<今回の番組は、RADIO "D"。ナビゲーターは永井玲衣さん、後藤正文さんです。>
永井「坂本龍一さんが2ヶ月に一度お届けしているレディオ・サカモト。皆さんご存知の通り、坂本さんは病気療養中のため、いま、お仕事をお休みされています。前回は、音楽家の大友良英さんが担当されました。今回は、哲学研究者でD2021の運営、永井玲衣と、」
後藤「後藤正文で、レディオDと題しまして、お届けします。」
永井「はい。えー実は教授から私たち宛に、なんと伝言があるということで。」
後藤「おーうれしいですね。」
永井「うれしいです。」
後藤「はい。」
永井「ここで、ものすごい緊張するんですけど、教授に代わって代読させていただきます。」
後藤「はい。」
永井「はい、じゃあまずはGotchさん宛てに。」
後藤「え、俺宛て?ワオ。」
永井「はい。えっと、では読ませて頂きます。」
D2021の前身、「No Nukes」ミュージックフェスからの付き合いです。「No Nukes」がマンネリ化したので、新鮮なものにしたいと、元シールズの人たちに声をかけました。皆、20代の若者たち。僕は60代、ゴッチは40代でちょうど真ん中です。 ぼくが病気の治療をしなくてはならなくなって、去年の半ばからなかなかD2021の活動に参加できなくなりました。なので、ぼくの気持ちをゴッチに託した感じ。ゴッチに代弁してもらいたいと思ってます。そういうわけで、これからもよろしく頼むね。
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永井「といったメッセージを頂いています。」
後藤「いやいやいやいや。重たい。重たいって言ったら失礼だな(笑)。嬉しいけど、責任あることですよね、これはね。でも、すごいなんか僕……D2021ね、坂本さんと一緒に始めて、 永井さんを含め、今日篠田ミル君も参加してくださっているけど、でも仲間がすごいたくさん増えて、とっても心強いです。しかも何て言うんだろう……僕もいつも会議の度に、なんていうの。教授だって間違ったこと言ったら怒られるような雰囲気で話し合っていたじゃないですか、最初の頃って。」
永井「そうですね。そうですね(笑)。」
後藤「だから、こんなにフラットに世代を超えて、いろんなことって話せるんだって可能性はいつも、Dのみんなと話していると思うことで。うーん、心強いですよ僕はとても嬉しい。だからなんかね、坂本さんは、Gotchが代弁っておっしゃってくれましたけど、そういう……ってかみんなでやりたいなって思いますね、Dのみんなで。それぞれの場所で、坂本さんのこれまでの歩みとか、まだね、現在進行中ですけど、共になんかこの社会を変えていく力になれたらなというのが、本当に僕の願いというかね。でも、今日永井さんが番組をナビゲートしてくださるということで、心強いですよ。」
永井「(笑) 緊張しますね。私にも実はですね、コメントを頂いてるんですよ。すごいもう、一生の宝ですね。ちょっと読ませていただきます。はい。」
永井さんは、D2021を始めて少し後から参加してくれたと記憶していますが、毎週のリモート会議やYouTubeでのパネルディスカッションの司会などで、抜群の仕切り能力を示してくれました。ご本人は、そこは自分としては得意ではないんだけど、とおっしゃるかもしれませんが。個人的に続けておられる「哲学対話」を通して、人とコミュニケートすることの難しさを多く経験したことが、大きな糧になっているのかもしれませんね。今後とも、仕切りの能力だけではなく、哲学的にも僕たちを大いに刺激してください。
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永井「といったもの頂いています。ありがとうございます、坂本さん。」
後藤「見ていてくださるの分かりますねぇ、なんか。」
永井「分かりますねー、嬉しいです。本当に。ありがとうございます、はい。もう本当に。この教授の言葉を頂いた上でですね、ここから2時間私たち2人でこの番組を進めさせていただきます。よろしくお願いします。」
後藤「よろしくお願いします。」
永井「番組前半は、D2021パート。私たちは3月に『Decade 現在から何が見えるか』という映像を制作して配信したのですが、こちらに出演していただいた方たちをお迎えして、D2021とは?これからの未来についてお話を伺っていきます。」
永井「後半はいつものレディオ・サカモトパート。U-zhaanさん蓮沼執太さんによるデモテープオーディション優秀作の発表です。長嶋りかこさんはお休みとなります。そして坂本さんは、選曲でレディオ・サカモトに参加していただいております。今聴いている曲、注目しているアーティストをプレイリストで紹介します。」
<RADIO "D" (Part.1) - GUEST : eri(DEPT Company), 篠田ミル(yahyel)>
永井「まずはこの時間のゲストをご紹介します。D2021運営のyahyelの篠田ミルさんです。」
篠田「よろしくお願いしまお願いします。」
永井「そして、DEPT Company代表のeriさんです。よろしくお願いします。」
eri「よろしくお願いします。」
永井「この対談は、全員リモートでご自宅から参加していただいております。お二人は、D2021で3月に配信しました、『Decade 現在から何が見えるか』にご出演いただきました。eriさんはですね、ドキュメンタリーパートにご出演いただいたんですけれども、映像をご覧になっていかがでしたか。」
eri「なかなか自分が喋ってる様子をあれだけ長い尺で見るの結構辛い……自分的には辛いなって思ったんですけど、でも自分がやっぱり言いたいことはきちんとやっぱり伝えていただいたし、反響自体もすごいあって、参加させていただけて本当によかったなというふうに思っています。ありがとうございます。」
永井「eriさんはあれですよね、DEPTでの試みであるとか、何かトライしてることとか、そういったことをお話いただいたんですよね。」
eri「私自身が今、私のパーソナルライフも、私の会社として企業として、どれだけ環境負荷を考えてやっていけるかっていうことを主軸に活動してます。で、私が半分古着屋さんで半分もの作りっていう感じなんですけど、その両方の側面で私たちに何ができるのかということを日々、考えて行動しているのを、今回ちょっと密着して伝えていただいたという感じですね。」
永井「あれ観ていかがでしたか、ミル君は。」
篠田「そうですね。あんな形でファッション産業の中で……ファッション産業の中自体で、すごいSDGsとかいろんなキーワード、結構ホットなトレンドになっていると思うんですけど、それこそWWDでみんな特集したりとか。で、みんな凄いトレンドワードとしてすごいSDGsを使っている感がすごいあって、まぁそれこそ斎藤幸平さんが、SDGsは大衆のアヘンだ、というふうに喝破してましたけど、なんか上辺だけのSDGs感(笑)……やってるぞサステナブル感みたいなの、すごいあるなと思っていたんですけど、すごいeriさんのドキュメンタリーパートを観て、なんか真摯に取り組んでらっしゃる姿というか、自分ごととして引き受けている感じはすごく……こんなすごいちゃんと取り組んでらっしゃる方って日本にもいたんだな、といういうことはすごく感動して、何か一緒にできたらいいなというふう感じました。」
eri「嬉しい。泣いちゃう。」
永井「(笑)で、まぁ今日はそのを”D”をテーマにってことなので、何かその”D”ということで、Democracyの”D”とか、Demonstrationの”D”っていうので、ちょっと皆さんと、なんか考えたいなと思っていて。で、なんかeriさんは最近、Demonstrationの何かすごい新しい形を提示されてて、それについて伺いたいんですけど。」
eri「今年ってすごい日本のエネルギー問題が大きく動く年……だと思っていて、まずえっとバイデン大統領が、大統領に就任する前の公約で、自分が就任したら100日以内に気候サミットを行うという公約を掲げていたんですけど、それが大統領になったので叶うことになって、やっぱりそこで日本がどういうふうに、これからエネルギーミックスを打ち出していくのかっていうところが、結構固まるんじゃないかなっていうふうに思っていて。プラスあの……エネルギー基本計画といって、今これからの日本のエネルギーの政策をどうしていくかっていう会議も行われていて、それに対してあと4年という署名活動も今年の頭からやっているんですけど、それに加えて、この気候サミットに対して私たちなんかもうちょっとできないかなっていう話を、気候アクティビストの小野りりあんちゃんと電話して、私たちなんかやりたよね、何ができるかな。って言って、その中で……ハンガーストライキやる?みたいな話になって。で、ハンガーストライキって言葉出たときに、えっ!? ハンガーストライキ?ハンスト?ってならなかったんですよ全然。ハンストやろう!みたいな、2人で。まぁそのハンストやるっていうところは電話で決めたんですけど、どうやるかっていうのはちょっと、どうしようかなとに思って、周りの本当に信頼している友人たちに、こういうことをやろうと思ってるんだよねっていうことを話をしたんですよね。で最初は、もう本当に2人でやるというところから始まったんですけど、そこからもう本当に今すごくとても立派なストライキになったんですけど、名前が「ピースフル クライメイト ストライキ」っていう名前で、そんなことを7日間。」
永井「なるほど。”D”のDemocracyって、やっぱり何かこう、なんていうんですかね、民主主義ってそれ自体として、ぽんってあるわけじゃなくて、私たちが一生懸命関わり続けたりとか維持しなきゃいけないもの……そこでやっぱりDemonstration、何か明確な主張をしたりとか、声を上げることがすごく関係すると思うんですけど、割とDemonstrationというと、なんかみんなで歩くとか、危ないみたいないろんなイメージがあるじゃないですか。その中で今、eriさんのお話を伺うと、なんていうんですかね、ハンストっていうのもされるし、みんなに呼びかけるような配信番組をしたりだとか、あと何かそこに歌があったりだとか、なんかいろんな工夫がeriさんの何か考えていることがあるのかなって思うんですけど、ミル君は一方で、プロテストレイヴっていうのをやっているじゃないですか。きっかけとか、そういうのってありますか。」
篠田「プロテストレイヴ自体は、Demonstrationに対するなんかメタ的な目線がすごいあって、そもそもDemonstrationすること自体、声を上げること自体が、すごく僕らの世代になかなか根付いてない、というか日本で多分もちろん70年代とかまで学生運動がすごい……それこそ坂本さんとかもやってたりですごく盛り上がっていたと思うんですけど、やっぱりその学生運動とかあのへんの70年代までの社会運動が、あさま山荘事件があったりして行き詰った後に、なんか日本でやっぱりこう……社会運動をしたりデモをしたりすることが、永井さんも言ってましたけど、すごく過激なことだったり、なんか食傷気味に捉えられちゃう風潮みたいなものを変えたいねっていうところからプロテストレイヴは始まってて。きっかけとしては、あいちトリエンナーレのときの表現の自由の補助金不交付の時に、DJのMars89君と、何かやったほうがいいねっていう話をして、で、ちょうどベルリンのラブパレード……90年代に行われてたラブパレードとか、世界各地でもそういうプロテストレイヴみたいな形の、外でレイヴをしながらプロテストするみたいな形式がまた盛り上がっている……そういうことをやりたいなって考えてたんですけど。何かトピックを……最初はそのもちろん表現の不自由の話でやろうってなったんですけど、なんかそれだけじゃないよね、と。今のこの我々を取り巻く状況、表現の不自由もやばいけど、もっとやばいことたくさんあるよねっていう話になって。だったらもっと根本的に、声を上げること自体……を肯定してあげたり、街に繰り出すことによってなんか高まる自己肯定感とか自分の身体性みたいなものを取り戻せる場を作りたいねっていう話になって、声を上げることっていいよねっていうデモ(笑)。でも声は出さないで、ただ踊っているんですけど(笑)。なんかそういうことを街でやりたいなっていうのがそもそも出発点にはなってます。なので、プロテストのやり方自体も、基本的には僕らは街に出て場所を占拠するなり、サウンドカーで練り歩くなりして、音量を流していいDJがDJするみたいなことを心がけていて。デモデモしてたらなかなか巻き込めない人たちをどうやったら巻き込めるか……クラブで見かけるような子たちがどうやったら社会運動に気軽に来るようになるのか、みたいなことを結構意識してやっているような気もします。なので、路上でトラックの上からスモークを焚いたりします。」
永井「"スモークを焚いたりします" って面白いですね(笑)。」
eri「本当でも私、プロテストレイヴ、実はすごい感化されていて。」
篠田「あぁ、ありがとうございます。」
eri「もう動画を見て、やばい、これ私は一生ここに行かなかったことを後悔するって思ってました。」
篠田「なんかでもプロテストレイヴ自体も、そうやって自分でこういうことやってみようとか、じゃあ私もこういう運動をしてみようみたいな、こう敷居が広がればいいと思っていて。だから僕らはできるだけ、僕とMars君が最初言いだしっぺではあるんですけど、僕らがやってます感はあんまり出さないようにしていて。なんかリーダーとかカリスマがいる社会運動というか、すごい旧式のものというか、ちょっと今の時代とは違うんじゃないかなっていう気はしていて。むしろ、だからじゃあこれに感化されて、福岡でプロテストレイヴやってみましたとか。機材ないんで、じゃあ昔の90年代の…」
永井「ラジカセ担いでやる、みたいな。」
篠田「そうそう。ラジカセ担いで公園練り歩いてみましたとか、そういうテンションでいろんな人たちが始めてくれたらなっていうのは、実は思っています。」
永井「なんか、そのこれからの”D”というか、これからのDemocracy、これからのDemonstrationっていうので、いや別になんかこうすごく新しいことをしたいとかそういうことではなくて、これからの時代の中でのDemonstrationについてもなんか考えたくて……お二人がほんとおっしゃっていたような、何か深いコミットメントじゃなきゃだめだとか、みんなが完璧に声を合わせなきゃだめだとか、そういうことじゃなくて。自分の主張をするっていうだけじゃなくって、他者に呼びかけるみたいな、なんか方向性もあるじゃないですか。何て言うんですかね。共に……開かれるようなDemonstrationって、どういう風に考えていけたらいいかなっていうのは思ってて、その共にっていうのがやっぱりこの新自由主義が極まった、この2021年……にすごい対抗しうる何かだとすごく思うんですけど、これからのDemonstrationって、どういうふうになっていきそうですかね。」
篠田「僕の考えなんですけど、呼びかけるのって、結構呼びかける側も苦しいし、呼びかけられる側も苦しいと思うんですよ。これやってんだけどやらないって言われても、いやぁ……みたいな感じだし。これやってんだけどやらないって誘う側も結構辛いと思っていて。それってすごく続かないし有効な方法じゃないなと思っていて。なんかこういう……社会運動とか社会を動かす何か変化を作ることって、なんか呼びかけたり勧誘したりするっていうよりかは何かこう……感染させる……ちょっと今ちょっとトレンディーなワード過ぎなんですけど。」
永井「ちょっと大丈夫ですか、そのワード。」
篠田「今に始まった話じゃなくて、例えば60年代の公民権運動の時とかに、最初のでかいうねりになったのって、やっぱりおばあちゃん……黒人のおばあちゃんの方がバスでゾーニングされている中で、いや私はそっちには座らないと。黒人の席には座らないっていう、不服従を一人でやったことにこう、みんなだんだん感染させられてというか、動いていく。なんか、だから呼びかけるものじゃなくて、何かこう自分一人の行動でこうやってみたことによって、背中を見せるとも何か違うんですけど、感化させる、なんか社会運動ウイルスみたいなものに。」
eri「私が普段言っているのは、"種蒔きだ" っていつも言っていて、私自身の中にも誰かが蒔いた種を感じる時があって。」
篠田「すごく分かります。誰かに蒔かれた種が自分の中で咲いているという感覚が僕もわかる……というか "種蒔き" というワーディングの方が過激じゃなくていいなあと。つい過激なワーディングをしちゃいがちなんですけど、僕は。本当にそれこそ、僕も2015年ぐらいに国会前でSEALDsが運動をしていたときに、初めてそういう場に行って、すごい景色を見て、おぉってやられたことが自分の中で、ずっと眠っていたというか、じわじわと本当に種みたいにあって、やっぱりここ何年かで自分も表に立っていろんな社会運動とかお手伝いするようになって、なんか本当に発芽したなみたいな感覚ってすごいあって。逆にSEALDsの方のお話とか聞くと、じゃあその前になんかやっぱり坂本さんやGotchさんがこう、カルチャー運動の社会運動を混ぜたものをやっていたことに触発されていた、みたいな話があって、やっぱり連綿となんかみんなね、それぞれ種を蒔かれて、いつか発芽して……みたいな繰り返しの中で、僕らまで繋がってきているんだなっていうのは、すごくわかる話だなって思いました。」
eri「本当に確かに、私もその2つにすごい影響を受けているもん。」
永井「やっぱり話を伺ってて、もちろん無理に人を変えようとしたりとか何か引き込もうとするみたいなのは、全然……坂本さんにもGotchさんにも、ミル君にeriさんにも、SEALDsにもないんですけど、なんかね私はあの……許してもらってる気がするんですよね。私はその問題について考えていいってことを、なんか許してもらえたような気がするんですよね、これまでの人たちの活動を見ていると。あ、これ私の問題でいいんだ……っていうふうに思わされる。で、そこで、だったら一緒に考えよう、一緒に歩こうよって言ってくれた……特にeriさんの言葉とかってそれすごく感じるし、しかもそこで交わされる言葉って、強く煌びやかな立派なわかりやすい言葉じゃなくて、何かまとまってなかったり言いよどんでたりとか、ぷつぷつ切れていたりとかするようなもので、でもすごくそれが嬉しいんですよね、幸せというか……それこそがまさに発芽っていう感じがして。なんかあなあが考えなさい、あなたの問題ですよ、という風にプレッシャーっていうんじゃなくて、なんか幸せに踊っているeriさんとか、演奏してる坂本さんとかがよぎる……みたいなのが、良い意味で感染するっていうか。」
eri「うーん、いやでも、ほんとそう。」
篠田「うん。そう思います。なんか今、永井さんの視覚的イメージみたいなものに打たれて、発芽している感じを受けるっていうのがすごく僕も分かるというか。人がやっぱり自分が正しいと思うことがあって、それに対して真摯に行動なり何かをしてるときって、ちょっとまぁ "美しい" って言葉は危ういかもしれないですけど、やっぱ心を打たれるものがあるなって思っていて。国会前のときのSEALDsの景色って、すごく心を打たれる景色……あんな何十万人の人が集まって、みんな声を上げてたりって、すごく心を打たれる美しい景色だと思いますし、あるいはプロテストレイヴでなんかよくわかんない人たちが踊って、表参道をトラックで通ってたら、通りがかりのギャルがなんか乱入してきて、「なにこれー!?」つって踊ってるの、それもすごいなんか、僕は美しい景色だなって感じるんですけど、心を打たれる。なんか、そういう景色の種みたいなものを、本当にeriさんが踊っている姿だったりとか、いろんなとこで蒔いておくみたいなのって、ほんとにやっぱり永井さんの今の発言を聞いて、発芽している瞬間があるんだなと感じました。」
eri「ねー、すごい実感できて、すごい嬉しかった。今の。」
永井「(笑)……ていう感じで、そろそろお別れの時間になりました。eriさん何か告知などはありますか。」
eri「はい。えっと、今日お話させていただいた、「ピースフル クライメイト ストライキ」……今日5月2日の放送日にはもう既に終了しているんですが、えっとアーカイブでお話した内容が見られるようになっていますので、「ピースフル クライメイト ストライキ」のオフィシャルYouTube、もしくはTwitter、Instagramのアカウントがありますので、そのいずれかにアクセスしていただいてアーカイブをぜひご覧いただければと思います。」
永井「篠田ミルさん、eriさん今日はありがとうございました。」
篠田「ありがとうございました。」
eri「ありがとうございました。」
<RADIO "D" (Part.2) - GUEST : 中里虎鉄>
永井「後半パートは、この方をゲストにお迎えしています。自己紹介をお願いします。」
中里「はい。フリーランスでフォトグラファーと『IWAKAN(イワカン)』という雑誌の編集をやっています、中里虎鉄です。どうぞよろしくお願いします。」
後藤「お願いします。」
永井「えーこのパートは、「これからのDemocracy」というテーマでお話を伺っていきます。引き続き全員リモートで参加していただいております。」
後藤「よろしくお願いします。」
永井「中里さんはですね、D2021で3月に配信した『Decade 現在から何が見えるか』にご出演いただきました。ありがとうございました、あのときは。」
後藤「ありがとうございます、本当に。」
中里「こちらこそ、ありがとうございました。」
永井「配信の再放送が4月中旬にありましたけれども、中里さん、それご覧になったり、もしくは出演されて、何か感想などいかがですか。」
中里「そうですね。なんかその3月、いちばん最初に公開された時もそうですし、その再放送が決まってまた見てくださっている方々の反応を見る前に結構、ハカハカしてまして……まあデモクラシーの事もそうだし、なんか自分たちの、まあ普段は僕ジェンダーについてすごく発信したりとか、まぁそれをテーマにクリエーションをしたりしているんですけど、まあそこも含めた上で大きなデモクラシーという活動だったりとか、動きに対しての話っていうのをこうするのが、今回ほぼ初めてみたいな感じだったので、本当にいろんな人たちが見てくれたので、すごく嬉しかったですね。」
永井「Gotchさんは、虎鉄さんのパートみていかがでした?」
後藤「まあでも、いろいろ考えちゃいますよね。今日、虎鉄さんといっしょに話せるということで何の話をしようかずっと考えてたんですけど、僕、自分のコンプレックスの話、ちょっとしようかなと思って。」
中里「うんうんうん。」
後藤「で、僕コンプレックスね……はっきり言うと、まあ今はだいぶ和らいだんですけど、ちっちゃいときのことを考えたら身長があまり大きくないことがやっぱりコンプレックスだったんですよね、小さいこと。で、それってね、いまだにいじられるんですよ、普通に。あ、ちっちゃみたいな、アジカンの後藤ちっちゃみたいなこと言われるし、ネット見たら、後藤 身長 ……みたいに調べるやついっぱいいるわけですよね。」
中里「そうなんだー。」
後藤「まあシンガーとかで、あんまり大きくない人って、正直たくさんいるんですけど……僕はね、いま全く身長が低いことをいじられても、なんにも気にならない。なんでだろうって考えたら、まあ本当に……もちろん相対化して話しているわけじゃないですよ、比べてっていうわけじゃないんですけど、やっぱりこれまで友達とかが……と接してるときにですよ、僕の価値を身長で測っている奴が一人もいない。っていうことが、とても大きくて、自分の中で。それは何だろう、友達だったりかつての恋人だったりとか、いろいろあると思うんですけど……そういう出会ってきた人たちにとって僕の身長って何だろう、僕のことをなんていうの、好きになったり嫌いになったりしていることとは、まったく関係なくて。そうか、コンプレックスは、僕は身長低いまま、ありのままでいられたからコンプレックスじゃなくなったんだって、やっぱり思ったんですよね、最近ずっと考えていて。てことは、いろんな、こう本当になんて言ったら……まあ身長が低いことって生まれながらに避けようがないんですけど、僕いっぱいね、牛乳も飲んだし煮干しも食べたけど伸びなかったから。でも逃れられないようなことでも、まあ容姿とか全部そうかもしれない……例えばそう、ジェンダーの問題とか、自分がどう思っているかとか、そういう問題とかも含め、やっぱ、こう……ありのままでいてもいい、という社会が、まあ社会全体でこれができれば、まああらゆるコンプレックスとか、いろんな人の悩みって皆無にはできないかもしれないけど、かなり解消できるんじゃないかなと、やっぱりちょっと思うんですよね。本当はでも、そんなこと思わなくてもいられるような社会にしたいなってすごいね、思うというか。」
中里「そうですよねぇ。」
後藤「なんか、みんなありのままで認め合うみたいな。同性婚とかも……誰も、誰も損しないのに。愛する二人が同じ名前でいられること……他人が何も奪われないのに。すいませんなんか。」
中里「うんうん、そうですね。自分の中であるこう容姿だったりのコンプレックスって、まあたぶん誰しもが持っていると思うし、僕がこうマイノリティー性を感じるのって、それこそジェンダーだったりセクシャリティ以外にもたくさん、それこそ僕も身長160センチしかないので、小さいというのでコンプレックスを持っていた時ももちろんあったんですけど、容姿だったりとかのコンプレックスとジェンダーの問題の違いって……やっぱりこう、そもそも人権の問題だよね、ジェンダーの話って、ていう。自分の中で自分のセクシャリティーを肯定したりとか、自分のジェンダーアイデンティティーを模索して肯定できるようになるっていうのは、それこそGotchさんの周りの人たちが、Gotchさんを身長で測らずに、ちゃんと人……自身のことを見てくれたりっていう愛を感じながら生きてこれたから、多分こう……コンプレックスではなくなったと思うんですけど、僕自身も、その自分のセクシャリティーだったりジェンダーアイデンティティーに関しては、もう全然今はまったくコンプレックスに思っていないし、すごくこう自分の愛せるパートだと思っているんですけど……そうやってこうコンプレックスが解消した先に、まだ、人権として不平等な扱いを受けている社会が待っているっていうのが、すごくしんどいポイントというか。自分の中でコンプレックスも解消したはずなのに、社会がこれをコンプレックスとしてくる、みたいな。しかもそれが、選択肢を与えられないとか、みんなと平等な扱いを受けていない……っていうのが、もろにこう直面してしまう。生きていく中でいろんなタイミングで直面してしまうというのが、すごく大きな問題だなと思っていて。もちろんその容姿だったりに関するコンプレックスのほうが楽だって言っているわけではなくて、違う問題なのかなとは思いながらも、入口としてね、人のマイノリティー性だったりとか、コンプレックスみたいなものを向き合う……まあそのセクシャリティーだったりジェンダー向き合うきっかけとしてコンプレックスから入っていくっていうのは、一つの入り方としてはあるかなとは思うんですけど、また……またなんかもっと受け止めた先にもまだまだなっている部分があるんだなというのは感じますね。」
後藤「そうそう。だからまあ……人権の問題ってすごいね、僕も思うんですよ。そのね、めちゃくちゃ人権意識低いなって思うんです。生まれながらに、人間には権利があるんだって……自由に生きる。それがものすごく疑われているというか、もちろん与党の人たちも言うぐらいですから。つまりお前の人権を認めてやるから、まずは義務を果たせ、みたいなこと言うわけじゃないですか。ひどい考え方というか、いろんなところに張り付いている……ねぇ、だからやっぱりありのまま、その人の自由を認めてあげるっていう、まずはそこからで。その自由と自由が干渉しあったときに、さあ話し合おう……ってなるのもたぶん民主的なとか、何かそういう正しい人と人のあり方だと思うんだけど。政治家自身がそう考えていない、人の……人間のことを。そういうのがやっぱ、なんかまだ社会的に人の権利が高まっていかないことのひとつの何か根っこにもあるのかなと確かに思います、僕も。」
中里「うん。ね。」
永井「Gotchさんがその声を上げるってことをおっしゃっていただいてて、その……もっともっと私たちがこうデモクラシーってものを生きさせなきゃいけない、今もう死にかけているので、その生きさせなきゃいけないと思っていてー……で、そこで、この間の配信の斎藤幸平さんもおっしゃってましたけど、政治参加っていうのを、数年に一度の投票行動っていうものに矮小化させるんじゃなくて、まさに私たちが声を上げて生き延びさせていく……民主主義デモクラシーってものを生き延びさせていくんだ。って言ったときに、虎鉄さんがおっしゃったみたいに、もうおじさん……おじいちゃんたちで集まって決めているところに、いろんな人が声を上げていかなきゃいけない。ただしその声は上げたときに、虎鉄さんもちょっと怖かったっておっしゃってたと思うんですけど、Gotchさんなんてまさにね、なんかその音楽家なのになんか政治に口を出すなとか、私だったら、お前は研究してろと。お前は研究者なんだから、政治的なものに入るなとかいう声も、私も来るんですよね。研究者は政治的なところに口出ししてはいけないとか、虎鉄さんも浴びせられる声っていうのはあると思うし、若者だから言うなとか、若者のくせになにも分かっていないとかいう声が、なんかすごいあると思うんですよね。でもなんか政治参加ってそういうことじゃない……ですし、そことどう抗いつつも、ね。いや、そんなことはないと思いつつも、やっぱり傷つきますよね。傷つきながら、でも人を巻き込みながらどう進んでいくかというのは悩ましい。」
中里「そうなんですよねー。」
後藤「虎鉄さんがなんか、何か最初の頃に言っていた、あの擬音語がよく聞き取れなくて。」
中里「ハカハカ?ハカハカしてました。」
後藤「なんかその、ハカハカするっていうのはすげえ新鮮で、全然わかんなくて、ハカハカするって新しい!とか思って、ちょっとびっくりしちゃったんだけど。」
中里「(笑) そうですね、ハカハカ……なんか、うーんと。僕が勝手に使ってるんですけど。でも、なんか本当にこう、不安とか落ち着かなかったりとか、まあ多分不安なことが出てくるときに、僕は、ハカハカという言葉を使うんですけど、全然ポジティブな意味じゃないです。」
後藤「いや、でも、俺なんかそういうの好きなんで。なんか新しい、新しいカタカナ聞いたと思って。ハカハカするとかっていうのを、めっちゃ使いたいと思っちゃったんですけど。」
中里「(笑) ぜひ使ってください。」
後藤「でもなんかね、そうそうなんかそういうのってありますよね。意見したら何倍にもなって返ってきたりするから。僕とかは、だんだんメンタルがタフになってきちゃってよくない。でもこんな僕でもね、年明け……やっぱ正直、三晩、寝れない夜がありました、今年に入ってやっぱりちょっといろいろ。自分が悪いんだけど、まあ人を傷つけたりとかね。まあもうちょっと至らないことがあったりとかして、ちょっと凹んだりしたんですよね。まぁでもその寝れなかったのは、まあ自分のミス……発言のミスによるものなんですけど、ちょっと配慮が足りなくて。でもまぁその配慮が足りなかった先……傷ついた人たちっていうのが寝れなかった夜に比べたらね、僕が寝れなかった三日ぐらいは大したことがなくて、僕はそれで学んで済むんだみたいな気持ちになれたんだけど……でも、まあとはいえ、僕のことはさておき、みんながいろんなところでいろんなことを自由に、ハカハカしないで話せたらいいっていうのが、いちばん望むことというかね。」
中里「うーん、そうですね。」
後藤「リアクションももう少し前向きなものだといいなと思ったりもするんだけど。」
中里「うん。なんかすごいこう、まだいろんな社会のことだったりとか、新しいとされる……今まではもちろん同じように感じてきたりとか、同じように生きてきた人たちっていうのもたくさんいるけど、まぁ言葉としてだったりとか、新しい価値観として出てきた、とされることに対して発言する人たち……その母数がまだ少ないから、同じ課題意識を持っている人たちも含めて、みんなその発言する人たちに対してすごく完璧なものを求めるっていうのを、すごく感じていて、もっと本当にいろんな人が話していれば、自分にフィットする話し方だったりとか、言葉を選んでいる人たちを支持することが、それぞれが選択することができるかもしれないけど、でもまだ、その発言する人たちが本当に少ないから、もうその人たちしか言葉を発さないとなると、その人たちの言葉が超重要になっちゃう……その言葉の力がめちゃくちゃに強くなってしまうのが、結構危険だなと思っていて、すごく僕だってこう、常に学びながらだし、ジェンダーに関しても僕は当事者として感じているけど、でも学ばなきゃいけないことだったり、歴史的背景だったりをま勉強してる最中だから、なんかこう配慮できてないときっていうのは必ずあると思うんですよ。だから、そういった言葉で誰かを傷つけてしまわないかっていうハカハカもあるし、でも本当だったらそこを話せる人がたくさん増えていけばいいし、歴史的背景についてたくさん話せる人が隣にいてくれたらいいし、本当にその母数をどうやって増やしていけるんだろうっていうのは考えていきたいなって思いますね。」
後藤「そうですね。斎藤幸平さんが言ってましたもんね、3パーセントでしたっけ。」
中里「うんうんうん、3.5。」
後藤「3.5か、世の中を変えるのにはね。そう考えると、そんなに……難しい数字じゃないかもってちょっとね、Dの放送を見て思ったというか。」
永井「Gotchさんが前、Dの定例で……Dはよく毎週のように定例で夜にミーティングするんですけど、そのときにGotchさんが、なんか俺たちはもっとリトル坂本、リトル坂本龍一をもっと作っていかなきゃいけないんだっていう風におっしゃっていて(笑)、それがすごいいい話だなと思って聞いてて、それこそGotchさんこそ本当にこう声を何かいいこと言わなきゃいけない人としてあまりにもこう、担いすぎているし、みんなが期待しすぎているし、Gotchさんもあの本当にすごく大変な中で……坂本さんもそうですし。そんな中でやっぱりリトル坂本リトルGotch……っていうのが、もっともっと本当に虎鉄さんのおっしゃるように増えていって、リトル虎鉄でもいいし、リトルいろんなものが増えてね。そしたら……でもそれも別にものすごい数が必要なわけじゃなくて、3.5パーセントでいいわけだし、そういう人たちとね、連帯したいですね。」
中里「うん、本当にそうですね。」
後藤「ジョン・レノンとか清志郎さんとかね、偉大でしたけど、誰しもがああなれるわけでもないし、当時と今ではメディアの状況が違うから、やっぱり大スターってメディアが一緒になって作っていた……ところもあると思うんですよね。こう情報がこんなふうに水平というか、フラットにみんながやり取りできて、誰がつぶやいたかわからない言葉がものすごい力を持つことだってあるし、俺たちをめちゃくちゃ勇気づけることだってあるような時代になったから。だからなおさらですよね、みんなが、もうそれぞれジョン・レノンなり清志郎なり、まあそうなる必要はなくて、虎鉄さんなら虎鉄さん、僕なら僕なりに、永井さんなら永井さんなりに、それぞれがそれぞれの姿勢のまま立つしかないというかね、こうね。そしてなんか、また横のつながりで俺は励まし合いながら進みたいと思いますけどね。」
永井「あの時すごい、Gotchさんがリトル坂本を作っていくんだっておっしゃっていたとき坂本さんもその時はいらっしゃって定例に。坂本さんがすごい、きょとーんとしてて、なんか全然(笑)、きょとーんとしてましたよね。あのときすごい面白かったですね。みんなで、なんかあれー?とか言って。すごいよかった、それが。」
後藤「でも、坂本さんにやっぱり……坂本龍一に乗っかっちゃいけないでしょうみたいな気持ちあるじゃないですか。僕らもう全員で、背中におんぶ、ねえ、この番組ももちろんありがたいですけど、それを全部、教授の重荷にしちゃいけないというかね。力が小さくてもやっぱり教授の隣に立たなきゃいけないんだ、みたいな気持ちはすごくあって。そうしないと、本当に最前線でたった1人頑張ってるみたいな形にしちゃいけないでしょみたいな。」
中里「うん。そうですね。」
後藤「だから、でもこうやってね、Dの番組作ってすごい嬉しかったのは、いろんな人がこう、eriさんもそうだし、虎鉄さんもそうだし、とにかくたくさんの同志……いろんな立場で戦ってる、Moment Joonもそうだし、会えたというか……実際に会っていない人たちもたくさんいるけど、ああ、いろんな場所でそれぞれのそれぞれの立ち方で、社会とかお互いを見てる……って思えたら、心強いって僕は思う、何かちょっと何か震災から10年、ちょっとへこたれてきてたんですけど……オリンピックもそのままやりそうだし、みたいなね。どうしていいんだろう。この40歳のおじさんこれから何すんだろうと思ったけど。あっ、仲間って増えてる……ってちょっと思えた、そういうのはありますね、はい。」
中里「本当ですね。なんか僕も、自分が悩んでいたりとか発信し始めの頃とかする前もそうですけど、自分と同じ意志を持って共感してくれたりとか、それに対して同情してくれたりとか、何かこう力になりたいって言ってくれる友達だったり家族っていうのはいたけど、でも一緒に戦っていくっていう姿勢の仲間っていうのが、ずっとなかなか見つけられなかったんですけど、でも本当にこの1、2年くらいで……それは僕がいろんな活動を増やしたからってのもあるんですけど、でもそこで出会った人たちだったり、こうやって出会う人たちが、本当に心からいっしょに戦っていける、なんか戦士だと感じるし、なんかこうでも本当に僕たちだけが戦い続けていくのもやっぱしんどくなるし、なんか戦えない時ってあるし、常に戦っていけるような強い人間じゃないから……まあ戦士を増やしつつも、でもお互いケアしながら戦い方もいろんな形にアップデートしながら。なるべく負担のないっていったらあれだけど、負担は必ず付いてくるから、その中で自分に合ったやりやすい形で戦っていきたいなっていうのは、すごい思いますね。で、いろんな形があって、役割分担で戦っていきたいなって思いますね。」
後藤「ほんとに虎鉄さんがいま言った "ケア" っていう言葉、すごい大事だなって思いますね。仲間同士とかでもいいんだけど。その感じ結構、これから何か社会を進めていく上で大事かなみたいな。ともすると本当に分断も、一瞬でできてみたいな。一瞬で対立できて、でそういうところでみんなが疲弊していくのは良くなくて、やっぱ対話できて、ちゃんと話し合えて。明るい未来のため前提で話し合えて、みたいな。でもやっぱりみんなこう……ハカハカはするじゃないですか。そういう時にどうやってこう、ケアできるか、みたいな。緩めていけるか、みたいのもすごい大事な気がするというか、僕もう最近もTwitterとかやられちゃって、読んでいるだけで。ケアの精神、全くないだろみたいな。マウントしかないみたいな。」
中里「うん。いや本当に。」
後藤「だから俺、戦ってる人たち……うん、虎鉄さんも含め、やっぱそういう人たちを鼓舞する側というよりは、ケアする側にいたいって思いますけどね。柔らかく……その正しいところに向かっていけるような、誰か割を食う人がいないようにしたいなあなんて思うんですけどね。あとね、すごいやっぱりこういう話をするときさあ、緊張しますよね、すごい緊張するの最近。」
二人「(笑) するする。」
後藤「間違ったこと言っちゃわないかなみたいな。また俺来週、Twitterでいっぱい謝らきゃいけないのかなとかさ。まあでも本当にまずいこと言ったら謝りますよ、もちろんそれで僕は進むんだから、それでいいとは思うんだけど。でも、人々が何か意見を話し合うのに、過剰に緊張しちゃうのも良くないよな、みたいな。てことはまずは僕が身をもって緊張しないようにするしかないなと思ったりもするんだけど。」
中里「うん。なんか緊張しないで、間違ったことを言ってしまうことは大前提で、みんな正しいはずがないのが大前提なセーフプレイスを作ることが、すごく大事だなってめっちゃ思っていて。昨日、友達とライブ行った後にお店どこもやってなかったから公園で喋ってて、そこで、自然な流れで社会課題の話とか、いま起こっているアクションの話とかになったんですけど、批判的な意見がその場に出てきたときに、その批判的な意見も受け止めながら自分の意見をちゃんと言い合えるっていう。で、それをちゃんとみんながみんなちゃんと受け止め合える "セーフプレイス" だったんですよね、あの公園は。もちろん自分のスタンスとしても大事だけど、でもなんかそういう場所づくりみたいなものもすごく重要かなっていうのは思いますね。」
後藤「確かにね。確かにJ-WAVEに出て話してるんだから、ここをセーフプレイスだと思うなよ、というのは僕には自分には思うんですけど。お前責任もって喋れよみたいな、そういう緊張感は課していますけど、常々ね。」
中里「(笑) まあ、確かにそうですね。」
後藤「でもそっか。でも、永井さんがやっている哲学対話とかもそういう場所づくりですもんね、まさに。」
永井「そうですね。私はまさにそういう関心で哲学対話、まあ対話活動をしているので、この世には危険な場が多すぎるので、人工的にでも、うん、安全な場……でも安全というのは別にちゃんと言っておきたいのは、何かネガティブなことが起こらないとか、傷つきがないとか、そういう場ではないんですよね。間違いがない場ということでは全然なくってー、間違ったとしてもお互いにそれこそケアし合いながら学んでいったりとか、間違いうるということがきちんと認められた場……そして共にずっと考え続けていられる場、っていうことが、安全な場だと思うんですよね。そういう意味では適度な緊張感というのも……まあ良い意味の緊張感ですね、萎縮とかではなくて、良い意味の緊張感があるような場っていうのを、このね、日常のすべすべさくさくの急がないといけない、成果出さなきゃいけないという世界に、何とかね……スペースを打ち込んで、その対話の場っていうのを差し込んでいきたいなとは思っていますね。Dもそういう場になればなと思ってます。」
後藤「一方ででも、なんか僕たちがこうやって少し緊張しながら対話するじゃないですか。なんであの……50過ぎたおじさんとかおじいさんたちは、それを簡単にぶっちゃけた奴が偉いみたいな感じで乗り越えてくるんですかね、あれね。不謹慎なやつのほうがウケるみたいな話法あるじゃないですか、内輪論法みたいな。いかにタブーに破って身内にだけウケることを言うか、みたいな……ああいう話法もやめたいなみたいな。そう考えるとまだ僕40代ですけど、こういうおじさんがJ-WAVEで話すときに、いちいち緊張しているのは悪くないかもみたいな、おじさん側からするとね。おじさんたちが緊張していくっていうのはアリなんじゃないかって思うから、話しながら僕はこの役割をちゃんと引き受けて緊張していくべきなんじゃないかって、ちょっと思い始めましたね、少しだけですけどね。」
永井「いやその、本当におっしゃる通りだなと思います。やっぱり "強さ" みたいなことが価値だと、よくないというか、そうじゃないと思っていて。こんだけぶっちゃけられるぞとか、俺はこれだけ強いんだぞっていうところを見せる……何かを発言するとか考えるってことが強くなることじゃきっとなくて、やっぱり私、対話とかしていると感じるのは、考えるってむしろ弱くなることなんですよね。」
後藤「あー、なるほど。」
永井「こう恐れながら話したりとか、違和感を感じて、これっておかしいんじゃないってすごくざわざわするとか不安に思うとかって、本当に弱くなることで、だからこそ人々と共にそれはやらなきゃいけないし、ケアしながら進まなきゃいけない、と思っていて、うん。そういう違いかなって思いましたねー、聞いてて。」
後藤「なるほどなー。分かった、じゃあ、政治家の人たちにとってはあれなんだ、あの人たちはぶっちゃけてるつもりだけど、あそこまで言ってもセーフな場所だと思っているってことだね、きっと。」
永井「そうかもしれないですね。」
後藤「そうそう、あまりに権力が強いから。俺はこれだけぶっちゃけてもここはセーフな場所なんだっていう……ものすごい、なんだそれはっていうぐらいあれなんですね。まったく別のパラレルワールドを生きているかのような違いがあるんだなって、今お二人の意見を聞きながら……あぁ。そうかあの人たちはあれがセーフの場所なんだって思っちゃって。政府とセーフはダブルミーニングみたいになっちゃいましたけどね、あの。」
永井「なんという(笑)。」
後藤「なんという。韻を踏んでた(笑)。」
永井「なんという流れ。ということで、そろそろお別れの時間になってきましたけれども、虎鉄さん、坂本龍一さんへのメッセージはありますでしょうか。」
中里「そうですね。まだお会いしたことないですし、直接なんだろ一緒に何か戦ったりとかしている感覚というのは、まだこう感じることはまだ経験としてはまだないんですけど、まぁ本当に間接的にいろんなところから回り回って多分一緒に戦っているんだろうなというのはすごく今回すごく感じましたし、すごい貴重なお時間をいただいてね、僕をこう呼んでいただいたこともすごく間接的に繋がって、あの一緒に戦っている証拠なんだなってすごい勇気づけられました、今回。で、なんかいつか初めましてできるときがくるのを、僕は楽しみにしています。その時に、お互いできる形でいっしょに戦っていけたらなって思います。」
永井「ありがとうございます。」
後藤「ありがとうございます。」
永井「学生に紹介したりしています、『IWAKAN』は。」
中里「あっ、ほんとですか?」
永井「はい。大学で。学生とかに。」
中里「ありがとうございます。」
後藤「俺、買おうと思ったらソールドアウトって出てたなー。」
中里「そう、1号目が、いま書店さんに置いてある分だけ、あと残っているという感じなので、そう。2号目がその『IWAKAN』っていう僕が作っている雑誌が、2号目「特集 愛情」っていうのが3月26日に発売されて、それを記念した展示会が、先日まで、高円寺のtata bookshop/galleryというところで東京ではやってたんですけど、その巡回展として、名古屋のC7C galleryさんという場所で、5月14日から5月30日まで開催する予定で、5月15日(土)にはオンラインですけどトークイベントの予定もあります。なので名古屋なんですけど、お近くにいる方はぜひ遊びに来ていただけたらなと思います。6月4日から19日にも、同じく名古屋のTOUTEN BOOKSTOREさんというところでまた別の企画展を『IWAKAN』で主催しておりますので、そちらもぜひお時間ある方は遊びに来てください。」
永井「はい。哲学研究者でD2021の運営、永井玲衣と、」
後藤「後藤正文でお届けしてきました。」
永井「ということで、虎鉄さん、ありがとうございました。」
中里「ありがとうございました。」
後藤「ありがとうございます。」
<RADIO "D" (まとめ)>
永井「Gotchさん、いかがでしたか。」
後藤「いやー、そうですね。すごくいい機会を頂いたなというのは思うことですね。坂本さんにも感謝していますしね。みんなと出会えて、何よりラジオを聴いている人も同じことを思ってくれたら嬉しいっていうのは、割とこう……なんていうんだろ、社会を変えていこうっていう仲間は、意外といるんだよ……っていうこと。何かそれを感じてもらえたら、あっという間に3.5パーセントまでいけるのかもしれないし、まぁ時間がかかるとしても、お互いケアし合うっていうかね、そういう話出ましたけど、そういう気持ちでいけるのかなみたいなね。いや本当に永井さんの登場とかも心強いですよ、本当に。僕にとっては。」
永井「本当ですか(笑)、嬉しいです。」
後藤「いや、もちろん。Dの中のミル君もそうだし。だってミル君だって、今まで……若いミュージシャンがこういうことに参加してくれないことが非常に大きな悩みだったわけですよね。僕としてもそうだし、もちろんもっと長くやっている坂本さんからしてもそうだったわけで。それを今をときめくyahyelという若手のかっこいいバンドのDJがばちっと参加して、最前線でデモンストレーションを行うみたいな。すごいやっぱり時代が変わってきている……うん、これを聴いてる、ミュージシャンとか表現をしている人たち……そういうことをしてなくても、何か私は何かできるかなって思っている人たちに、せめてね、同じ志の人がたくさんいるんだよ、そういうことだけでも届いたら……いいかなって、そういう力になりたいって思います、僕はD2021にではね。永井さんどうでしたか今日は。やってみて。番組。」
永井「本当にこういう場を頂けてとても嬉しかったですし、あの、Gotchさんのおっしゃるように、やっぱりこう既に先輩たちって言っていいか分からないですけど、先輩たちの表現する姿っていうところを見てきて、やっぱりすごく感化されて私たちの世代が出てきていますし、でもそれも何か強いパワーで引っ張るぞとか、なんかこういう風に考えなさいっていう仕方じゃなくて、やっぱいっしょに考えてケアし合いながら連帯していくっていう姿を見せていただいてますし、私自身も悩みながら考えながら……ね、D2021ほんと常にバタバタでね、あのギリギリで、ぐちゃぐちゃですけれども(笑)、そういう姿も含めて、皆さんと共に進んでいけたらと思っていますので、どうぞ、これからもよろしくお願いします。」
後藤「そうですね。ラジオを聴いている皆さんも、ぜひD2021でね、検索とかしていただいて、僕らのホームページとかね、見ていただいて。文章とかもたくさん載ってますしね、読んでいただけたら嬉しいです、はい。」
<坂本龍一:プレイリスト「RadiSaka2021-05」>
今回も、番組のために教授が選曲したプレイリストを30分間ノンストップでオンエア。Spotifyにプレイリスト「RadiSaka2021-05」としてもアップしています。
<デモテープオーディション – U-zhaan & 蓮沼執太さん>
U-zhaan「今日は長嶋さんがいらっしゃらないということで、長嶋りかこさんは、あまりに多忙でちょっと今回は参加できないという感じで。僕と執太だけっていう感じで。」
蓮沼執太「はい。なので、りかこさんの代わりぐらいの、あの、感覚で参加させていただきます。」
U-zhaan「アートの観点からとかいうのは、ちょっと僕には荷が重い感じがするので。」
蓮沼「(笑) まあ、少しでもお力になれればと、はい。」
U-zhaan「デモテープオーディション、蓮沼さん、どうでしたか。」
蓮沼「あの、なんか音系というか、サウンドアート系から、ポップスから、テクノっぽいのもあったし、ほんと守備範囲がというか、レンジが広い、ジャンルのレンジが広くて、全部聴いていて飽きないというか、楽しく最後まで聴いちゃうなっていうのがあって、今回も楽しかったです。」
U-zhaan「長嶋さんが本当、参加されないのは、もう多分、相当久しぶりだと思うんですよね。2014年ぐらいから結構ずうっとだったと思うんで。だから蓮沼さんの権限で、どれか1作品に長嶋りかこ賞をあげてください。」
蓮沼「長嶋りかこ賞はですねー……あの人、映像にうるさいですよね。」
U-zhaan「うるさいって言い方はどうかと思いますけど(笑)」
蓮沼「(笑) 長嶋さんはあの映像までよく見てらっしゃるじゃないですか、音だけじゃなくて。」
U-zhaan「あ、そうですそうです。はい。」
蓮沼「え、選ばなかったやつでもいいですか。」
U-zhaan「選ばなかったやつでもいいですよ。」
蓮沼「僕ね、あの映像面白いなと思ったのは、あの「深海合唱団」の「aoi」という曲。」
U-zhaan「はい。」
蓮沼「声だけで合唱曲なんですけど。」
U-zhaan「はい。」
蓮沼「映像が、すごいこだわって作っていて……っていうものもあったし、あとこれも選んでなかったですけど、あの僕が好きな「左右」ってバンドの映像が凝ってまして(笑)。」
U-zhaan「そうですね。あの動かないやつですよね。」
蓮沼「そう動かないやつ。あれも好きだったので、そのあたりなんじゃないでしょうかね、長嶋りかこ賞は。」
U-zhaan「じゃあ長嶋りかこ賞は、この2作品に。後で長嶋りかこ賞はこの2作品に決まったって(長嶋さんに)連絡しておきます。」
蓮沼「はい。よろしくお願いします。」
U-zhaan「多分、びっくりすると思うんですけど。そうなの、ってなるでしょうけど。」
蓮沼「ははは、そうでしょうね。」
U-zhaan「近況は、僕はあのー……あれですよ、最近リリースがあったですよ。」
蓮沼「そうだよ。おめでとうございます。」
U-zhaan「あの、カレー皿のリリースっていうのがね、あったんですよ。監修で。」
蓮沼「あ、そっち?あれはなんだったの?全く知らなかったよ(笑)。」
U-zhaan「カレー皿ね、もう……2019年くらいから作ってたんだよね。」
蓮沼「そうなんだ。」
U-zhaan「すごい頑張って。うまくいかなくて、頑張って……って、俺が頑張ってるんじゃなくて、その作ってくれてる蔵元さん、波佐見焼の長崎の蔵元さんが、試行錯誤を重ねて、サンプルとかしょっちゅう送ってもらって。」
蓮沼「そうなんだねー、外せるんだよね。」
U-zhaan「そう、仕切りが。」
蓮沼「仕切りが外せるんですよ。」
U-zhaan「カレーとカレーの間を仕切っている、仕切りが外せる陶器っていうのを。」
蓮沼「(笑) すごいよなぁ。」
U-zhaan「焼き物の意匠登録みたいなのを出してるらしくて、焼き物の特許みたいなのが取れるかもしれないっていう状況になって(笑)。」
蓮沼「もう、なに屋さんだかわかんないですね(笑)。」
U-zhaan「全然、分かんないよね。アルバムのリリースもあったんですけど。」
蓮沼「ああ、そうね、おめでとうございます。」
U-zhaan「アルバムのリリースのトライヤー……トライアルというか、ティザー映像みたいなやつ……の音楽を、蓮沼さんに、なぜか全く関わってないはずの蓮沼さんに編集してもらったりしてたんですけど。」
蓮沼「全曲聴けるように、ちょきちょき編集して、U-zhaanの指示のもとね、ひとつにまとめて。」
U-zhaan「どうもありがとうございました。」
蓮沼「あれを聴くだけでもう、アルバムを聴いた気持ちになりますからね。」
U-zhaan「そういう問題ありますよね、あれね(笑)。」
蓮沼「(笑) 1枚で楽しめる。」
U-zhaan「そうそう、10分で読める名作みたいな感覚になっちゃう。」
蓮沼「そうそうそうそう(笑)。まぁ、でも一生懸命、編集させてもらったんで。」
U-zhaan「ありがとうございます。」
蓮沼「あの、僕の気持ちも入ってますんで。」
U-zhaan「蓮沼さん、どうすか、近況なんか。」
蓮沼「まぁ、4月23日に渋谷のオーチャードホールでフィルのコンサートをやったんですけど、そのゲストもたくさん来ていただいて……ね、やっぱコロナ禍であの、音楽家だけじゃなくて、その照明とかね美術さんとか、いろんな人関わってたので、こういう状況で、結構なんか普段じゃできない感じ……ちょっといろいろ制限もあったんですけど。でもなんか、みんな全力で出し切って何とか終わったという。無事に終わって良かったです。」
U-zhaan「ヤン富田さんが出てたんですよね。」
蓮沼「はい。ヤンさんにも出演して頂いて。とんでもない空間になってましたね。」
U-zhaan「ちょっと観に行きたかったなぁ。」
蓮沼「いや、面白かったです。配信がもう始まってますね。配信でも見れるようになっているので、ぜひ気になった方は、ぜひ配信を見てください。」
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