<こんばんは、坂本龍一です。>
「えーっとですね、もう一年以上ぶりに、久々にJ-WAVEのマイクの前に戻ってきました。皆さんは、元気でしたか。ねー、あのー……ちょうど、この番組休んで一年になるのかな。で、ぼくの病気療養中は、高橋幸宏くんや高野寛くん、U-zhaan、長嶋りかこさん……他にも、オノ セイゲンさん、國崎晋さん、真鍋大度くん、蓮沼執太くん、チボ・マット、その他、たくさんの方々にサポートしてもらって、やっとの思いで繋いできたっていうね。よく、終了しなかったもんだなと。スポンサーのご厚意もね。ありがとうございます。」
<久々の近況報告です。>
「J-WAVE、レディオ・サカモト。今回はRed Bull Studios Tokyo から坂本龍一がお届けしています。ここでは久々の……まあ、なんていうのかね、近況報告です。してないですよね、一年以上してないわけですからね。えー、仕事に復帰したところなんですけども、うーん……もちろん、そのなんていうのかな、個人的に日々ね、ぱっと思いついて音楽をスケッチしたりとか、音楽を聴くなんていうことは毎日やっていたんですけど、仕事となるとまた、ちょっと感じが違うので、やはり最初はね、どうやって作曲していいのか、ちょっと忘れてましたね(笑) ……いわゆる仕事の作曲ね。うーん、で、自分でもやっぱり、こう、ほんとにもう四十年近く、仕事を始めてから、こんなに長く休んだことも、もちろん初めてなので、何が変わってるのかなとかね、なんか自分の中でもちょっと期待とか(笑)、そういうものも芽生えていたりして。ただ、言葉ではちょっと言い表すのは難しいけど何かが変わっているかもしれませんね、変わってないところも大きいと思いますけども。せっかくのこの長い休みをね、もらって、この休みを生かしたいなと、今後のために。そう思ってたことは確かですね。だから、普段あまり聴いていなかった、これまで聴いてこなかった音楽を集中して聴いたりとかね。それからまああと日々の過ごし方も全然変わっちゃいましたから、ゆっくり……星を眺めたりとかね、夜ね。ロマンチックだなあ。空を見たりとか、雲を眺めたりとかね。まああとは、当然のことながら体のためにね、時間を使うっていうのは、もう、今でも毎日やってるわけですけど。そんなことは、今まであんまりしたことなかったので。これからでしょうね、その結果が……変化が出てくるのはね。えー、"留守番ナビゲーター" を務められた(高橋)幸宏さんからは、こんなメッセージが届いています。」
『おかえりなさい。またゆっくり食事でもしましょう。それとも、今度こそ採った魚を二人で料理して、みんなに振る舞ってみましょうか。何事も、ゆっくりとね。』
「ふたりで料理して!?……僕ね、料理ができないんですよねえ。こればっかりはね、まあだけど、魚を捌いたりするのは、見よう見まねで出来るかもしれないですけどね。そういうゆったりとした時間ていうのかな、ふたりでね、魚を扱ったりとかね、そういうのはいいでしょうね。是非、やりたいと思います。ありがとうございました、幸宏くん。」
「2012年に千葉・幕張メッセで開催された、脱原発をテーマとして音楽イベント "NO NUKES 2012" に出演したときの、YMO のライブ音源がCDになったんですね、最近ね。タイトルは『Yellow Magic Orchestra NO NUKES 2012』。アルバム・ジャケット、とてもいいですよね。この時、クラフトワークも出たんですよね。クラフトワークがトリかな。続けて、YMOとクラフトワーク……多分、最初で最後、最後かどうか分からないけど(笑)、四十年やってきて、初めてですよね、あれはね。いや楽しかったな、かぶりつきでクラフトワーク観ちゃったな、僕も横から(笑)。そのクラフトワークの代表曲でもあります「Radioactivity」をYMOでアレンジして、演りましたけど。」
<復帰第一弾、映画音楽「母と暮せば」>
「でまあぼくは、最近ね、仕事再開のアナウンスをしたところなんですけど、いきなりまあ、がっつり仕事が始まってしまいまして。ご存知の方も多いと思いますけど、復帰第一弾の仕事は映画音楽なんですね。山田洋次監督の『母と暮せば』という、今年の12月(12日)の公開ですかね。これがまあ、いま苦労してやってるとこですけども。吉永小百合さんと、二宮和也くん共演の、とても泣けるいい映画なんですけども。期待してください。」
「仕事復帰第一作となるわけですけども、制作の経緯などはね、いろいろメディアにも出てたと思うんですけど、まあね、あのー、吉永小百合さんと山田洋次監督、ふたりに見えられてですね、お願いしますね。って言われたら、断れる日本人は、たぶんいないと思うんですよね(笑)。お二人を目の前にしてね。もちろん断る気もないんですけど。喜んで、ほんとに、これ以上ない光栄なことだと思いますけども。だんだん、年をとればとるほど、寅さんシリーズがね、もうぐっと心に染みるようになってきてもう、最近、よく飛行機の中で観るんですけど、もう最初のタイトルバックの江戸川が見えた時点でもう泣いてますもん。もう涙ちょちょぎれてるっていうね。自分でもよく分かんないんですけども。感極まっちゃってね。江戸川にまったく縁ないんですけど、ぼく。……なんでしょうね。まあ、普通に言えば "帰ってこない昭和" っていうことですかね。そういうことなのかな。だからね、どんどん、寅さんの存在がぼくの中で(笑)、大きくなってくので、その山田監督にね、依頼されたっていうのは、これ以上幸せなことはないですけどもね。」
<弥勒世果報- undercooled / うないぐみ+坂本龍一>
「もうひとつ、近況報告ですけども、新曲が出ます。沖縄のボーカルグループといいますかね、"うないぐみ" というグループがあるんですけども、彼女たちとチャリティ・シングルを10月7日に発売します。これは、僕の「undercooled」という曲に、沖縄語を……ウチナーグチで歌詞をつけて、彼女たちが歌っています。彼女たち、っていうのは初代ネーネーズの古謝美佐子さん、など四人の女性が結成したのが、うないぐみなんですけど。古謝さんは、80年代から『NEO GEO』ってアルバムで最初に参加してくれて、それ以来、何度も何度も演っているんですけども、一緒にワールドツアーに行ったり、深く付き合ってきた方、素晴らしい唄者です。」
「まず、ぼくの曲に古謝さんたちが歌ってくれて、その録音は実は去年、届いてたんですね。何がぼくも音を足して完成させようと思っていたんですけど、病気になっちゃったんで、それがまあずっと延びてしまって、つい先日、ピアノやシンセサイザーなど音を足して完成させたんですよ。弥勒世果報(みるくゆがふ)って聴きなれない言葉だと思うんですけども、飲むミルクではなくて(笑) ……弥勒菩薩が降臨して、平和に、こう宇宙……或いは世界を治める。そういうユートピアのような社会、世の中、そういう意味ですね。とても豊かで幸せな争いのない、菩薩が治める世界。まあそれは沖縄のことでもあるんだけど、この世界全体、宇宙全体のことでもあるという、そういうメッセージが込められているわけです。」
古謝美佐子さんからのメッセージ。
『坂本さん、約一年ぶりの番組復帰、おめでとうございます。この一年あまり、大変だったことと思いますが、お元気になられて、とても嬉しいです。もう十年くらい前でしょうか、undercooled が発表されて、すぐくらいのときに、ぜひこの曲にウチナーグチの歌詞をつけて歌いたい。と、お願いしましたね。こういう形で発表していただくことになり、大変嬉しいです。』
<声の魅力、唄の魅力にハマりました。>
『声の魅力、唄の魅力にハマりました。』
「ではここで1曲、紹介します。ぼくがよく聴いていた曲を紹介しちゃおうかな。ぼくは割と(今回のオーディション・コーナーでも話にでましたけど)、あんまり歌を聴いてないひとで、聴いてないっていうかこう、聴こえてこないんですかね、言葉が。だからその昔はよく、アレンジをしてたときに、矢野さんとか大貫さんに怒られましたもん。あんた全然、歌聴いてないわね。歌を聴かないでアレンジしてるっていうね、ほんと最悪なアレンジャーですけども。まあ、その大貫さんの……あの時代のアレンジもそうなんですけど、もっとすごい、ほんっとに聴いてないんだな、って誰が聴いてもよく分かるようなアレンジが、最近、手元に来ましたので、昔の仕事で。来年1月ですか、リリースできると思うんですけど。ぼくもほんとに、35年ぶりぐらいに聴いたんですけど、度肝を抜かれましたね。歌と、オケのそのアレンジの剥離……その何て言うのかな、千里の径庭と言いますかね。もうその……遠さ、歌とアレンジの。ここまで聴いてないのか、みたいな(笑)。……そんな話はどうでもいいんだけど、そのぼくが、この一年で、声の魅力っていうか歌の魅力にものすごくハマった歌手の方がいまして、もう80歳を越えているキューバの女性の歌手で、オマーラ・ポルトゥオンドさんという、おばあちゃんがいるんです。もう素晴らしい歌なんですよ。ぜひ聴いてもらいたいなと思って。」
<スペシャル・ゲスト:U-zhaan>
「えーっと、スペシャルゲスト、U-zhaanさん、もうすっかりメジャーになっちゃって……」
「(笑) とんでもないです。スペシャルゲストって言われても聴いてらっしゃる方は、またいつもの声だって思うと思うんですけどね。」
「一年もサボってたんで、ラジオのやり方を忘れちゃったんですけど(笑)。忙しいU-zhaanさん、教えてくださよ。」
「いえいえいえ、僕もまったく分からないまんま、どうしてやっていいのか…… "レディオ・サカモト、U-zhaanです。" っていう、あの、耳慣れないフレーズから始まるやつが……」
「でもさ(笑) 最近、聴くところによると、J-WAVEの他の番組までやってるそうじゃないすか。」
「しょっちゅう来てますね、J-WAVEに。週に四回とか来たりしてますね。何なんだって僕が思ってるところです。」
「えーっと、どうすか、ラジオのナビゲーションていうのは。」
「こうやって、ひとりでぶつぶつ話してるんだったら何とかなるけど、誰かの番組に呼ばれて出て、相手がすごいテンションが高い人だったときに、どうしていいのか分からなくなりますね。」
「声が大きい人多いよね、なんかラジオの人って。多分、ぼくが一番小さいんじゃないかな。」
「大きく喋らないと、リップノイズとかが、だんだんマイクに乗ってきて、聴きにくくなったりするみたいですよ。」
「すいません(笑)。タモリさんがさあ、まあタモリさん……親友の。」
「親友じゃないです。」
「タモリさん。声をマイクにのせる天才だね、あの人。ほんとに上手い。」
「そうかもしんないですね、タモリさん、声大きくないですもんね。それは間近で見たときに体感したんですか。」
「なんかそうじゃないかなあって思ってるだけなんだけど、普通にしゃべってるよね。だけどきちんと乗るという。」
「去年は、あの、たくさん、U-zhaanにお世話になっちゃって。」
「こちらこそ、お世話になりました。」
「このまま、もうあげちゃっても良かったんだけど。」
「この番組ですか。いやいやいや、もうみんなに "このまま乗っ取るの" って言われ続けてたんですから、勘弁してください(笑)。」
「はっはっは(笑)。りかこちゃんともコンビネーション、最高でしたね。」
「長嶋さん、面白いひとですよね。」
「あの鼻で笑うんだよね、んふって。あれがなんかいやらしくてね。聴いていて、ぞくってしちゃうんだけど。」
「長嶋さんが言ってましたよ、"あの笑い方がセクシーだ" っていうメールが来たんだけど、返事の仕方が分からないって(笑)」
「でも、あのオーディション・パートってやっぱり面白いですね。」
「面白いでしょ。」
「うーん、最初はもうどうしようかな。人の作品をやっぱり、しかも教授のところに送られてきた作品を批評するなんて、なかなか出来ないなと思ってたんですけど。」
「失礼があっちゃいけないとか……結構、そういう気遣いができるひとなんだよね、この人ね、見かけによらず。」
「でも、楽しいですよね。単純にその、世に出るような音源じゃないものを、最初に聞けるっていう。」
「ね、商品じゃない……ならではの、そういうものがあるじゃないですか。でも、このまま商品にしてもいいんじゃないのっていうものも来るけども、それはそれでよく出来過ぎていて面白いっていう感じもあるけどね。だけど絶対にこれ売ってないだろうなっていうさ(笑)、ほんとにここで聴くしかないっていうものですよね。」
「割と、ぼくとU-zhaan、選ぶものが似てるよね。」
「そうですね。教授……なんか、(お休みしているときの)二回目くらいのときに、教授と僕でいっしょに選ぼうっていう回があったんですけど、そのとき教授が選んできたのと僕が選んだのがいっしょで、教授もう選ぶのやめましたね、その後(笑)。教授から送られてこなくなって。」
「だってつまんない(笑)。同んなじなんだもん。」
「『TABLA ROCK MOUNTAIN』……Technopolisが。」
「そうですね。そん中に入っております。ありがとうございました、あれが、いちばん最初にこのアルバム用で録音が完了した曲で、これしか、録れてない頃って、このアルバムってどうなるんだろうな。って僕も思ってましたけど。」
「前途多難な感じですよね、これしかなかったら(笑)」
「教授が最後に、"イマイチだな" って言ってる声がすごく、あの、僕の心に残ってる(笑) 」
「そんなことを言ったのか、失礼だなあー……すいません(笑)」
「ちょっと勘が戻ってきたかな……」
「全然、最初から普通に喋ってますよ。」
<デモテープ・オーディション総評>
今回のオーディション・パートは、教授の希望もあり、U-zhaanさんとふたりでお送りしました。
「9曲ぐらいオンエアしましたが、教授が印象に残っている曲ってありますか。」
「だいたい僕は音に反応するんですけど、今日は珍しく "あすた" っていう……」
「あー……5*SEASONさんですね。」
「あすたっていう、随分もうなんか、胸がときめいちゃって(笑)。」
「なんかネイティヴにしか出せない発音ですよね。」
「ですよねえ(笑)。ふざけてるのかな、この人……」
「いや、たぶん、たぶんふざけてるんだと思うんですけどね。まあ、でもふざけてる中に真面目な部分があると思いますけど。」
「でもこれ、何回か録り直して、ベストテイクを選んだりしてる……でしょ。トラックも時間かかって作ってるわけだし。すごいなあー……インパクトがあるなあ。」
オーディション・コーナーで紹介した作品はこのサイトでも試聴できます。すでに著作権管理団体に登録している作品の応募は受け付けられませんので、オーディションに応募される方はご注意下さい。 |
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RADIO SAKAMOTOオーディションに御応募頂いたデモ作品にまつわる個人情報の管理、作品の管理は、J-WAVEのプライバシー・ポリシーに準じております。詳細は、こちらを御確認ください。 |
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<激変する音楽を取り巻く環境について>
「今日は三人の皆さんに集まっていただいたんですけども、音楽をめぐる、テクノロジーとかビジネス環境ってのはもう、日々、激変してるわけなんですけど、その辺の一番新しいところの、まあ、問題山積みだと思いますけどね。それぞれポジションが違うから、微妙に視点が違うから面白いかなと思います。」
ということで、音楽を取り巻く環境について、著作権会社 JRC(Japan Rights Clearance Inc.)代表の荒川祐二さん、サウンド&レコーディング・マガジンの編集人の國崎晋さん、ハイレゾ音楽配信と音楽記事サービス・OTOTOY代表の竹中直純さんを迎えての座談会をお届けしました。
■ミニバスタオル『SCOPE house towel 坂本龍一 特別版』を2名様にプレゼント!
RADIO SAKAMOTOからのプレゼントです。
今回は、オンラインショップ「SCOPE」とコラボしたミニバスタオル『SCOPE house towel 坂本龍一 特別版』を2名様にプレゼント。色:アッシュ、RYUICHI SAKAMOTOタグがついています。
http://www.scope.ne.jp/scope/ht/com/
番組の感想やメッセージも、ぜひお書き添えのうえ、コチラからご応募ください(教授と番組スタッフ一同、楽しみにさせていただいてます)。当選者の発表は、発送をもって代えさせていただきます。
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