「坂本龍一です。ここからは、2ヶ月に一度お届けしているレディオサカモト。皆さんお元気でしたか。僕はこの2ヶ月はね、京都、シンガポール、台北などと行きながらですね、ニューヨークに戻ってきたんですが、6月下旬にまたLAに少し行って、またニューヨークに帰ってきたという感じで、まぁ、だいたい、映画音楽を作っていたんですかね、僕はね。あっという間に、もう今年も半分終わってしまいましたけど。後半戦に突入してしまいましたねえ。えー、いかがお過ごしでしょうか。」
<京都、シンガポール、台北、ニューヨーク、LA – 近況報告>
「さて、僕の近況報告です。前回の放送を終えた翌日ですね、5月6日から京都に行きまして、高谷史郎さんと合宿をしていました。何の合宿か、全然体を動かしていた訳ではなくですね(笑)、高谷さんの事務所に、毎日詰めて、通って、来年の末に発表を予定している、まあ何というか、オペラと言っても別にオペラじゃないんですけど、何て言いますかね……そういうシアターピースというんですかね。そういうものの準備ですね、その内容を詰めるという、そういう合宿だったんですけど。というのは、1999年、ちょうど20年前に、これもオペラと称して全然オペラのようなものではなかった『LIFE』というものを、やはりシアターピースのようなものを発表しまして、ほぼその時初めて、高谷さんと仕事をがっつりしたんですね。その高谷さんに映像のディレクターになってもらって、映像関係の全てのまとめ役をしてもらったんですね。で、それ以来の縁でというか、たくさん高谷さんとはサウンド・インスタレーションとかですね、また僕のコンサートのいろいろな設計とか、映像とか、そういうものも担当してもらったり。少し何年も経ってしまいましたけど(笑)、僕の一応、今んとこの最新アルバム『async』というものの、美術館での設置音楽展というのが2つあったんですけど、そういうものの全てのディレクションとかね。本当に相談役といいますか、そういう風に付き合ってきてくれたんですけど、僕と一緒に。彼と一緒にその来年末、発表予定のものを一生懸命、考えてると、具体的に、というところですね。だいぶ、いろいろ決まってきたとはいえ、まだ時間もありますし、僕もね、ご存知の方も多いかもしれませんけど関心がどんどん変わっていってしまうのでね(笑)、自分でも呆れるくらい、どんどん興味が移ってしまうので、興味が移っていってしまうと、まとまるものもまとまらないので、ここはひとつ、きちんと集中して内容を決めてですね、それに向かってこの時間をかけて進んでいくという、そういう感じですかね。多分、学生以来、2週間近く京都にいたという事は、本当になくて、珍しくて。いつも行っても、本当にせいぜい3日くらいですかね。京都にいられるっていうのは、本当に嬉しいですね。僕は東京生まれ東京育ちですけども、今、もう随分長くニューヨークに住んでいますけども、日本に帰るんだったら京都がいいなぁとかね。東京はまぁ仕事をするとこなんですけどね。やっぱり住むんだったら、その日本的な風情が残っているところがいいですね。まぁ田舎もいいんですけどね。だからとても至福のね、2週間でした。毎日美味しいもの食べ過ぎて、ちょっと美食疲れをしてしまいまして、本当に。疲れちゃったりして(笑)。いや、そんなに特別お高いところを食べ歩いたわけではなくて、皆でわいわいと楽しく食べたんですけど、本当にどこ行っても美味しいですね。」
「で、京都に約2週間いて、そこからポンとシンガポールですね……シンガポールと台北に行ったんですけど、それぞれ1週間ずつくらいね。シンガポールも台湾も、行くのが23年ぶりでね。1996年のピアノトリオのアジアツアーをやっていた時に、シンガポールも台湾も行きまして、その後、北京も行きましたね……それ以来で。まぁ、シンガポール、写真とか映像とかニュースなどで見ていたので、そんな驚かなかったですけど、やっぱり23年前っていうと自分の記憶も朧げで、よく分かんなかったですね(笑)。ただ、本当にシンガポール、少し驚きましたね、超人工的な国というか街というか。六本木が国になったみたいな、ところだなぁというのが正直な感想なんですけど。とにかくその、産業といえば、いわゆる経済というか金融ですよね。と観光かな。日本のお金持ち、富裕層なんかもシンガポールに住むのが流行りだそうですし、シンガポール自体も積極的にそういうことを受け入れて、住みやすいようにしているんでしょうけども。そういう、なんかもう超資本主義的な、お金お金お金というような……街の側面ももちろん見えますし、でもね、驚いたのは、それなのにシンガポールの人達がとってもね、なんか穏やかで親切なのね。それは別に観光客だけに対してそうのような感じはしないんですよね。こう街を見ていても、とても皆穏やかな感じがして……その取り合わせがとても興味深かったですけどね。で、もちろんお金があるので、アートや音楽にも力を入れているわけですね。やっぱり、そのお金があるところに、昔で言えば20世紀の初頭で言えばパリとかですね。戦後はニューヨークとか。お金が集まるところに、文化も栄えるという宿命もあるので、そういうわけで、シンガポールもとてもアートにも力を入れているということですね。普通のストリートフード食べに行ったりとかですね、また気に入った本屋さんを紹介してもらって、そこに3回ぐらい行っちゃったかな。1週間のうちに3回ですから、ほとんど2日に1度行ってるんですけども、その人たちも場所もとても好きになってね、シンガポールのホームという感じで、ずっとたむろしていましたけども(笑)。で、1回ねシンガポールでコンサートを演ったんですよ。で、もともとがその……あ、なぜシンガポールに行ったかを全然言ってないね(笑)。そのさっきも話した高谷史郎さんの、自分の作品で『ST/LL』というシアターピースがあるんですね。それで、その為に僕は曲を依頼されて、音楽を依頼されて……僕と原摩利彦、それから南(琢也)くんという友達ですね。三人が音楽を提供して、もじゃ混ぜににして使ってるんですけども。僕は本当に一部ですけど提供して、割と世界で何回か『ST/LL』は公演しているんですね。ところが、せっかく音楽を提供したのに、僕は一度も生で観たことがなかったんですね。で、シンガポールで演るというので、ぜひ生でシンガポールまで観に行こうというのが、そもそもの目的だったんですよ。で、『ST/LL』はめでたく、2度も公演を観ることが出来ました。で、その『ST/LL』を観に坂本が行くよ、いうことをシンガポール側のフェスティバルの人が聞き付けて、だったらコンサートを演ってくれってことになりまして。じゃあ演りましょう……だけど、その為に全部用意するの大変なので、だったら『ST/LL』の公演が終わった後に、その『ST/LL』を舞台をそのまま使って、そこにぽんとピアノを置いて、あるいは機材も置いて、コンサートを演る。そういう案でいいんだったら出来るよという風に、もちろん高谷さんとも相談して言ったら、もうぜひ、ということで、その翌々日に演ったんですよ。で、演ったんですけど、その高谷さんの『ST/LL』という出し物、舞台は、舞台の上が水なんですね。要するに仮設のプールを作って、プールと言っても水深は3cmぐらいですから、ちゃぱちゃぱというような感じですけども。別に首まで浸かってしまうわけでは全くないのですが(笑)。その水の舞台にピアノを置いて、僕も水の中を歩いていって、バチャバチャと。水の上でピアノを弾くと(笑)。あるいはギターのところまで歩いて行って、ギターを弾いたりとか。あの、ポーンと音を鳴らしたりとか。という、とても新鮮な舞台で、初めての試み、僕も水の中でやったのは初めてなんで、とっても面白かったし、水の音ももちろんマイクで録ったり、それをエフェクトをかけて、で、波の……さざ波ですね。その状態を上からカメラで撮って、リアルタイムでその水の音を変化させるというような、せっかく水の上を歩いたり音楽を演ってるんだから、その水も音楽の一部にしてしまおうということで、そういうことをやったりですね。わりと初めての試み、簡単にやろうという趣旨だったんですけど、なかなか面白い試みになって、とても僕も面白かったし、観ていた人たちも、とても美しくて面白かったということで、結構みんな興奮してくれて、香港からもいろいろなアートの関係者が観に来てくれて、というのが……気が早いですけどね、来年の4月にもう一度同じような僕のコンサートを香港で演ることになってるんですけども、その関係者プロデューサーとかがですね、観に来てくれて。彼らもとても気に入って、だけどその水を張るってのがなかなかハードルが高いですから、舞台上でね。それが出来るかどうかみたいなことを検討しくれている、みたいです。今後、日本でも水を張った舞台がやることが出来るかもしれませんけども(笑)。」
「はい、シンガポールの話が長くなりましたけども、そこから今度はね、台湾に行きまして。やっぱりここも23年ぶりだったんですけど、台湾の方はですね、もちろん一部、六本木のような、あるいは丸の内のような、大きなビルも出来ていますけども、まだまだ昔ながらの街並みが多く残っているので、とても僕は大好きだし、ほっとしましたね。例えば、東京だと本当に様相が変わってきて、特に渋谷なんかはそうですし、六本木もそうですし、もう2〜30年前の町並みがどんどん消えていっていますよね、昭和の町並みというのがね。逆に昭和が懐かしくて、そういう何ていうのかな、テーマパーク的な場所が出来たりとかしているようですけども、えーと、台北に限らず台湾は、もちろん一部でそういう非常に現代的なビルも建っていますけども、本当に昔ながらの町並みが残っていて、とても嬉しかったです。で特に今回は、面白いことに、台東と言って東側ですね……台湾ていうのは、真ん中に大きな山脈がありまして、背骨のようにね。それで、富士山よりも高い4000mに近い山がボンとそびえてたりするんですね。だからその台湾の山を挟んだ西側と東側ってのは随分こう、いろいろ発達の度合いが違うわけですね。東側……太平洋側の方が発展が少し遅れているというか、その分昔のものが残っている。それでその台湾の先住民の方々ですね……実は台湾では先住民と言うと怒られて、原住民と言わなきゃいけないんですけども、その人たち……今政府が公式に認めているのは、16の部族あるんですけど、昔、日本が台湾を統治していた時代は、高砂族なんていう名前で呼んでましたけども(笑)、山に多くは住んでいたので、そんな名前が付いているんですけども。16のいろいろな部族があって、一日かけてね日帰りで、僕はその台東に東側に行って、新幹線で2時間半くらいかかって行って、そこから車で山の方に少し入って、16部族の中のひとつ……ブヌン族の人たちに会いに行ったんですよ。それで音楽を聴かせてもらったんですけど、もう素晴らしくてね。またその東側の、台北からかなり離れた街の姿を見たりとか、ブヌン族の人たちと交流していろいろ話したりとかですね、とても本当に有意義な時間を過ごすことができたので、台北だけではない台湾の姿……台北もたくさん街があり、南側には高雄があるし、たくさん面白いところがあると思うんですけど、とてもやっぱりに好きになっちゃって、今までよりも。というのは、僕は台湾映画が好きで、今回も実は台湾に行ったのは、音楽ではなくて、映画の仕事で行ったんですね。もう行った初日の晩に、その台湾映画と言えばこの人という、侯 孝賢(ホウ・シャオシェン)監督と、それから侯さんの映画にたくさん音楽を提供している音楽家の林強(リム・ジョン)さんといっしょに、ご飯を食べて、いろいろ話し合ったりとかですね。僕、侯さんの映画はもちろんほとんど観ていますし、侯さんと同世代の台湾ニューシネマと言われた監督のもうひとり……まあ、残念ながら57歳で亡くなってしまいましたけども、エドワード・ヤン監督も、もう大好きなので……エドワード・ヤン監督のは全部観ていますけども、そういうこともあって、映画を通して台湾のことは、とてもお強い興味を持っていたつもりですけども、実際お会いしていろいろお話して、もう本当に嬉しい時間を過ごす事が出来ましたね。その侯さんや林さんと会ったのは、直接仕事ではないんですけど、そういう交流したということで……えー、映画の仕事で行ったというのは、実は僕がテーマ音楽を書いて提供した、日本人の半野喜弘くんの映画『パラダイス・ネクスト』っていうんですけども、これあの、台湾と日本の合作で、台湾で撮影して、日本人と台湾の役者さんが出演しているという、台湾が舞台の映画なんですね。ていうのは、半野喜弘も多く映画音楽を手がけていて、さっき話に出た侯 孝賢監督とか、中国本土の賈樟柯 (ジャ・ジャンクー) 監督とかですね、アジア圏の映画の音楽をたくさんやっているんですね。で、多分それに影響されて、半野くん自身も映画を撮り出して、今回のこの『パラダイス・ネクスト』が2作目なんですけども。ということで、頼まれましてテーマ音楽を提供したんですね。で、それをまず聴いてみましょうか。」
今回の番組では、その『パラダイス・ネクスト』のテーマ音楽、「Paradise Next Requiem Strings」をオンエアしました。
「もうひとつ台湾映画との縁でいいますと、今回も再会したんですけど。台湾映画の中でとても実験的なアーティスティックな映画を撮っている、蔡 明亮 (ツァイ・ミンリャン) 監督というのがいるんですけど、蔡さんとは、僕は5年前にベニスの映画祭で初めて会ったんですけど、それ以来の縁で。その蔡さんの最新作の映画『Your Face (あなたの顔)』という、映画の音楽を頼まれて、作ったんですよ……10曲くらい提供して。それが使われているんですけども。これは本当に映画というか、とても実験的なものですけども。で、これのプロモーションもあって、なんて言いますかね、Q&Aというかトークというか、そういうものを蔡監督といっしょに2度ほどやったりとかですね、プロモーションを手伝ったと。それと僕が行くということで、その僕を扱ったドキュメンタリーの『Ryuichi Sakamoto: CODA』というものがあります、ありましたよね。これも再上映してくれるということで、そこにもまた行って、Q&Aをやったりして、台湾のファンの方々ともQ&Aを通して、随分たくさん話をすることが出来ました。それもあって、なんかほんと台湾が身近になって、とても好きになってるんですけども(笑)。あのね、なんていうのかな、昔の大きなタバコ工場を、昔のままの姿を残しながらそこを芸術地区に変えた場所があるんですよ、松山地区っていう。多分有名なんだと思うんですけど、台北に観光に行く方は必ず行くんだと思うんですけど。僕もご多分に漏れず……以前はなかったので、珍しくて、少し時間があったので、ブラブラ歩いてたんですよね。で、工場の中がたくさん可愛いお店なんかになってるんですけど、歩いてたら、急にね10歳ぐらいの小学生が「あ!」って言って、飛びついてきて僕に(笑)、抱きつくんですよ。それでどうしたのかなって思ったら、「♪タタタタターン (Merry Christmas Mr.Lawrence のメロディ) 」とかって言って歌ってんのね、びっくりしたんですけど。多分、親御さんが僕の音楽を聴いてくれてるんだと思うんだけど。10歳くらいでそんな飛びついてくる、抱きついてくるてのは、ちょっと面白くて(笑)。あんまりそういう経験がなくて。えーと、ドキドキしました(笑)。まぁ、ほんと不思議なんですけど、とても広い世代の人たちに聴いてもらってるみたいで……まぁあの、日本だと多分若い人は坂本なんて知らないと思うんですけど、台湾や中国や、シンガポールやね韓国とか、他のアジアの国では、なんかそのかなり若い世代の人も興味を持ってくれてるってことで……そういうなんか日本との違いを、まぁ、日本は随分長く僕もいますからね(笑)、顔出してますからね、もう飽きちゃってるんだと思うんですけど。面白かったですね、そこらへんはね。」
「話が長いですけど、さて映画音楽といえばですね、佐古忠彦監督。沖縄の『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』という映画が2年くらい前かな、あって、その為のテーマ音楽を僕が書いたんですけど、今回そのパート2、続編の映画が出来まして。『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』というんですけども、カメジローシリーズの2作目ですね。これが8月24日から全国公開されるそうで、この2作目の為に、僕はまた新しいテーマ音楽を書きました。多分、次回はそれを紹介出来ると思います。」
「さらにですね、あのイタリアの『君の名前で僕を呼んで』とか『サスペリア』ですね。などで有名だと思うんですけど、ルカ・グァダニーノというイタリア人の監督がいますけども、彼のショートムービー、30分ちょっとの映画なんですけど、『The Staggering Girl』という映画があって、これは全編音楽を付けまして。まぁあの、小品というか短編なので、普通の映画館で公開される予定はないんですけど、どういう風に発表しようか、DVDを作るとか相談しているところです。これもまた改めて紹介しますね。それからですね、これはもう足掛け2年前になるんですけども、でやっと公開されるんですけど、日中韓の三カ国で共同で制作したアニメ映画の音楽を担当しました。やっと今年の夏に韓国と中国では公開されて、日本では2020年。来年の公開予定ですけども、『My TYRANO:Together, Forever』という、ティラノザウルスですね、要するに。恐竜です。『My TYRANO』というアニメ映画になるんですけど、アニメの音楽をやるのは、多分『オネアミスの翼』以来、何十年ぶりだろう。じゃないかな、と思うんですけど。アニメ映画の音楽の作り方を忘れてたんですけど、難しいですよね、意外と(笑)。というのは、渡された映画がまだ、その手書きの絵が貼ってあって動いてないような状態で、それを想像しながら、セリフも入っていないので。というのはなんかね、セリフは、むしろ音楽が出来上がった後に、最後にセリフを録音するらしいんですよ、日本のやり方では。アメリカと日本ではやり方がどうも、手順が違うんですけどね、聞いた話によると。なので、動いてもいないセリフも入っていないので(笑)、全部その脚本を見ながら自分の頭で想像して、この辺でこういう動きして、ここでティラノがこう喋ってとかってことを、頭の中で想像ししながら音楽を作んなきゃいけなくて、とても大変でした。でもね、篠田大介くんという若い作曲家の人と手伝って、いっしょに二人で手分けしてやったんですけど、とても楽しい作業でした。というわけで、ここでもう1曲ですね……あの、これも映画のようなものですけど、Netflixの人気シリーズ『Black Mirror』というのがありますよね、黒い鏡。それのSeason5 が3エピソードあるんですけど、その「待つ男」というサントラを担当したんですね (『Black Mirror: Smithereens (ブラック・ミラー:待つ男)』)。最近それが発表されましたけども。僕もその『Black Mirror』の前のシーズンのものは、いくつかポツポツと観てます。で、割とディストピアンなシリーズということで世界的にとても評判がいいんですよね。で、なぜ僕のとこにその依頼がきたのかは、よく分かりませんけども。まぁ、作ってる音楽が暗いから、ディストピアンな内容にとても合うと思われたのかな……分かんないですけどね。イギリス人の監督でしたけど。そんなに長いものではなくて、1時間ちょっとなんで、割と2、3週間かな、それでもかかってやったんですけど、その中の「meditation app」という曲を『ブラック・ミラー:待つ男』からかけてみましょうか。」
番組では、『BLACK MIRROR : SMITHEREENS ORIGINAL SOUND TRACK』から「meditation app」をオンエアしました。
<オーディション総評>
今回のデモテープ・オーディションは、六本木のJ-WAVEのスタジオにU-zhaanと長嶋りかこさん、ニューヨークから教授がSkypeで参加という形で行いました。毎回たくさんの投稿ありがとうございます。
U-zhaan「J-WAVE レディオ・サカモト。ここからは僕U-zhaanと……」
長嶋「長嶋りかこ……」
U-zhaan&長嶋「そして(笑)」
U-zhaan「なんで?(笑)ピーナッツみたいになっちゃった。そして、Skypeで坂本龍一さんにも繋がっています。教授こんばんは。」
坂本「よろしくお願いします。こんばんはって、そっちは今、昼だよね。」
長嶋「そうです、朝です。」
U-zhaan「朝10時です。」
坂本「こっちは、9時過ぎです。」
U-zhaan「ちょうど半日ズレてるんですね。」
坂本「そうですね、半日ですね。分かりやすいんだけどね。」
U-zhaan「分かりやすんだけど、ぜんぜん違うっていうやつですね。」
坂本「LAに行ったら、もう全然分かんなくなっちゃってさ(笑)、計算が出来ない。」
U-zhaan「LAは仕事で行ってたんですか、そうですよね。」
坂本「遊びで行かないですよ(笑)、嫌いだから。好きじゃないんですよね。」
U-zhaan「遊びで海外旅行に行くこととかってないですか?ほとんど。」
坂本「ないですね。」
長嶋「ないんだね。」
坂本「もう……20年くらいはやってないかもしれないですね。」
長嶋「ちなみにLAは何のお仕事だったんですか?」
坂本「いや、レコーディングなんすけど。人と。何のって言うのも、よく分かんないようなレコーディングで(笑)。」
U-zhaan「よく分かんない状態で、よく参加しましたね(笑)。」
坂本「誰がいるのか、何の為なのか、どこなのか、全然分からなくて行ったんですけどね。」
U-zhaan「あ、そうなんだ(笑)。そんな状況で教授を呼んだら来てくれるもんなんですね(笑)。」
坂本「そう。行きますけどね(笑)。Flying Lotusっていう人に呼ばれて行ったの。Flying Lotus知ってる?」
U-zhaan「分かってますね結構。意外と。あ、でもFlying Lotusに呼ばれて行ったけど、それがどういうものなのかは、分からないってことなんですね。」
坂本「とにかく来てくれ来てくれ、って言うから行ったっていう、だけなの。」
U-zhaan「僕、Flying Lotus大好きなんですよ。」
坂本「あ、知ってんだ。」
U-zhaan「いやいや、知ってるって、音楽だけですけどね。LIVEも観に行ったことがあります。」
坂本「面白いよね。」
U-zhaan「はい。えーと、僕の方は『ベンガル料理はおいしい』という、ベンガル料理のレシピ本の監修をして出したんですけどけども。長嶋りかこさんに装丁を担当して頂いて。」
坂本「あ〜。うちに3冊もあるよ。」
長嶋「あら、すごい!」
U-zhaan「いつの間に。」
坂本「楽しんでます。」
U-zhaan「ありがとうございます。」
長嶋「作りました?」
U-zhaan「いや、作らないでしょきっと。」
坂本「いや、無理です無理です(笑)。僕は無理です。」
U-zhaan「ね、謎の食材ばかりだもんね。パンチフォロンとか、ニゲラシードとか。でも長嶋さんのおかげで、なんか美味しそうな本になって良かったです。」
長嶋「いやいや、凄いですよ、監修が。U-zhaanの厳しい監修が(笑)。」
坂本「もう既に二刷りに入るみたいじゃないですか。」
U-zhaan「え、そうなんですか。へー。」
長嶋「本当ですか。初耳。凄いね。」
坂本「おめでとうございます。」
U-zhaan「ありがとうございます、嬉しい。三刷りまでいかないと、ペイ出来ないって評判なんで。」
長嶋「頑張らないと(笑)。」
U-zhaan「俺らが金かけ過ぎちゃって(笑)。」
坂本「厳しいこと言うから。」
U-zhaan「えー、じゃあ早速、デモテープオーディション、優秀作の発表をしていきましょう。今夜もここ2ヶ月の間に送って頂いた作品から選考しています。インターネット募集にしてから、とんでもない数が来ていますね。聴いていきましょうか。」
坂本「総評的にはどうなんですか。僕的には、3branchesの「room103 3branches」とお経(HIROYUKI SUGAWARA「大般若転読会」)が、良かったかな。」
長嶋「うん、ね。お経大迫力。」
坂本「これは皆さんは全然ピンと来ない?」
U-zhaan「いやいや、僕も3branchesもお経もいいと思ってるんですけど、僕はちょっと選ばなそうなのを選ぼうと思ってるだけで(笑)、これ、いいですね。このローズの……これ、鍵盤を叩く音なんですかね。タイプライターみたいな音に聴こえる音は。」
坂本「そうですね。まぁ他の楽器もあると思うんですけど。カタカタ言ってるのは、大体メインはローズでしょうね。タイプライターや蓄音機の音も足しましたって書いてあるね。」
長嶋「ローズというのは何ですか?」
坂本「エレクトリック・ピアノです。」
U-zhaan「Esolagotoさんという、その前に3branchesさんがコラボ曲を一緒に作った人がいるんですけど、そこに伺った時に、Esolagotoさんの亡くなられたおじさんの、楽器収集されていた、その古い楽器や蓄音機などを使って録ったということなんですけど、やっぱりいろんなところからアイディアを見つけて、すごく、いつも違う作品を作ってくださって。」
坂本「Esolagotoさんも同じ素材で曲を作るらしいんで、期待したいですね。」
長嶋「これは、応募されてたんでしょうか。」
U-zhaan「いや、これからなんじゃないんですか。でもこれ、皆ですご良いねって言ったら、すっごいプレッシャーでしょうね(笑)」
坂本「期待大ですね。」
U-zhaan「期待大って、またハードル上げちゃって(笑)。」
坂本「これを越えるものを作って頂いて。」
U-zhaan「どんどん、どんどんハードルが(笑)。僕はやっぱり、モハメド・アリ (信之 NOBUYUKI「Muhammad Ali Eternal Life」)がとても印象に残っています。」
長嶋「(笑) 強烈でしたね。私、あのおサルさん(こなか かのこ「シロテテナガザルのおかゆ」) も好きでした。」
坂本「サルもいいですねぇ。」
長嶋「フィールド・レコーディングがすごい増えてきて、嬉しいなって(笑)、楽しいなって。」
坂本「嬉しいですね。楽しいです、はい。」
U-zhaan「一個、フィールドレコーディングですごくいい音で録ってて、風鈴が鳴っていて、飛行機が頭の上を抜けていく、その飛行機の音がすごくいいなぁと思ってたんですけど、これは……でも録音がただすごくいいだけなんじゃないのかな(笑)って思ったりしながら。あれでも、飛行機の音、すごくいい音でしたね。」
RADIO SAKAMOTOオーディションに、インターネットから作品を応募できるフォームができました。作品はファイルのアップロードのほか、YouTubeのURLを指定しての投稿も受け付けます。
詳しくは、エントリーフォーム内の応募要項をお読みください。
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RADIO SAKAMOTOオーディションに御応募頂いたデモ作品にまつわる個人情報の管理、作品の管理は、J-WAVEのプライバシー・ポリシーに準じております。詳細は、こちらを御確認ください。 |
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<坂本龍一 「この2ヶ月で聴いた曲から紹介」プレイリスト>
「ここからは、僕が普段聴いている音楽のプレイリストを紹介しましょうかね。僕が普段、毎日のように聴いているいろいろな、雑多な、ランダムな音楽の紹介です。何からいこうかな……えーと、昨日久しぶりに聴いたばかりの、ドイツのグループ、Cluster。懐かしいです、もう70年代からやってる人たちで、僕もほぼリアルタイムで聴いてきましたけども。」
- Für die Katz / Cluster(Kollektion 06: Cluster 1971-1981 (Compiled by John McEntire))
「はい、Clusterの「Für die Katz」でした。そっからどこにいこうかなぁ。……突然ジャンルを飛び越えてですね、John Adamsですね。ミニマリズムという風にくくられていますけどもねー、そのJohn Adamsのピアノの曲です。」
- China Gates / Bruce Brubaker(Inner Cities)
「はい、えー、またジャンルを飛び越えてですね……あの、現代のジャズですね、若い世代のジャズ。The Robert Glasperという。多分、一番、今のジャズ界で注目されている人なんでしょうけど。彼の2014年のCapitol Studiosですね、そのLIVEの中から。」
- The Worst (Live At Capitol Studios / 2014) / The Robert Glasper(Covered (The Robert Glasper Trio Recorded Live At Capitol Studios))
「はい、そのThe Robert Glasperとも、いっしょにやってもいる、Flying Lotusですね。彼の新しいアルバムですね、『Flamagra』というアルバムから、「Post Requisite」かけてみましょう。」
- Post Requisite / Flying Lotus(Flamagra)
「はい、えっとですね……、これは僕はどういう人か全然知らないんですけど、たまたま聴いてて、面白い、いいなと思ったんですけど、Francis HarrisとTerre Thaemlitzの二人による『Minutes of Sleep』というアルバムからです。」
- Dangerdream (How Che Guevara's Death and Bob Dylan's Life Milit) / Francis Harris(Minutes of Sleep)
「はい。えーこんなところですね。まあ相変わらず、ジャンルはめちゃくちゃだし、忙しく仕事はしてるんですけど、こうついね、ストリーミングでいろいろ聴いてしまう……と、またその関連で、これは誰だろうとか知らない人が結構出てくるので、つい追っかけてしまうという。気がついたら1時間くらい経ってるということは、よくありますね。えーと、またかけますね。あの、どんどん自分でも知らない人が出てきますので面白いですけど。」
<エコ・レポート>
「エコロジーオンライン、上岡裕がお届けします。
3月にマダガスカルを訪問しました。もう3年に渡ってマダガスカルの支援をしているんですけども、僕らがやってるのは、マダガスカルに自然エネルギーを普及させるという活動なんですね。といっても、日本みたいに電気が全国に張ってるわけじゃないので、どちらかと言うと調理とかの熱を自然エネルギーでやろうというような取り組みで行っています。その調理に使うエネルギーを牛とか豚とかの家畜の糞尿から取り出すメタンガスでやるんですけど、それの普及のお仕事。あとは小学校での自然エネルギーのワークショップ。この2本の大きな目標があって行ってきました。バイオガスの方は、既に2基、エコロジーオンラインが作ったものが動き始めて、牛の糞尿から炎が生まれて、それで調理をしてくれる農民の方が出てきたりなんかして、それはすごく感動的な話なんですけど。で、こういった取り組みをタイのチェンマイ大学の先生とやっていて、日本とタイの人たちが連携ししながら、マダガスカルでバイオガスを普及するために頑張っています。今の所、2基ですけど、これを10基、50基、100基に増やすためにいろいろ頑張っています。そのためにエコロジーオンラインだけではこういう仕事はできないので、現地にNGOを作りました。「Madagasikara Mirai (マダガスカル・みらい)」っていうNGOなんですけど、"Mirai" はマダガスカル語で "手を繋ごう" っていう意味があって、いわゆる "絆" っていう意味なんですけど、日本語の未来っていう言葉と、マダガスカル語の絆、パートナーシップっていう言葉が両方使えるので、そのNGOでいろいろ頑張ろうと、現地の人たちと意見交換しているんですけど。で、彼らがやっぱり、森がなくなってきてるので森を再生したいというようなことで、植林事業なんかもやっているんですけど、マダガスカルといえば、キツネザルであるとかカメレオンをイメージする方もいるんですけど、バオバブという木が有名で「バオバブ、見に行きたいなあ」と言われる方も多くて。そのバオバブが、実は原因がよく分からないらしいんですけど、すごく倒れていっているというような状況があるようで、見に行きました。で、実際にその現場を見てみると、バオバブの巨木だけが立っているというような状況になっているんですね。現地の人に聞いてみると、森を焼いて畑にしてしまうということで、巨木のバオバブだけが残っているというような状況で。で、ガイドの人に聞くと、バオバブっていうのはもともと "森の母" と言われた木なんだけど、森の母が森を失ってしまって、バオバブだけが残った。で、例えば風が吹いたら、森があれば森が吸収してくれていたのが、強風が当たるようになってしまったし、雷みたいなものも当たりやすくなってしまった。それが原因としてあるんじゃないかと言っていました。やっぱり気候変動でフランス、ヨーロッパを中心にすごい熱波が襲ってますけど、その異常気象が多くなって、サイクロンであるとか、日本では台風であるとか、そういものが大きくなるって言われているので、そういう人為的な森を失った事と、気候変動によるそういったものがバオバブに大きな影響が出てるんじゃないかなという風に感じました。また、森が失われる原因で焼畑もあるんだけど、現地の人たちが実は森が近くにあると、それを怖がるというようなことがまだまだあるらしくて、森がどうやって地域の中で貢献してるかっていうようなことが逆にあまり伝えられていないと。いうようなことがあって、そういう人たちに森の大切さを伝えていかないと、結果、僕らが一生懸命、植林をしても、森が焼かれてしまったり切られてしまったりするので、何とかそこを改善できないかなと考えました。ただ、現地は電気がないのでテレビなんかも見れないですし、新聞も届かない。その中で、ラジオだけは聞けるっていう話があるので、住民の人たちが情報の頼りにしているラジオで何かできないかということになり、だったら音楽を作るのかなあという話になりました。マダガスカルの子供たちも現地の大人も、すごくダンスをするのが大好きなので、音楽はとてもよく聴くので、じゃあ音楽を作ろう。ということで、日本に戻って、「【音楽でSDGsを!】マダガスカルの子どもたちと、歌って、踊って、森をまもろう!」というクラウドファンディング企画を立てて、いま頑張っているところです。8月末には横浜で、TICAD7という、(第7回)アフリカ開発会議があるので、曲の発表はそれに合わせてやりたいなと持っていて、僕らの取り組みも、その会議に出られることになったので調整をしているところです。」
「アフリカといえば、坂本さんと出会った頃、坂本さんがアフリカのある村に行って、村長から「村人たちがゴミをポイポイ捨てちゃうんで、ゴミが大変なんだよね。」という相談をされて、アフリカのゴミ問題に詳しい人いないかなあ、なんて相談されたのを思い出します。今から思えば、プラスチックとかそういうものがアフリカの文化に、経済に入り始めて、それを適切に処理する文化がないままに、商品経済だけが進んでしまったということだったのかなと思いますけど。アフリカに行ってみると、森林破壊も酷いし、プラスチックのゴミ問題なんかも多くあります。何とかアフリカの大自然を僕らも、小さな力ですけど、というふうに思いながら頑張っています。」
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