「坂本龍一です。ここからは二ヶ月に一度お届けしているレディオサカモト。皆さん、お元気でしたか。今回はニューヨークのプライベートスタジオからお届けしています。僕はこの二ヶ月はね、コーヒーぐらいは買いに行くんですけど、ほとんどそれ以外、外にも出ないで(笑)、ニューヨークで篭って生活をしていまして、鶴の機織りなんて言ってるんですけど、まあ……鶴の機織りをよくやっているんですけれどね。ここんとこ、ちょっと忙しかったです。それなのに、ほんの少し、三日間だけフランスに行く用があったりして、帰ってきたばっかりなんですけど。」
「今回は初めてパリに寄らずに、シャルル・ド・ゴール空港からですね、TGVに乗って、ロレーヌ地方にあるメッスという街……小さい街ですけどね、行きました。パリにポンピドゥー・センターがありますけど、そのメッスという街に、ポンピドゥー・センター・メッスというのがありまして、そこで2月27日から半年間、僕のとっても敬愛する李禹煥さんの一大展示……個展っていうんですかね、ワンフロア全部を使った展示が始まりました。大っ変光栄なことに、今回、李先生から直々に展示会場に流す音を作ってくれと仰せつかりまして。もうほんとに恐縮しながらですね、李先生の作品を見たり思い浮かべたり考えたりしながらですね、自分としては一生懸命努力して、約1時間の音作品を作って、その設置と最終チェックで三日間だけ行ったんですけども。李先生ともごいっしょして、いろいろ楽しく話を伺ったりとかですね、オープニングのレセプションにも参加させていただいたりとか、非常にもうほんとに身に余る光栄というか、汗びっしょりな感じの、駆け足の三日間でしたけども、大変幸せな、至上の時ですねえ……そういう、自分の大好きで敬愛するアーティストと仕事をできるっていうのはね、ほんと、まあラッキー、幸せなことで、望んでもなかなかできないですから、もう嬉しい限りですけど。でまあ、先生にも喜んでいただいてよかったなあと、幸せに浸る暇もなく、実は帰ってきてすぐ別な仕事に取りかかってるところなんですけど。」
<『坂本龍一 選 耳の記憶』後編も出ました。>
「1月に『坂本龍一 選 耳の記憶』の後編を発売しました。2011年から2018年にかけて、婦人画報に掲載された坂本龍一のコラム「耳の記憶」をCD化したコンピレーションの後半ということですね。量が多いいので2巻に分けたということなんですけども、後半24コラム……2年分、24曲収録。前にも言ったと思うんですけど、1年がちょうど12ヶ月で、まあ僕らが普通に音楽で使っている音階も1オクターブは12個の音があるので、その12……1月から12月までをちょうど、ドから順番に上がっていってシまで、その調の音楽を選んでいるわけですね。で、4年間やっているので、48とあるわけなんです。」
<3月後半は、また日本に行きます。>
「今月はそうそう、また後半に日本に行くんですよ。ひとつは、2年ぶりになりますけど、NO NUKES 音楽フェスティバル 2019。豊洲ピットです。23日と24日の2日間、行われます。24日に、僕と大友良英くんのデュオっていうか……どうなることやら(笑)。まったくリハーサルはしないので、ぶっつけ本番なんですけど。ぜひ、来てください。そして、3月30日、31日に東北ユースオーケストラの第四回目の公演があります。30日が盛岡市民文化ホールの大ホール(岩手県)、31日が東京オペラシティ コンサートホール、初台ですね。前回も特別ゲストとして出演してくれたんですけども、盛岡公演は朗読で、のんさんが。そして東京の方は、毎回出演してくださる……やはり特別ゲストの吉永小百合さんが朗読を担当してくださいます。今回、みんなが演奏してくれるメインの楽曲はですね、ちょっと古典的でもあるんですけども、ブラームスの交響曲 2番なんですね。なかなか大人の音楽なので、どうなるか、非常に楽しみなのですが。僕もそれから団員たちも、公演の前、3日間、盛岡に泊まりで合宿してでですね、最後の仕上げをします。どうか期待してください。」
<映画『ナイトクルージング』をご紹介。>
「僕の友人でね、以前、山口市にあるYCAM(山口情報芸術センター)で仕事していた、田中みゆきさんというキュレーター/プロデューサーが映画を手がけていまして、今月30日にアップリンク渋谷などで公開されるということです。どういう映画かということを、田中みゆきさんと、映画を作った監督の佐々木誠さんからコメントが届いてます。」
田中みゆき「映画『ナイトクルージング』プロデューサーの田中みゆきです。坂本さんとは、私が以前、勤めていた山口情報芸術センター、YACAMというところで10周年記念祭をやったときに、坂本さんに芸術監督としてお越しいただいてご一緒しました。今回この映画は、生まれつき目が見えない監督が映画を作るというプロセスを追ったドキュメンタリーなんですけど、見えないという監督の存在が、見えることってなんだろうっていうことを考えさせるような映画になっていて、その映画を作るにあたって、坂本さんにも興味を持っていただけるんじゃないかと思って、コメントをお願いしたりしました。」
佐々木誠「『ナイトクルージング』監督の佐々木誠です。この作品はですね、生まれつき全盲の加藤秀幸という男……僕の友達でもあるんですけど、彼が映画を制作するっていう作品になるんですけども、それを私がドキュメンタリーで追うっていう、映画の中に映画があるといった二重構造でもあるんですけど。そもそもこういう映画を作ろうと思ったきっかけというのは、彼と7、8年前に出会ったんですけれども、僕らは同い年で1975年生まれなんですけど、最初会ったとき、映画や音楽の話ですごく盛り上がったんですが、音楽は分かるんですけど、生まれつき目が見えない彼となんでこう映画の話が合うんだろうっていうのがおもしろかったんですね。世代でいうとジャッキー・チェンとかトップガンとか、それが割とちゃんとできるっていうのがおもしろいなと思って、彼が映画作れるんじゃないかと思ったので、僕が誘ったのが始まりだったんですけどもね。」
田中「この映画の内容を話すと、見えない人がひとりでがむしゃらにカメラを回して一生懸命作る、みたいなことを想像される人もいるんですけど、そういうことではなくて、見えない監督と、見えるスタッフが、どうお互いが持っているイメージだったり世界を共有しながらひとつのものを作れるのか、作れないのか。っていう映画なんですね。なので私は、どちらかというとコミュニケーションの映画だと思っていて。加藤さんは、普段から音を扱っていて、バンドをやってるということもあって、人と物を作るっていうことがすごく分かっている人で、そこがやっぱり今回、作れるなと思った一番の大きい理由でした。もうひとつは、佐々木さんと加藤さんの友情というか。見える見えない関係なく、友達であることってすごく大きなことなので、そこをベースにしたコミュニケーションとイメージの映画だなと思っています。ただ、出来上がった映画を加藤さんが確かめられないっていうことは最初からあるので、その前提をもとにしている少し残酷な映画でもあるかもしれないんですけど、私たちと必ずしも同じ方法ではないかもしれないんですけど、加藤さんもこの映画を共有していると、私は思っています。」
佐々木「で、加藤くんが作ってる映画……『ゴーストヴィジョン』というタイトルなんですけど、SFアクション映画なんですね、これが。舞台は未来の銀河の果ての宇宙の話なんですけど、まあそこで行われる、生まれつき目が見えない男と、見えるけど超能力を持ってる男がコンビを組んで、ゴーストという謎の存在を追うという作品なんですけれども。これが恋愛映画とかを彼が作りたいって言ってたら、どんだけ楽だったんだろうという感じで、SFでアクションを、生まれつき目が見えない男が作るっていうのは、イマジネーションもそうなんですけども、物質的にもいろんな大変なことがあるので、見えるスタッフとの、そこのやり取りが、かなりいろいろ大変だったんですね。色も光も知らないので、そこから始めなきゃいけないっていうのは大変だったんですけれども、やってるうちにスタッフもだんだん慣れてきてるっていうのもあるんですけど、ただ、ほんとに大変でした。これまでにないおもしろいドキュメンタリーになっているかなとは思うので、ぜひ、ご自身の目で観ていただいて、いろいろ楽しんでいただければなと思います。」
田中「こんなに面倒くさいことをする人も二度と現れないと思うよ、って言われたこともあるんですけど、ほんとにそれぐらいあの手この手を使って、加藤さんと、今目の前にある現実なり、これから作ろうとしている世界をどう共有できるかっていうのを、見えるスタッフがほんとに四苦八苦して加藤さんに伝えようとしている。それを加藤さんは割と大きくどっしり構えて受け止める、みたいな構造になっています。生まれつき全盲の人というと、世間では障害者と扱われてると思うんですけど、この映画に関してはほんとに、見えてない監督がいる。で、見えるスタッフがいる、っていう条件の違いだと思っていて、見える見えないを越えた、作ることに……条件の違う人たちが集まって作ることの極端な形というか、そういうものだと思っているので、作ることに興味がある人にはすごく楽しんでもえるんじゃないかと思っています。ウェブサイトも見ていただけたらと思うんですけど、このレディオサカモトでも出演している長嶋りかこちゃんがアートディレクションをしていただいていて、ちょっとした仕掛けがあります。公開は3月30日、アップリンク渋谷から全国順次公開していきます。よろしくお願いします。」
「というわけでね、僕ももちろん観ました。あまり先入観もなく観たんですけど、冒頭が真っ暗なんですよね、しばらく。声と音だけで出るんですね、ドラマみたいなの。なんだろうと思っていたら、それが映画の音だけバージョン。で、その後に画も付いたバージョンがあって、そしてプロセス……ですね、映画製作の。いろいろな各部所の担当の演出家とかですね、美術家さんたちとのやり取りが長く続くんですけども。ぜんぶ観た後で、やはり最初の映像のない音だけの部分が非常におもしろくて、まあ言ってみればこのラジオと同じなんですけども(笑)……けっこう昔はね、AM、FMでラジオドラマっていうのはよくあったんですよね、僕も学生から仕事を始めた頃に、よくNHK-FMなどに頼まれて、ラジオドラマの音楽を担当したこともあるんですけども……あれどこ行っちゃったかなー、音。残ってないかもね、NHKにも。ぜひ引っ張り出して聴いてみたいもんだけど、まあ、それを思い出したんだけども、でも昔ながらのラジオドラマというわけでも全然なくて、もっとほんとに今のSFを観てるような、かなり凝った音の世界。これはだから、まあ最近、僕が好きでよくこの10年、15年ぐらい聴いているアンビエント・ミュージックの世界などにも通じる、音響の世界というかね。単に音でドラマを作りますという以上のその、音のおもしろさ。音の作品、になっているなあと。で、映像がないわけですから、結局、聴覚だけで何かを作り上げる。で、そこにストーリーがあって、山谷があって緊張があったり、こう緩和があったりするわけですけど、これは音楽と同じだなと思って、僕は非常に興味深かったんですけども。」
<U-zhaanさん、インド滞在中のフィールド・レコーディング>
「今回のデモテープのオーディションは、U-zhaanと長嶋りかこさんにお願いしてます。U-zhaanはU-zhaanで、この1月、2月にかけて、長くインドに行ってたみたいで、でも、インドに行っててもLINEで何度かやりとりしました。LINEは使えるんですね。で、そう、なんで今まで思いつかなかったんだろうと思うんだけど、まあ毎年、U-zhaanはインドに行ってるわけですよ……だから、U-zhaanが拾ったインドの風景というか音というか、それを持ってきてもらおうと思うんだけど、持ってきてくれてるのかしらね。きっと、その二人から話もあるんだと思うんですが。」
ということで、今回のオーディションコーナーは教授不在の中、東京・六本木のJ-WAVEのスタジオにて、U-zhaanさんと長嶋りかこさんでお届けしましたが、コーナーの冒頭で、そのインドでの録音の話題になりました。
U-zhaan「インドに行ってる間に教授、坂本龍一さんからメッセージが来て、インドで生活している中でなんか気になった音とかフィールド・レコーディングしてきてよって言われて、それをみんなで聴こうよ。みたいなこと言われたんですけど、分かりました、ってがんばって録ってきたら教授がいないんですよね(笑)。なんでだ、って思ってるんですけど(笑)。」
長嶋りかこ「後で聴いてくれるんでしょうか。」
U-zhaan「たぶん、聴いてくれないんじゃないですかね(笑)。あのせっかくなんで、長嶋さんだけでも聴いてもらっていいですか。」
長嶋「ぜひ、聴かせてくださーい(笑)。」
ということで、オンエアでは「サラスワティ・プジャのお経」「カトマンズのいちばん有名な寺院「スワヤンブナート」の外で、お坊さんではなく、一般の人が集まって読んでいるお経」「U-zhaanさんが聴いていちばん音楽的だと思った、蚊やクモを退治する薬を売っているおじさんの口上」「U-zhaanさんが泊まっていた宿の、立て付けの悪い扉のかっこいい音」をご紹介くださいました。今回、フィールド・レコーディングをしてみてU-zhaanさんが思ったことは、「風防を買おうと思いました。」とのことです。
U-zhaan「今度、じゃあ長嶋さん、録ってきてください。」
長嶋「分かりました(笑)、赤子の泣き声ばっかになっちゃう。」
U-zhaan「そういえばあの最近の話でいうと、僕が出した新曲……というかミュージックビデオを作ってリリースしたんですけど、それの字幕と背景の色というかを長嶋さんにやってもらったんですよね。」
長嶋「ちょっと地味に、お手伝いをさせていただきました(笑)。」
U-zhaan「いや、地味じゃないですよ。地味な仕事ですいません、もっと派手な仕事をふってあげられればよかったですけど(笑)。」
長嶋「ちゃうちゃう、光栄でございます(笑)。」
RADIO SAKAMOTOオーディションに、インターネットから作品を応募できるフォームができました。作品はファイルのアップロードのほか、YouTubeのURLを指定しての投稿も受け付けます。
詳しくは、エントリーフォーム内の応募要項をお読みください。
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<坂本龍一 「この2ヶ月で聴いた曲から紹介」プレイリスト>
「ここからは、この間、ふだん聴いていた音楽のプレイリストを紹介しましょうか、だらだらと。この2ヶ月間は、とても忙しかったので、といってもまあね、いろいろ聴いてはいるんですけどねえ。何からいこうかな、じゃあ、昨日あたりから聴いたものから逆に辿っていこうかな。」
「久しぶりなんですけど、ニルス・フラーム。ドイツ人のピアノの人。僕にはちょっとニルスの音楽は甘すぎて、あまりよくは聴かないんですけど、とても音色(おんしょく)は好きですけどね。この曲はいいなと思いますけど。これあれですね、映画のサントラですね。」
- Them / Nils Frahm (Victoria Music for the Motion Picture)
「それから、僕もほんとに数日前に教えてもらったんですけど、珍しく感じる……どうかと思いますけど、実際珍しいんですけど女性でアンビエント・ジュージックやっている人ですね、ローレル・ヘイローという人なんですけど。アルバム『Raw Silk Uncut Wood』の6曲目。」
「次はね、クラシックというか現代音楽といった方がいいのかな、ハンガリーの作曲家で……ハンガリーといえばバルトークが有名で、その後、リゲティという戦後の作曲家もかなり有名で。リゲティと同い年くらいかな、もうひとり、ジェルジュ・クルタクという人がいて、リゲティほどは名前は知られてないんですけど、僕とても好きな人で。その人のとても短い作品なんですけど、「Játékok」 というシリーズのピアノの小品ですね。」
- Játékok: 9. Aus der Ferne / Marta Kurtag
「次ですけども、「Es ist genug」というバッハのコラールに基づいたヴァリエーションです。作ったのは、エディソン・デニソフという人でして、旧ソビエトの作曲家です。ロシア人なのにエディソンっていう名前がついてるんですけど、戦前に生まれて、比較的最近まで活躍していた人ですね。この曲はとてもいいなと思ったんですけど、その基になっているバッハのコラールがまた素晴らしくて。」
- Variations on the Theme of Bach's Chorale,"Es ist genug" / Edison Denisov
「おもしろいのは、ファミリーネームのデニソフ= denisov の最後のvを取っちゃうと、エディソン= edison で使われている全てのアルファベットがdenisoに含まれているんですね。並べ替えるとedisonになるという、まあこういうのアナグラムと言いますけど、それだけのことなんですけど(笑)、アナグラム的な要素の入れ替えっていうのは音楽でもよく出てくる手法でもあるんですね。順番の入れ替えみたいなことはね。だから生まれながらにしてそういう宿命を持ってんのかなというね。そしてもうひとつ、この曲でおやと思ったのは、基になっているバッハのコラール「Es ist genug」というのが、実は僕が、もうほんとに若いときから大好きなアルバン・ベルクという……割と早く亡くなってしまったシェーンベルクの弟子のひとりですね、の遺作であるヴァイオリン・コンチェルトに使われていて、とても有名なコラールでもあるんですね。この曲全体がほんとに美しい曲なんですけど、特にそのバッハのコラールが出てくるところはね、なんというかこの世のものとは思えない美しさで。クラシックの曲ですが、その基になっているバッハのコラールを、珍しいことに、ジャズ・コーラス・グループと言ったらいいんですかね……世界中で有名になったスウィングル・シンガーズっていうのがいるんですけど、彼らがこの……バッハばかりを扱ったアルバムなんでしょうね、ここで取り上げているんですよね。原曲の感じが分かるので、ぜひ聴いてみましょう。」
- Chorale 216 (Es ist genug) / The Swingle Singers
「もう1曲、懐かしいの……ヌジャベスですね。1週間ぐらい前かな、急に聴きたくなって、これは僕の友達でもあるShing02がラップをしている、ヌジャベスの中でもこれがいちばん有名なんじゃないかという、これを聴いてみましょう。」
- Luv(sic) Part2 / Nujabes feat. Shing02
「というわけで今回も(笑)、僕が聴きこむのは、ほんとめちゃくちゃ。ジャンルがばらばらで、もうあっちに飛んだりこっちに飛んだりするんですけどね、どうでしたでしょうか。」
<エコ・レポート>
「エコロジーオンライン上岡裕がお送りします。昨年夏、当時15歳だったグレタ・トゥーンベリさんがスウェーデンで始めた、子どもたちの気候ストライキが世界に広がっています。グレタさんは8月、スウェーデン政府が気候変動に対して適切なアクションをとっていない、ということで、3週間にわたって国会議事堂の前で座り込みをしました。座り込み終了後もこの活動を続けて、スウェーデン政府が気温上昇を2度未満に抑える対策を講じるまで、"Fridays For Future" (将来のための金曜日) ということを呼びかけ、毎週金曜日にストライキを続けることにしたんです。こうした彼女の動きに刺激され、スウェーデンのみならず、イギリス、ドイツ、ベルギー、イタリア、アメリカ、スイスなど、多くの国の若者たちが立ち上がり、世界各地で数万人規模のストライキが続いています。日本でも2月22日、グレタさんの活動に共感する若者たち20名が国会前に集まり、地球に住み続けたいと声をあげました。地球温暖化に対して、大人たちが思いきった対策を取らないと、被害を受けるのは若者たちです。未来に生きる彼らの意志を受け止め、各国政府がしっかりとした対策をとることに期待したいですね。」
「さて、エコロジーオンラインでも、遥かマダガスカルの地で、そんな未来世代をサポートする取り組みを進めています。私も3月中旬からマダガスカルを訪問、現地の事業の進捗を確認して来ます。前回の訪問ではエコロジーオンラインの若手スタッフが、バイオガスの専門家、チェンマイ大学のサッチョン教授とともに、手づくりのバイオガス施設を作って来ました。その施設から生まれたメタンガスでコンロに火がついたという嬉しいニュースも届いています。私たちがマダガスカルで普及しているのは、東南アジアで広がりを見せている手づくりのバイオガスプラントで、現地にある材料で、10万程度の予算でつくることができます。マダガスカルでは、調理に薪や炭を使っているため、森林が破壊され、地球温暖化を加速させています。そのエネルギーを牛や豚の糞尿から生み出す。森林破壊を減らし、糞尿の不衛生な管理による環境汚染の改善に繋げようとしています。この技術が貧しい地域での雇用の創出につながれば素晴らしいなと思っています。今回の訪問では、マダガスカルのサカイ市というところで手がけている里山エネルギースクールでワークショップも手がけます。そこに通う小学生といっしょにマダガスカルの未来を変える、小さなエネルギーづくりを学びます。この学校からマダガスカルの未来を担う子どもたちが生まれてくることを期待しています。このプロジェクトに関して、マダガスカルの日本大使館からもニュースが届いています。赤十字国際委員会が私たちのバイオガスの取り組みに興味をもってくれたというのです。こうして、マダガスカルに灯ったバイオガスの火をさらに広げるためにがんばらねば、と思っています。 」
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