限定200ですね。あの……一種美術品のような作りになっていまして、本当に限定数しか作れないんですけど、200点だけ作って発売をスタートしました。で、この為に新しいピアノ曲も1曲、書き下ろしまして、その譜面なんかも付けているんですけども。他にも色々な僕が気に入ったものなんかも梱包しています。一つの何ていうのかな、このボックスが単にアナログ盤を集めたボックスセットっていうのではなくて、一種のアートピースのようなものになればいいなと思って作ったんですけども、ぜひECサイトで見てみてください。」
<KAZUさんのソロアルバム 『Adult Baby』 特集>
「続いては、Blonde Redheadというバンドのフロントウーマン KAZUさんのソロアルバム『Adult Baby』を特集しましょう。アルバム自体はですね、昨年リリースされていまして、この番組でも僕のプレイリストで紹介したことがあると思うんですけども。僕自身は、収録曲の半分くらいに参加しています。まあ、いろんな人がね、参加して出来た、随分時間もかかってですねぇ……何度も何度も、あれどうなってる?って聞いたんですけどねえ。えーとね、Blonde Redheadは二人……実はイタリアン人の双子のアメデオとシモーネという、非常に美形な双子のギタリストとドラム、それからKAZUのボーカルで出来ているんですけども。その三人とは本当に僕は、ニューヨークに引っ越してきた直後から知り合いで、しょっちゅうではないですけども、お互いニューヨークにいるので何度も顔を合わせて、ご飯を食べたりとか、いろいろ関係は続いてんですよ。それ以来もう30年も。えーと、本当まぁ、半分家族のような感じで付き合いがありますけど。その美形の双子もね、すっかりおじさんになって(笑)、おじさんでも素敵ですけどね。すごく素敵な双子のおじさんになっちゃって(笑)、笑っちゃいけないんですけど本当に美形だったんでびっくりしましたけど。あの、アメデオというギタリストには、僕は90年代かな……ギターでも参加してもらったことありますね。『スムーチー』とかあの辺の時ですね。家のプライベートスタジオに来てもらって、本当に目の前でギター弾いてくれたりとかして。えーと、で、その実は、ライゾマティクスの真鍋大度さんがこのアルバムの曲のミュージックビデオをディレクションして、作ってるわけですね。その真鍋くんからメッセージが届いているので、聞いてみましょう。」
<真鍋大度さんコメント>
「レディオサカモトをお聴きの皆さん、教授、真鍋大度です。ご無沙汰しています。教授とは、先月ニューヨークでお会いして以来ですね。で、作品をご一緒したのは、もう6年前で、札幌国際芸術祭、その際はお世話になりました。KAZUさんのことは、もともとBlonde Redheadで知っていたんですけど、2012年にNosaj Thingの「Eclipse Blue」という楽曲でKAZUさんがボーカリストでフィーチャリングしていて、その曲のミュージックビデオの監督を僕がやったことがきっかけで、それ以来仲良くしてもらってます。その時のミュージックビデオのアイディアは、KAZUさんの歌詞からインスピレーションをもらってアイディアを考えて、日食の仕組みを二人のダンサーと光を使って表現するようなものでした。その時の振り付けは、あのPerfumeの演出とか振り付けをやってるMIKIKOさんにやってもらったんですけど、KAZUさんがすごくそのミュージックビデオを気に入ってくれて、またダンスの作品をKAZUさんと一緒にやれたらいいなぁと思ってたんですけど、昨年、このアルバムの中の楽曲「Come Behind Me, So Good!」のミュージックビデオの監督のオファーを頂いて、シミケンていう映像ディレクターと一緒にダンスビデオ、ミュージックビデオを作りました。で、同じようにMIKIKOさんに振り付けをお願いして作ったんですけど、今回は歌詞というよりも楽曲の持つ構造からインスピレーションを得て、ビデオのアイディアを考えました。この楽曲、聴いて頂くと分かるんですけど、小さいボーカルの断片がいくつも重なって、リズムを作って、それに楽器が重なって、曲が構成されてるんですけど、それと同じようなダンスの構造にして欲しいということで、MIKIKOさんに発注をして振り付けを考えてもらいました。結果的には、色んなアイディアがどんどん乗っかって、撮影も大掛かりになって、制作に半年ぐらいかかってしまったんですけど、もう本当に隅々まで作り込んで、最高のミュージックビデオになったかなと思います。そして未公開だったんですけど、この番組のオンエアのタイミングでミュージックビデオを解禁出来ることになりました。(拍手) 真鍋大度でした。」
「はい、えー真鍋さん、どうもありがとう。今回のこの番組に合わせてですね、このミュージックビデオが解禁となりました。ぜひぜひ、かっこいいので観てください。KAZU本人からもメッセージが届いていますので、ぜひ聞いてみましょう。」
<KAZUさんコメント>
「レディオサカモトをお聴きの皆さん、教授、KAZUです。昨年末にリリースした私のソロアルバム『Adult Baby』を取り上げてくださるということで、本当にありがとうございます。このリリースされたアルバムも『Adult Baby』のことなんですが、このレコードは、私、3年位前に、自分でソロやろうと決心したんです。で、でもまだ全然どういうレコードが自分で出来るかも把握出来てない時点で、なんとなく頭の中で、何だかの形で教授に助けていただけないかなというような夢というか、妄想というか、そういう気持ちがすごくあって、それで勇気を出して電話したんです。連絡して会ってくれないかって頼んだんですけど、すぐに会っていただいて、でもその時は尻込みというか勇気がどうしても出なくて、結局「元気なの?」「うん、元気元気。」とか言いながら(笑)、何も言わずにそのまま帰って来ちゃったんです。でまた、もう一度すぐに、もう1回会えないかなって聞いて、で、教授は「なに、また会いたいの?」って言いながら(笑)、「しょうがないな。じゃ、もう1回ご飯食べようか。」ていう感じで、で、また会ったんです。その時にやっと、こういう気持ちなんだけど、どう思いますかって聞いて、「なに、そうなの。何でもできることがあったらやるよ。」なんて言っていただいて。で、その時点から教授は、「ちっちゃいマイクがあってね。それね、iPhoneに直接繋がるんだけど、でも高精度だから、それが好きだったらすぐにレコードに使えるんだよ。」みたいなお話があって、シュアーマイクなんですけど、実際に今も使ってこれでレコーディングしてるんですけど、「そんなに高くないし、それ買って、すぐに何でもいいから、とにかく思いついたものを全部レコーディングして、送ってちょうだい。」なんて言われて、で、実際にすぐに買って、んー……四六時中、そのマイクロフォンを身に着けて、いろんなものを送りました。やっぱり忙しいから聴けてないかもしれないなぁと思ったんですけど、たまに、一度くらいかな、絵文字で(笑)親指が上がっている絵文字をもらったかな……うん、なんかそういう、そんな感じでした。でも7ヶ月ぐらいか経った時に、「あの、僕、ちょっとやってみたいな。」なんて言っていただいて、その時点で教授がやってみるって言われた時点で、「僕もう、ドラムとかリズムがダメだから。」って言われたりしたのを覚えてるんですが、本当、教授のやる全ての音楽っていうかパートについて、私はいつも思うんですが、すごく深い、リズミカルな波のような、あのパターンていうかリズム感っていうか……私は、教授はものすごいリズム感の高い人なんだ、と思うんですけど、自分の曲にやっていただいたものを聴いても、やっぱりそういうリズムのセンスっていうのが、すごいなぁと思いました。「Salty」とかって曲とかは、もともと自分もリバースペダルを使ってループを作ったんですが、そのループをまたリバースされたり、私の声をリバースされたり、なんか楽しんでられるような感じがして、私も聴いてて嬉しかったです。「Meo」っていう曲があるんですが、それに関しては、自分の中でもひっそり、もしかしたらこれは、私が今まで書いた曲で、一番いい曲かもしれないなんて、思うぐらい自分で感動してたんですが(笑)、それもやっぱり何回か聴いてくれた後、「KAZU、この曲すごいよ。」なんて言っていただいて、それは本当に嬉しかったです。で、『Adult Baby』のレコードに合わせて映画も撮りました。で、その映画は今年に出るんですが、それもリリースされた時、なるだけたくさんの方に観て頂きたいと願っております。あともう1つ、えー、私にとって劇的なイベントだったんですが、真鍋大度さんにレコードの1曲である「Come Behind Me, So Good!」のビデオを撮って頂きました。今回、まぁ押しに押したんですが、やって頂いて本当に光栄です。その撮影の為には、日本に来て、MIKIKOさんの振り付けとか少し習って、東京で撮影しました。本当に、今の最端のところで活躍されている真鍋さんやMIKIKOさんと一緒にお仕事が出来て、私は本当に光栄でした。ぜひ観てください。最後に、私の近況。えー、今イタリアはコロナウイルスが大変なことになっていて、これからまぁ、世界中に広がる可能性はとても高いので、早く処方が見つかるといいですね。で、ここから出て、4月にバンド、Blonde Redheadで、全米のツアーの予定があります。それもどうなることか、まだ分かりませんが、いけるといいと思っています。今晩は本当にありがとうございました。教授ありがとうございました。」
「はい、KAZU。えーこんな人なんですけども(笑)、なかなか可愛いですよね。いや本人も本当に可愛いんですけど、少女がそのまま大人になったような人なんですけど。今、イタリアとニューヨークと半々くらいで住んでるのかな……イタリアの方が多いのかな。まぁ人生いろいろですよね。本当にKAZUがイタリアに住むとは思わなかったけど(笑)。小さな島に住んでるんですよそれも、本当に。一度行ってみたいと思ってるんですけど、なかなか行くチャンスがなくて。そう、このアルバムはね、最初まぁKAZUも言っていましたけども、あの、本当にiPhoneで録った、本っ当にガッサガサの(笑)、よく分からないような音のアイディアから始まって、それでまだ曲になってるかなってないか分からないぐらいの形の時に、僕のところに送ってきて、まぁ好きな曲になんか入れてっていうんで、まぁ6曲くらいかな……いろいろ音を足して、まぁ普通にやっても面白くないんで、何ていうんですかね……例えばスピーカーにコーヒー豆を置いて、コロコロ言わせたりとかですね、石の音とか、とにかく変わった音を見つけて、「使えなかったら使わなくていいから。」という感じで、いろいろKAZUに投げたんですけども、で、それから随分経って1年、もう2年ぐらい?まだできない、まだできないって言ってて(笑)、どうなってるんだろうって。またミックスやり直すとか、いろいろすったもんだあってやっと出来たら、聴いたら、最初の印象……最初のところを覚えているから、全然すごくポップになっているのでびっくりしちゃって、「え、いいじゃん!」って感じで。僕も最後聴いてみるまで、その、どういう音楽になるのかよく分かんなかったっていう感じがあるんですけど。結果とっても、かっこよくて……なんだろ、受容的でもありエッジーでもあり、かっこよくて、でも今っぽいというか。なんか、いい感じにまとまってるんですよね、本当によかったです(笑)。笑っちゃいけない、本当にいい感じ。」
今回の放送では、真鍋大度さんと清水憲一郎さんがディレクターを務めた、KAZUさんのミュージックビデオ「Come Behind Me, So Good! 」を世界初解禁しました。
<デモテープ・オーディション 総評>
今回も、ニューヨークの教授、そして六本木J-WAVEスタジオのU-zhaan、長嶋りかこさん、この3人でオーディション・コーナーを行いました。
長嶋「優秀作の発表をしていきましょう。ここ2ヶ月の間に送って頂いた作品の中から選考していきます。(応募数) 200弱ですって、今回も。多いですね。」
坂本「本当!すごいすごーい。」
U-zhaan「今回は、ちょっとフィールドレコーディングが減りましたね。」
長嶋「減りましたね。」
U-zhaan「midunoさん一人でしたね。」
長嶋「確かにそうですね。」
坂本「その代わり、一人で4つも持ってきてくれて、ね。」
長嶋「やっぱりフィールドレコーディングもさ、あれだね。音の素材集みたいになっちゃうか、そうじゃないかってあるよね。」
坂本「なんか、やっぱり……音楽的っていうか、音楽的って安易には使えないけど、なんか音楽を感じたいですよね。」
U-zhaan「フィールドレコーディングしたものを、音楽の中に入れる作品というのがすごく目立ってきましたね。」
坂本「それもどうかと思うんですけどね(笑)。やっぱり、フィールドレコーディングの音がしていて、普通の音楽もあって、こう合わせると大体良くなっちゃうんですよね。」
長嶋「良くなっちゃう……」
坂本「簡単にね。良くなりがちなんで。」
U-zhaan「うん。」
坂本「あまりそこに逃げないで、なんかもっとフィールドレコーディングで音楽的要素を足すんじゃなくて、フィールドレコーディングの音を、エフェクトとか加工して……っていうのが、あまり比較的ないね。」
U-zhaan&長嶋「そうですね。」
長嶋「結構、音楽だなーって感じのものの方が多いですよね。そういうの聞いてみたい。」
U-zhaan「あの3branchesさんが以前、送ってくださってた作品は、そのフィールドレコーディングした音を、編集することで音楽にしてる感じでしたね。」
坂本「そうね。あと、前回かな前々回かな……娘さんの声を使った、あれも一種のフィールドレコーディング的なもので、編集で作ってるけど、そういう方向と……でもまぁ編集すると、普通の音楽に近くなっていってしまうので、そこは手を付けないけども音を変にしていくとか。……例えば風景の映像でどんどんカラーをおかしくなっていくとか、異次元な感じになっていくみたいな……に近いようなのを聞いてみたいなと思うんですけどね。」
長嶋「聴いてみたい。それは、なんかその映像も観てみたい。」
U-zhaan「結構アレですね。長嶋さんは映像を……YouTubeで送られてくるやつの映像に……」
長嶋「映像出てくると、やっぱりすごい影響されちゃうよね。観ちゃう。」
U-zhaan「観ないように、なるべくしてますけどね、曲を聴く時は。」
長嶋「あ、そうか。」
U-zhaan「でも、それも合わせて作品ですもんね。」
坂本「まぁでもどうしても気になっちゃいますね、映像はね。」
RADIO SAKAMOTOオーディションに、インターネットから作品を応募できるフォームができました。作品はファイルのアップロードのほか、YouTubeのURLを指定しての投稿も受け付けます。
詳しくは、エントリーフォーム内の応募要項をお読みください。
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RADIO SAKAMOTOオーディションに御応募頂いたデモ作品にまつわる個人情報の管理、作品の管理は、J-WAVEのプライバシー・ポリシーに準じております。詳細は、こちらを御確認ください。 |
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<坂本龍一 「この2ヶ月で聴いた曲から紹介」プレイリスト>
「ここからは、僕が最近聴いていた音楽……まぁね、忙しい忙しいとは言いつつ、毎日のように音楽は聴いているので……何かしら聴いていますね、やっぱりね。その最近聴いていたものから見繕って、ちょっとご紹介しましょう。」
「最初はですね、ずいぶん前からこの人の存在や音楽は知っていたんですけど、実はこないだ1月にニューヨークで初めて生で会ったんですけど。Nico Muhlyという、まだ30代かな……若い作曲家がいるんですよね。とっても才能があって僕は好きなんですけど。彼の『Speaks Volumes』というアルバムから。」
- A Hudson Cycle / Nico Muhly (『Speaks Volumes』)
「次はですね、あの、Andy Stottという……このさっきのNico Muhlyよりも、もっと若いと思うんですけど、僕会ったことないんですけど多分イギリス人だと思うんですけど、よく知りません、どういう人なのか(苦笑)。でもすごい好きで、この何年間かよく聴いてるんですけども、彼の『Luxury Problems』というアルバムから、そのタイトルソングですね、聴いてみましょう。」
- Luxury Problems / Andy Stott (『Luxury Problems』)
「次ですね。あの……彼ら、SNDというね、えー確か二人のユニットなんですけど、90年代からやっている、彼らもイギリス人だったと思いますけど、一人ずつのアーティスト名もあって、活動してますね。最近、二人でのSNDの活動って、もしかしたらあまりしてないのかなとも思いますけど、僕はもう20年ぐらい前からよく耳にして、大好きなユニットなんですけど、初期のアルバムだったかな。えっと、これ『makesnd cassette』っていうのかな。その「02」……ナンバーですね。」
- 02 / SND (『makesnd cassette』)
「はい、えーっと、ガラッと変わりまして、Miles Davis Quintet。その初期のアルバムですね、『Workin'』というアルバムから、「Half Nelson」。」
- Half Nelson / Miles Davis Quintet (『Workin'』)
「はい、もう1曲。えーとですね、あのまたジャズなんですけど、さらに遡ってですね、Claude Thornhillという人がいるんですけど、彼の楽団が演奏する「Donna Lee」ですね。で、この「Donna Lee」というのは、絶対聴いたことがあると思うんですけどね、みんなも。えーと、まぁ有名なのは、Charlie Parkerの演奏した「Donna Lee」ですね。で、またそのずーっと後になって、惜しくも亡くなってしまった天才ベーシスト Jaco Pastoriusが、なんとベースで「Donna Lee」を弾いた……もう衝撃でしたね。というふうにいろいろな人が……後はAnthony Braxtonがバスクラリネットで演奏してたりとかですね、まぁいろいろな人が取り上げている曲ですけども。この演奏を聴くとですね、当時の、いわゆるダンスホールですね、あの……踊りのダンスの為の音楽……のようなアレンジ、多分その為のアレンジで(笑)。本当にあの軽快でですね、当時のこれ47年の録音だったと思いますけども。戦争が終わって、2年後ですね。非常にこう華やかな、アメリカが一番ピークで輝いていた時かもしれませんけども、そういう時代のダンスホールの雰囲気がよく出ているアレンジで、とても面白いなぁと思うんですけど。Claude Thornhill、「Donna Lee」。」
- Donna Lee / Claude Thornhill (『Claude Thornhill & His Orchestra, 1947』)
<エコ・レポート>
「エコ・レポートをずっと担当してくれていましたエコロジーオンラインの上岡 裕さんですけどもね、まぁ還暦を迎えたということで(笑)、還暦を機にですね、いろいろご自身の生活があるでしょうから、このコーナーを後輩に譲りたいという申し出がありまして、その後任をですね、この番組にも縁の深い、"more trees" という僕が言い出しっぺの会社があるんですけども、そこの事務局長の水谷伸吉さんにお願いすることにしました。水谷さんとはですね、僕がmore trees を作った時からの、誰かの紹介で会って……ああ、彼は素晴らしい!と思ったんですけども。すごいめちゃくちゃ爽やかな青年で、人間性も顔つきも。だけどものすごいなんか、おじさん好みの冗談を言う、昭和の冗談をよく言うという変わったキャラクターで、あの……仕事柄、日本や海外の各地の森林、森に行くことも多いんですけど、その特に日本だと、森に従事しているのは、お年を召したおじさま達が多いんですけども、男性率、本当に90%以上じゃないかと思うんですけど。それも、その高齢者ですね。で(笑)、水谷くんがいう冗談が、その高齢者のおじさん達に異常にウケるということでですね、連発してるわけなんですけども。本当に爽やかな青年で、それ以来ずっと、事務局長を引き受けてやってもらっていますけど。よろしくお願いします。水谷くん。」
「皆さん、こんばんは。more trees 事務局長の水谷伸吉です。上丘 裕さんに代わり、3月からこのコーナーを引き継がせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。」
「more trees は、2007年に教授の呼びかけで設立された森林保全団体です。現在では、国内では北海道から九州11カ所、海外ではフィリピンとインドネシアの2カ所。計13カ所で森づくりの活動を展開しています。活動のきっかけになったのは、やはり、世界的に深刻化する森林の減少問題なんですね。その問題を受けて教授が、もっと木を、もっと森をということで、more trees を設立しました。more trees が始まった当初、10年以上前は、やはり森林の減少というのが問題にはなっていました。ところが最近は、森林の減少だけじゃなくて、やはり気候変動っていうのが、現実化してる……一般の方にも身近な問題になってきるんじゃないかなというふうに思ってます。去年、例えば、ブラジルのアマゾンでも大きな森林火災がありました。オーストラリアの森林火災っていうのも、去年末から年始にかけて、とても広大な面積が燃えました。そういう森林の火災とかが、もはや対岸の火事じゃないっていうことなんですよね。例えば去年、台風19号とか大きな台風が日本を襲いましたけど、やはりこういう台風の巨大化っていうのも、気候変動の影響を受けてるんじゃないかなと、これは間違いなく言えると思います。その原因のひとつになっているのが、この森林破壊。で、ちなみに日本国内の森林を見ると、日本は戦後にスギをたくさん植えたんですね。その結果、いま国土の約7割が森林に覆われてます。戦前は国土の45パーセントぐらいが森林に覆われていたと言われてますけど、せっせと木を植えた結果、22〜23パーセントは森林率が増えてるんですね。ただ、その大半が、スギとかヒノキっていった人の手によって植えられた森なんですね。それがいま成熟しているので、干ばつといって、間引く作業も求められてます。さらに樹齢50〜60年経った木は、どんどん使える状態になっているんですけども、そういった木を積極的に使うっていうことも、いま求められています。で、日本に眠っているそういう資源……森林資源であるスギ、ヒノキを積極的に使うっていうことは、最終的には熱帯雨林を無駄に切って使うっていうことが減る……つまりインパクトが緩和されるっていうことにもなりますので、日本の森林を適切に使っていくっていうことが、いま求められていると思っています。」
「ちなみに僕も花粉症デビューしているんですけれども、これからどんどん花粉が飛ぶ時期だと思います。スギをね、どうしても先人はたくさん植えてしまったんですけれども、それを積極的に使うっていうことはですね、もとあった森林のバランスに戻していく……バランスの取れた森林に戻していくっていうことにも繋がると思ってます。なので、スギ、ヒノキを積極的に使ってあげる、生活に取り入れていくっていうことも、今後、大事になってくると思ってます。最近では無花粉杉っていうのが開発されていて、要は花粉を飛ばさないスギなんですけども、僕は個人的には、生殖機能を失う品種改良っていうのは、なんかちょっと自然の摂理に反してるかなと思って、男としてはちょっと悲しいなあと……花粉を飛ばさないのは悲しいなあと思ってるんですけど。まあ、そうじゃなくて、元あった森林のバランスに戻していくっていうのが、無理ないやり方なのかなと思ってます。ただ、東京都なんかも無花粉杉に植え替えていくっていう作業を粛々とやってるんですけども、実はですね、いまのペースだと数百年かかるって言われてるんですね。なので、植え替えるだけじゃなくて、積極的に僕らが資源として使っていく……使ったあとは、さらに昔あった木の種類に戻していく。そんなことも大切なんじゃないかなと思ってます。そういう多様性のある森にしていくことで、例えば、保水力が増したりとか、台風のような被害でも簡単に倒れないとか土砂災害が緩和されるとか、そういういろんな意味で災害とか変化に強い森になっていくと思いますので、そういう森をちょっとずつ日本でも増やしていきたいなと。」
「先日、僕はインドネシアに行ってきました。インドネシアでもカリマンタン島……ボルネオ島という、熱帯雨林が豊かな場所……だったところなんですけども、僕らはそこでですね、more trees としてオランウータンの森を再生させようということを、2015年からやってます。久々に訪れたんですけども、オランウータンの森のすぐ隣で、石炭の採掘が進んでいたりとか、パームオイル……チョレートとかシャンプーの原料になる、この油が取れるプランテーションがすぐ横まで広がっていたり、あと実はインドネシアってジャカルタから首都を移転するって決まってるんですけど、その移転先が、僕らのセンターから数十キロ先のところなんですね。そこに延ばす高速道路も順調に建設が進んじゃってまして、実はその敷地が、僕らの活動してる場所と被るんですね。だからそういう石炭とかパームのプランテーションとか、都市開発。そういった波が着実に押し寄せてる現状を肌で感じました。そうなると、僕が進めてるオランウータンの森もどんどん減ってしまいますし、オランウータンだけじゃない、さまざまな動物の住みかも減ってしまっている、という現状があります。なので、この人間活動と自然を保護していく守っていくっていう、この狭間を目の当たりにしたんで、僕らもいろいろ考えさせられました。オランウータンってインドネシア語で "森の人" ……やはり森がないと生きていけない。僕ら日本人としても、ぜひ、そういった熱帯雨林の問題、いっしょに皆さんと考えていきたいと思っていますし、教授にもですね、ぜひオランウータンの現場……遠いですけどね、いつかご覧いただいきたいと思っておりますんで、いつでもお連れします。以上、エコレポートをお届けしました。水谷伸吉でした。」
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