<今回はパリから、坂本龍一です。>
「今回は、僕がヨーロッパ・ツアーに出ているため、パリからお届けしています(収録の時点は、まだリハーサル中でした)。気温は、けっこう寒いですね。今回は久々に、ピアノトリオという形でのツアーをします。この形で最後にツアーをしたのが、2000年のヨーロッパ・ツアー (チェロがジャック・モレレンバウム/バイオリンがソニア・スレイニー)でしたが、今回は、そこから11年ぶり。一度だけぽつんと、トリオの形でコンサートをしたことがありまして。2007年のイタリアの最北部、ロヴェレートという綺麗な街になぜか呼ばれました(このときは、チェロがジャック・モレレンバウム/バイオリンがステファノ・パリアーニ)。」
<ツアーで深みが出たところで、はじめて音源化する>
「今回は約一ヶ月間なんですけど、一般的に、ひとりの場合でもアンサンブルの場合でも、ツアーをしていると、何度も何度も曲を演るわけなので、大概は演奏がよくなっていくんですよね(笑) 演れば演るほど、深みが増していくというか。ところが、よくあるのは、CDなどを出して、同じ頃にツアーが始まる。そうするとツアーの最初の方では、まだ何度も演奏していない状態でツアーが始まるということで、つまり、スタジオの中で、まったくの新曲として録音したりするわけですから、まだ赤ちゃんのような状態のわけですね。それを皆さんにお聴かせするということになってしまっているわけですよね。ほんとは、新しい曲を作って、ツアーなどで何度も演奏して、こう……少し深みが増したところで、アルバムでも出して皆さんにお聞かせするというのが、たぶん、ほんとはいいのかなと思って、今回は、いままでこれはやったことないんですが、ツアーの最後に、リスボンに居ますので、ポルトガル第二の都市ポルト (ポートワインが有名なところですけども) に移動して、そこのスタジオで、このツアーの成果を録音しちゃおうという施作になっています。どういう形でみなさんにお届けできるか、というのは未定なんですけども。」
<降りてきた、といわれるあのライブがDVD化!>
そんな教授の「ライブ」作品のリリースが12月にまとめてあります。
DVD『playing the piano europe 2009』
これはね、カールステン・ニコライの友だちの、カールステンという、別人のカールステンで(笑) 非常に才能のある映像作家なんですけど、彼が撮っている映像です。とても美しいです。
DVD『playing the piano in seoul / korea 2011 - ustream version -』
今年1月に韓国のソウルでコンサートを演りましたけど、この時、ハイクオリティの映像をUSTREAMで中継したんですね。各地で観てもらったり #skmts なんていうものがあったりしましたけど(笑)、そのときの映像がDVDになりました。
DVD『playing the piano usa 2010 / korea 2011 - ustream viewers selection -』
去年の秋〜暮れに演った、北米ツアーの音ですね。これはファンのみなさんに投票してもらって、その結果のベストテイクを集めたCDです。
BOXセット『path_ ryuichi sakamoto playing the piano 2009 - 2011』
最後がボックスセットで、いま紹介してきたDVDとCD、プラス写真集 (52ページ) です。2009年から2011年にカメラマンやスタッフが撮影した "坂本龍一の素顔" ……と言うんでしょうかね。僕も見たいな(笑) が、付いています。[ 限定販売 ]
<School Music Revival | こどもの音楽再生基金>
「被災した地域にたくさんある学校の 「楽器」 を修復しようという活動で、震災直後から、僕はやはり音楽家ですから、それを考えていたんですけど、なかなか、ひとりでやきもきしていても始まらなくてですね、全国楽器協会が腰を上げてくれまして、走り始めました。当然、たくさんお金が必要なわけですが、ただ、修理すれば、楽器が使えるようになるわけで、練習できない軽音楽部とかジャズ部とか、そういう子たちが、2年後、3年後に、修復された楽器を使って、練習してもらって、例えばね、被災地の音楽甲子園とかね、そういう催しなんかも、できるようになるかもしれないという。結構、これは希望があるものかな、と思っていますけど。」
<東北の会場にMIDIピアノを置いて、リモート演奏>
「この音楽再生基金のコンサートを、12月25日〜28日に東京・銀座のYAMAHAホールで行ないます。4日間ありますので、日替わりでゲストの方にも参加していただこうと思っています。去年から、skmtsなどと称してやってきましたので、せっかくなので、MIDIピアノを使って、東北のどこかの会場にMIDIピアノを置いてですね、リアルタイムで、同時に、実際に僕が弾いたのと同じように、ピアノが鳴るという "リモート・ライブ" なんかも実施しようかなと。もちろん、インターネットを使った、リアルタイムの動画配信なんかもやりたいなと思っています。チケットは10,000円です。ちょっと高いですが、そのうちの3,000円が、この 「こどもの音楽再生基金」 のための寄付金です。不定期に出しているニュースレターでも詳細はお流しします。」
「それとですね、この音楽再生基金と連動している "Forest Symphony" というプロジェクト。今年の7月にはそのために、moreTreesがやっている、宮崎県の諸塚村に行きまして。そこの森の、木の電位……ま、生き物ですから、微弱な電気が走ってるわけですけど、それを丸三日間、24時間の変化などを見て、それを音楽にできないかなと。その関連( moreTreesの『LIFE311』の活動)で、岩手県の陸前高田市に行ったとき、7万本からたった1本だけ残った "一本松" ……この木の電位差も取りました。それから、僕が住んでるニューヨークの近郊、キャッツキルでも大木から電位差を取りました。キャッツキルというのは、ニューヨークの重要な水源なんですよ、人工の大きな湖があって。水によって、森は守られているわけですが、じぶんが住んでいるところにもゆかりがある所なので、ここでも電位差を取ったのですが、面白い結果が得られました。」
<schola vol.9は "サティからケージへ">
「やっと9巻ですか……。今回はですね、『サティからケージへ』と題しまして、同時期に生きていたドビュッシーとラヴェルというとても有名な作曲家がいるので、その陰に隠れてしまうようなところもあるのですが、大変、重要な人なので、……特に20世紀の音楽、ジョン・ケージとかですね。それに影響を受けた、ブライアン・イーノとかですね、アンビエント・ミュージックとか、そういうものの、父というかね。だけではないですけど、そういう面で非常に現代的ともいえるような作曲家が、サティです。今回、「せっかくなので、坂本も弾け!」 ということで、サティのなかでも、わりと初期の曲で、僕はすごく好きな曲があって、確か2年前の日本のピアノ・ソロツアーでも、1〜2回もしかしたら弾いたかな、という。うろ覚えなんですが……。「天国の英雄的な門への前奏曲」 を収録しています。」
現在、commmonsmart で『schola vol.9』を予約すると、抽選で50名さまを、教授とこの選曲を中心に行なった小沼純一さんによる、特別試聴会へご招待!坂本龍一小沼純一『commmons: schola vol.9 特別試聴会』
<一命のサントラには入ってない、ピアノ・バージョン>
「先月、映画も公開になりましたけども、映画『一命』、3Dの時代劇という、初めての試みもありますけど、そこはあまり本質的な話題ではなくて、やっぱり僕は、海老蔵さんの存在感がね……すごいと思いましたけども。全体の緊張感とか、ま、映画自体が持ってる力というのかな、とてもあると思いますけど。この三池崇史という監督は、とても力があると思うけど、ひねくれてるのね。ちょっと一筋縄では行かないね(笑) おもしろい、非常に力のある監督だと思います。今回は、サントラのCDには無いんですが(笑) 、一命のピアノ・バージョンをオンエアしました。」
<吉永小百合さんとお会いしました。>
「いまはパリに居ますが、その前はオックスフォードに居まして、オックスフォードといえば大学ですよね。38の大学に別れているんですけど、その中のハートフォード・カレッジの教会、チャペルですね。そこで、吉永小百合さまと、イベントというのかな……をしてきたんですよ。吉永小百合さんが、20年くらいですかね、『原爆詩』といって、原爆で亡くなった方や、被害を受けた方たちの詩を朗読する、「朗読の会」をやられているわけです。今回は、オックスフォード大学のチャペルで行なうということで。非常に古い建物で、由緒のあるところで、200人も入らないような、小さなところでやったのですよ。」
「なんとお呼びしたら……吉永さん、小百合さん……」
「あ、あの、ぜひ名前の方で……(笑)」
「解りました(笑) 小百合さん、まずは終えられていかがでしたか」
「えー、道のりはとっても長かったんですけど、そして、とてもじぶんに務まるだろうかと心配してたんですけれども、きのう、坂本さんとごいっしょに、ああいう形の演奏会というか、朗読会を開くことができて、おおきなわたしの財産になりました。ありがとうございました。」
「ほとんどイギリス人の方でしたが、英語で先に読んでいただいて、そして小百合さんが日本語で読むという順番でしたけど、日本語の朗読のときに、みんな泣いたり、大きくリアクションしているのが演っていても解って、僕ももらい泣きしそうになっちゃって(笑) 押さえるのに大変だったんですけど、いかがでしたか」
「すすり泣きの声っていうのは、聴こえたんですね。私自身も感動しましたし、ああ、気持ちが通じてる、ということを強く感じました。良かったですね、ほんとに……」
「そのために、少しでも音楽をつけたことが、お役に立ってたとすれば幸いなんですけど」
「やっぱり若いひとに聴いてもらいたいっていう想いがいちばんあって、で、日本でも学生とか中学生とか、こういう形で、外国で、しかも英国の学生さんたちに聴いてもらうチャンスは、あるかどうかも解らないし、でも、小さな種を蒔くことは、できたかしらと思います。もしまたどこかで、こういう機会があったら、坂本さんにお声をかけて、いいでしょうか」
「いいでしょうか………って、もうどこでも飛んでいきますよ、わたくしは(笑)」
<オーディション総評>
「今回は、前回のオーディションをお休みしちゃったというのもあるんですけど、たくさんありました。長かった……。長かったけど、充実してましたよ。紹介しきれなかったけど、良かったものがたくさん届いていました。今回はカエルの音のフィールドレコーディング作品がいちばん良かったかな。人によっては、素朴に、ただフィールドを録るだけ、というひともいれば、音楽作品のようにする方もいる。RADIO SAKAMOTOでは、その辺はあまりきついルールは儲けず、自由にしたいと思っています。でもフィールド・レコーディングの中には必ず、"偶然の要素" っていうのかな、誰もコントロールできない自然音というか環境音というかが入ってくる。そこが面白いですよねえ。」
オーディション・コーナーで紹介した作品はこのサイトでも試聴できます。またコーナーは、全体を世界へ向けてポッドキャスティングでインターネット配信しています。すでに著作権管理団体に登録している作品の応募は受け付けられませんので、オーディションに応募される方はご注意下さい。
※オーディション応募作品をじっくりと聴けるポッドキャスティングは近々このサイトにUPされます。お楽しみに! |
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RADIO SAKAMOTOオーディションに御応募頂いたデモ作品にまつわる個人情報の管理、作品の管理は、J-WAVEのプライバシー・ポリシーに準じております。詳細は、こちらを御確認ください。 |
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■坂本龍一ピアノトリオのサインをプレゼント!
RADIO SAKAMOTO からのプレゼントです。
今回は、現在ヨーロッパをツアー中の、坂本龍一さん、そしてツアーのメンバー、ジャック、ジュディーさんのサインを5名の方にプレゼントいたします。番組の感想やメッセージも、ぜひお書き添えのうえ、コチラからご応募ください(教授と番組スタッフ一同、楽しみにさせていただいてます)。当選者の発表は、発送をもって代えさせていただきます。
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