<北米ツアー中のシアトルより。>
「坂本龍一です。僕はいま、アメリカの西海岸、ワシントン州シアトルに居ます。スターバックスの生まれた場所、Microsoft のある街として有名なんですけど、北米ツアー中でして。昨年、日本のツアー、ヨーロッパ・ツアーとやってきて、いよいよ北アメリカをツアー中。あと行ってないのは、南アメリカ。いつかしたいんですけど、運送とかね、ピアノの手配とか大変なんです (笑) 例の落盤事故のチリからも、熱烈な来てくれコールがTwitter上でもあるんですけどね」
「最近、北アメリカで、僕のアルバムが出まして、その内容は、ピアノのアルバム『/04』『/05』からコンピレーションを作って、それを『playing the piano』と称したものが disc 1、それと日本では昨年リリースになった『out of noise』、これが disc 2。このふたつをまとめたWアルバム『playing the piano / out of noise』というものがリリースになりました。今回はそのツアーをしているわけです」
<もうすっかりツアーな野郎(笑)>
「北米ツアーということで、アメリカ合衆国とカナダですね。こっちは開演が夜8時からのところが多いですけど (スペインなんかは10時くらいですけどね) 、僕の場合は10時ごろに終わって、そこからクルーが機材をバラして、用意ができるのが12時から1時くらい。僕は先に寝ちゃうんですけど (笑) そこからバスに乗って次の街に行くんですよ。それで、ヨーロッパもそうですけど、国境またぐじゃないですか。これが眠いんですよね (笑) 朝6時ごろ起きて、眠い目を擦りながら出入国検査っていうね」
「今回の北米ツアーは10都市なんですけど、去年のヨーロッパ・ツアーではイタリアだけで10回、演ってるんですよ。全体で30ケ所くらい演ってるのかな。けっこうキビしかったんだなぁと思って (笑) この10都市なんて、もう楽勝な感じ。もうすっかりツアーな野郎になってきてますけどね (笑)」
「ツアーエピソードとしてはね、シカゴ公演が面白かったですねぇ。いわゆるノイズ・バンドとかが出るようなクラブみたいな感じの会場で。最大の特徴は、電車が近くを通っている。サウンドチェックをしている夕方5時くらいは、2分おきに電車が来るんですね。静かな曲を弾いてると、電車の音の方が大きいくらいで、いい精神修業になりましたけども。公演が始まってからも、電車が着たり、しかもノイズはそれだけではなくて、外で気持ちよく口笛を吹いて歩いていくヤツが居たりとかですね、どうも客席側にあるトイレにドアがないみたいで、洗面所のハンドドライヤーあるでしょう……アメリカのはすごい音がするんですけど、その音が1分近く続いていたかな、ほんとに申し訳なかったなぁと思うんですけど (笑) これはね、ローカルのシカゴの会場を決める会社が、僕の音楽の内容をよく知らなくて決めちゃったんじゃないかなぁという気もするんですけどね。雰囲気はすごく好きなんですけどね、そういうファンキーな感じっていうのは (笑)」
<大貫妙子&坂本龍一『UTAU』本人解説>
11月10日リリースの、ニュー・アルバム『UTAU』 (※読み:うたう) についての、大貫妙子さん、そして教授による本人解説です。
(大貫)「坂本さんのお書きになるメロディは、いちファンとして、とてもとても素晴らしいと思っているので、いつかそういう素晴らしいメロディの歌詞を書かせていただいて、歌わせていただく機会があったらいいなとずっと思っていたんですね」
(大貫)「既成の曲に歌詞を書くというのは、大変という事もないんだけれども、100あるうちの99を捨てて、ひとつだけを乗せる訳ですから、歌詞としては。だから、その時期とかタイミングとか、そのときの想いとか、いろいろなチョイスがあるので、ゆっくりやっていこうかなと思ったんですけど、意外と早くスケジュールをいただきまして (笑) 完成させることができました」
(大貫)「"3びきのくま (Sambiki no Kuma)" これのオリジナルは2008年の「koko」ですが、心がほっとするようなメロディだなと、ずっと思っていて、ちょうどこれ (の歌詞) を書いているころに、はやぶさが宇宙を彷徨って帰ってきたり、わりといつも夜空を見上げているようなタイプなので、私も (笑) このような歌詞の内容になりました」
<大貫妙子からみた、坂本龍一楽曲の魅力とは。>
(大貫)「心が動くというのは理屈がないことなので、どういうふうに解説していいのか解らないんですけど、例えばラストエンペラーでありリトル・ブッダでもそうなんですけど、とにかく哀しいんですよね、"哀" のほうかな。生まれてきたのが哀しいっていうのかな、根源的なところに遡るような哀しさがあるっていうか、坂本さんのお書きになるメロディっていうのが。その根源にある、どうにもならない "哀しさ" (すいません、坂本さん・笑) これがほんと好きなんですよ」
(大貫)「そういう曲に歌詞をつける作業ですけれども、歌詞に関しては、ひたすらその曲を聴くんですね。そうするとその中から "メロディが呼んでいることば" っていうのかな、が、ぽっこり泡のように生まれてくる、浮き上がってくる。それを頼りに全体を作っていくんですけど、そのやり方は自分のものでも、坂本さんのお書きになったものでもそうですね。だから無理やりことばを当てはめようとか、世界を作ろうということはしないんですよね、いつも。今回のものも、たぶんそのメロディが呼んでいた言葉なんだと、いうふうに思います」
(大貫)「ところでお願いごとがひとつ、坂本さんにありまして。今回のツアーよろしくお願いします。けっこうあのー…ツアーの日程も詰まっておりますしですね、"声が楽器" のわたくしとしてはですね、できれば、アルバムよりも歌のテンポを "1" だけ上げてもらえると、ちょっと楽かなぁなんて思ってるんですけども (笑) 」
(坂本)「ゆっくりな曲っていうのは、インストも歌も難しいんですよ。それだけ間をもたせるっていうのは高度なテクニックが必要になるので。まね、あの (笑) ライヴっていうのは、どっちかが決めるものじゃなくて、ふたり居れば自然と決まっていくと思うんで、大丈夫だと思いますけど。憶えてないもん、レコーディングのテンポなんて (笑) だから自然に落ち着くつころに落ち着くと思いますよ (笑)」
<坂本龍一からみた、大貫妙子の歌・声の魅力とは。>
(坂本)「またこのー…恥ずかしい部分を突っ込まれましたね (笑) 長年…34年くらいですかね、知り合ってから。ほとんど竹馬の友ですよね、妹みたいな。そういう人のことを客観的に語るというのは、むずがゆいというか、恥ずかしいというか (笑) ……あのー、あれでしょうね、英語で言うと "silky" というんですけど、絹のような、透き通った、非常にピュアな声質で、いわゆるセリーヌ・ディオンとは正反対って言ったらいいんですかね (笑) 僕ああいうの嫌いなんで、双子さんが生まれたんですか?名前が決まったってテレビで大騒ぎになってましたけどね、まあ、正反対ということですね。好きか嫌いかっていうのは、個人の勝手なんで僕の趣味ですけどね (笑)」
(坂本)「大貫さんの歌の魅力、大貫さんは自分が歌われる歌っていうのは、ご自分で作詞作曲するのがほとんどですから、なかなかそこを切り離せないですよね。音楽がとても深いし、いいメロディもたくさんあるし、しかもそこに、ことばがくっついていて、メロディとことばが切り離せなく合体しているわけで、しかも本人が歌うと。ぜんぶが相まって大貫さんの魅力になってるんではないかと思いますけどね」
(坂本)「この『UTAU』というアルバムですけど、僕の方から逆オファーもしまして、大貫妙子さんの曲も数曲入っております。例えば「四季 (Shiki)」大貫さんの中には、三つくらいの音楽の傾向があるような気がするんですけど、これは "和" の。大貫さんの書く和系の曲っていうのが (曲数はそんなに多くないんですけどね) なかなか名曲揃いでして、これもいい曲です」
(坂本)「アルバム全体に言えるんですけど、レコーディング前にこうやろうと決まっていた訳ではなくて、特に僕の伴奏は現場で、手探りでやっていくんですけど。悩まないものもありますし、「四季 (Shiki)」はけっこう悩んで。けっこう最初は普通に伴奏してたんだけど、普通過ぎてつまんないなと思って、がらっと変えてみたり。歌いにくくならないように、バランスをとりながら、せっかくですからユニークに、したいということで、「四季 (Shiki)」や「夏色の服 (Natsuiro no Fuku)」自分のピアノのパートもすごく気に入っているトラックですね」
<ドキュメンタリー的トラック「Geimori」>
前回のRADIO SAKAMOTOでも教授が紹介していた、北海道の "芸森スタジオ"。アルバム『UTAU』は、ここでレコーディングされました。バブル時代に建てられた "響きのよい" スタジオで、しかも併設された宿泊施設の、部屋や大きな浴場・屋上にもマイク端子/回線があり、どこでも音を録ることができるそうです。そんな芸森スタジオでのレコーディングの1週間を、音のドキュメンタリーとしてまとめたトラックが「Geimori」。
「アルバム『UTAU』豪華フル・パッケージの方には、CDが2枚ついておりまして、DISC 2では、大貫さんが歌った曲を僕がピアノで弾き直しています。全曲ではないんですけどね。で、その最後に、ちょっとユーモアとし「Geimori」というトラックが入っています。芸森スタジオでの1週間のレコーディングの音のドキュメンタリーといいますか、そういうものを作ってみました」
<坂本龍一×古川享×平野友康>
今回の教授の北米ピアノ・ツアーは、シアトル公演からUSTREAM中継されたましたが、その中継を担当されたのが、元マイクロソフト/現在は慶応義塾大学大学院教授・古川享さん、そして古川さんの相棒、デジタルステージ代表・平野友康さん。シアトル公演の前日に急遽、おふたりにもお話を伺うことができました。オンエアでお届けできたのは、ほんの一部でした。番組ポッドキャストでは、この鼎談のノーカット版を配信中です。
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<オーディション総評>
「今回は、ちょっと私としては、辛 (から) めな総評をしたいような気持ちもあるんですけど、その中でも小野朋行さんの「原人」という曲とかは、とてもユニークな音色とかですね。おもしろかったのは "日の目の見ないレコードに、日の目を見させたい" ということで作ったという、西山裕介くん、24歳。この8分以上の大作ね……これはいいんですよね。頑張ってください、また。期待してます」
オーディション・コーナーで紹介した作品はこのサイトでも試聴できます。またコーナーは、全体を世界へ向けてポッドキャスティングでインターネット配信しています。すでに著作権管理団体に登録している作品の応募は受け付けられませんので、オーディションに応募される方はご注意下さい。
※オーディション応募作品をじっくりと聴けるポッドキャスティングは近々このサイトにUPされます。お楽しみに! |
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■Yellow Magic Orchestra のTシャツ & 教授の直筆サイン入り 坂本龍一『playing the piano / out of noise』を各3名様にプレゼント!
RADIO SAKAMOTOからのプレゼントです。
今回は、2点。
Yellow Magic Orchestra のTシャツを3名の方にプレゼント。
そして、北アメリカでリリースになった、坂本龍一『playing the piano / out of noise』に教授の直筆サインを入れて、3名の方にプレゼント致します。
ご希望の方は、コチラからご応募ください。当選者の発表は、発送をもって代えさせていただきます。
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