「こんばんは、坂本龍一です。もう5月。ねぇ。ついこの間、2014年になったと思っていたのですが、やばいすね。日本はいまちょうどゴールデンウィーク中で、ちょっと混んでいるかもしれませんけども、銀座の松屋(松屋銀座)では『more trees展』というのが開催中です。もうしばらくやっているみたいなので、ゴールデンウィーク明けなどに訪れてみてはいかがでしょうか、とちょっとまあ宣伝もしたりして。」
「僕はこのひと月くらいですかね、4月1日から日本に居まして、全国各地で "Playing the Orchestra 2014" というコンサートをやってました。去年もいっしょに演った、 東京フィルハーモニー交響楽団の皆さんと。今年の大きな変化は、コンサートマスターの方が変わったのと、僕がピアノも弾きながら指揮もして、両方いっしょにできないところは指揮だけするという。どうしてもピアノが必要なところはピアノを弾くという感じで、やっていました。指揮は習ったことはなくて、完全に見よう見まねなんですけど……そうですね、小学校ぐらいのときから好きでしたね、テレビでカラヤンが来たりとか小澤(征爾)さんがやってたりとかするのを割と食い入るように見ていた記憶はありますね。最近ですと、惜しくもなくなってしまったクラウディオ・アバドも好きですね。もちろん、ピエール・ブーレーズ大先生もしょっちゅう観てますし、セルジュ・チェリビダッケさんなんていうのも、変わってるかなあ。天才的なのがカルロス・クライバーですかね。クライバーの指揮を観ていると、指揮っていうのは舞踏なんだなと。踊りなんだなっていうのがほんとよく分かります。や、ちょっと真似できないですよね。下手に真似しちゃうとかっこ悪い。それからニューヨークに戻ってきて、いち段落して。ほんとはもう今年の頭からやってなくてはいけなかったんですけど、今年、いよいよソロ・アルバム。……制作を始めないと。もう5月になってしまったんですけども、今年の夏は "札幌国際芸術祭 2014" もありますし、ほんとに出来るんだろうか、アルバムは……いや、やるんだ。やるぞ。」
<Playing the Orchestra 2014>
「まずは近況報告ですかね。4月1日から、日本各地で "Playing the Orchestra 2014" というコンサートをやっていた訳なんですけども。まあ、あの……意外と難しいんですよ。譜面を見ながらピアノを弾いて、指揮もするっていうのは。まあ、今回はね、東京フィルハーモニーオーケストラとこういう形でやる、僕が指揮をするというのは初めてなので、指揮をしてる時間の方が長かったような気がしますね。もっとお互いに慣れてきたら、オーケストラにかなり任せて自分は好きなようにピアノを弾く、っていうのも素晴らしいと思うんですけど、まあ今回は大事をとってと言ったら変ですけど、あのー、割と指揮に集中してましたね。で、まあほんとにあのー、コンサートで指揮をするっていうことをあんまりやっていないので、前はいつやったかというと、1999年に、オペラ『LIFE』っていうのをやったときには指揮をしてましたけども、それ以外ではね、スタジオの中では映画音楽とか、そういうオーケストラなどを使う場合には自分で指揮はしてますけど、まあそれは人に見せるものでもないので、ちょっとやはり違いますよね。まあ、ほぼ素人と言っていいでしょう。でもね今回、7回のコンサートがあって、やっぱり本番を演っていくごとに、息が合うっていうんですかね、オーケストラと私と。お互い息と息が合ってくるんですよ、明らかに。これは結構快感でしたね。もちろんオーケストラの人たちも音楽に対する理解が深まっていくし、体に入っていく訳で、やっぱりバンドなどと同じで、ほんとにライブなんだなと思いますね、基本的には変わりないと思いますね。」
「去年も演っていて今年も演った曲もあるんですけど、今年また書き下ろした曲とかですね、去年やらなかった曲などもあります。また今年はね、ロンドンに住んでいる藤倉大さんという現代音楽の作曲家、と言っても僕の友達なんですけど、彼によるオーケストレーションが1曲ありまして、何でもいいよっていうことで好きに選んでもらったんですけど、藤倉くんが好きだったのは「Ballet Mécanique」ということで。他は僕自身が編曲しているので、やっぱりこの曲のオーケストレーションは、サウンドがちょっと違いましたね。面白かったです。若いし。オーケストラも一生懸命やってくれてました。演奏上、難しい部分もあるんですけど、随分、意気込んで演ってくれてました。ただ、あれを指揮するとですね、まあ激しくやっているもので、もうほんとに息が上がっちゃうんですよ。ところがその曲の次に、また「anger - from untitled 01」という、昔書いた曲を演っているんですけど、これがまたすごくうるさい曲でね。これを演るとまた息が上がってしまって、二重に上がってしまうんですけども、まあしょうがないですよね。静かな曲ばっかりだとつまんないしね。えーっとね、藤倉くんはこの "バレメカ" を毎日のように聴いていたそうで、藤倉くんは大阪の出身なんですけど、大阪公演のときに藤倉くんのお母さんがお見えになってね、あの曲を覚えていたと。大くんが子どもの頃に毎日、部屋から聴こえてきたっておっしゃってましたね。なんかほのぼのとしちゃいますよね。じゃあ、まあほんとこれ、録って出し、蔵出しですけど、聴いてみましょうか。」
(番組では、2014年4月13日・愛知県芸術劇場でのLIVE音源「Ballet Mecanique」をオンエアしました。)
<札幌国際芸術祭 2014>
「札幌国際芸術祭 2014のゲスト・ディレクターを務めている坂本龍一です。札幌というのは、まあ明治維新以降の、日本の近代化の象徴です。明治維新と共に、生まれて、発展してきた都市な訳ですね。だけども周りには広大な自然があると。それから元々アイヌの土地であった大平原の上にですね、札幌という大きな都市が今は出来ているという、都市と自然とか複雑に絡み合ったね、環境になっているわけですけども。ということで、今回の芸術祭のテーマっていうのが『都市と自然』ということにしました。その近代化の過程でですね、近代化が壊してきたもの、失ってきたものを考え直す。或は取り戻す。そして近代以降、ポスト近代の新しい21世紀型の っていうものを探求する。そういう機会になるんじゃないかと思っています。」
「札幌っていう街、北海道という土地と言ってもいいんですけど、やはり日本の本州などとは異なる、こう、空気というか、風景。そういうものを持っていまして、またアイヌ民族が、近代に至るまで狩猟採取という文化を保持してくれたという、特別な土地なわけですね。非常にいろいろなアーティストのクリエイティブなアイデアを刺激する、大きな、土地自体が持っているインスピレーションの基だと思いますね。」
「そして今回の札幌国際芸術祭の中で、パフォーマンスというものでは、高谷史郎さんの『CHROMA(クロマ)』ですとか、それから私が感銘を受けて今回が日本初公演なんですけども、シディ・ラルビ・シェルカウイという人の『BABEL(words)』(シディ・ラルビ・シェルカウイ + ダミアン・ジャレ) という作品があるんですけど、これを特別に招聘します。これはダンス・パフォーマンスですね、観て頂かないと分からないんですけども、なんて言ったらいいかな、ピナ・バウシュの次の世代……次世代の若いダンス・パフォーマンス。僕もピナ・バウシュは大ファンでしたから、もうあれより先が果たしてあるのかと思っていましたけど、やはりあるんだ、ということでね。目から鱗が落ちたグループなんですけども。この作品は "BABEL" ですから、バベルの塔、言葉に関係してます。今、まさに世界的な問題として、言葉という壁を乗り越えなければいけない……まあ、ということは象徴的に、いろんな人間の多様性を認め合うということです。これが今ほど大事な時期はないんじゃないかと、いうこともありまして、この公演を招聘します。」
「札幌という都市の象徴的な空間である地下歩行空間、略して "チ・カ・ホ" ですね、非常に長い空間なんですけども、ここでいろいろな展示をします。その中のひとつで、いま、時の人ですよね、真鍋大度くんと僕とで共同のコラボレーションのインスタレーション作品を作ろうと取り組んでいます。チ・カ・ホという空間は一日に70,000人のひとが行ったり来たりするストリーミングの空間ですね、そこで渦巻いている、あるいは流れている、膨大なデータを転送する "電磁波" というものを、可視化あるいは可聴化することができないか。ということを、いま、真鍋君と相談しながら作っているところです。非常に刺激的なインスタレーションになるんじゃないかと期待しています。」
「また僕はですね、新千歳空港……世界からお客様を迎える玄関、北海道の玄関ですよね、そこのサウンド・ロゴと言いますか、ウェルカム・サウンドを作ったり、この芸術祭に音楽や音の面でもね、サポートもしています。市民たちで作り上げる『札幌国際芸術祭 2014』……お越しいただくだけでなく、ぜひ僕たちと一緒に参加して、作り上げてもらえたら幸いなんですけども。」
今回のオンエアでは、3月13日に六本木ヒルズアカデミーで開催された記者会見から、宮永愛子さん、山川冬樹さん、真鍋大度さん、進藤冬華さんのコメントもオンエアしました。
<レディオ・チボマット>
「レディオ・サカモトを聴きの皆さん、CIBO MATTOのハトリミホです。えー、CIBO MATTOの本田ゆかです。……………(長い沈黙)……(笑) どうしよう、こっからどこに行けばいんだろう。えー、固まっていますが、こういうのに慣れていません(笑)。今回のアルバム『Hotel Valentine』は、日本盤にボーナストラックというものを入れたんですけども、ゲストはどなたが参加してくれたの。もうすごいんです……坂本龍一さん。Wow!高橋幸宏さん。OMG!小山田圭吾さん。すごい!プラス私たちの周りのひとたち。そうです(笑) 家族もお友達も参加してもらいました。楽しい宴会場の雰囲気で作ってみました。」
「CIBO MATTOのおふたりでした。CIBO MATTOは、これから南米ツアー。もうやってるころかな、なんですよね。いいですねぇ。ブラジルは僕は何度も行ってますけど、2年前には初めてアルゼンチンに行ったんですけど、いい所でしたね。ちょっと怖いところもありましたけども。ミホさんはブラジル・ミュージックが大好きと。ゆかさんは何と、タンゴをやっていたんですね、踊りをね。習ってたんだ、全然知りませんでした。今度見せてもらいたいと思います。」
<レディオ・コトリンゴ>
「レディオ・サカモトをお聴きの皆さん、教授、お久しぶりです。コトリンゴです。Playing the Orchestra 2014 お疲れさまでした。とても拝見したかったです、私はアルバムを作っておりまして、その新しいアルバム『birdcore!』が発売されました。今回とてもぎゅっと集中して作ったので、私の音楽の核にある好きなもの、大好きな、もうちょっとお茶目なポップスだったり、クラシックやジャズやピアノ曲やフォーキーなものが、するする出てきて作っていった気がします。」
そして今回は、この番組のオーディション出身でもあるコトリンゴさんに、番組オーディションに参加する皆さんにアドバイスをいただきました。
"オーディションで自分をアピールするポイントは?"
「私はこの番組のデモテープ出身者のひとりでもあるんですけど、私もそういうところが下手なので難しいんですけど、デモテープを作っていたときは、もともとは誰に聞かせる訳でもなく好き勝手にのびのび作って楽しんでいたので、ぜひ、いろんなことに捕われずに、のびのびと作ってほしいと思います。」
"当時のテープを今の自分が審査したら?"
「昔の自分の演奏を聴いて言えることでもあるんですが、今よりも、もちろんいろんなことが未熟だったりするんですけど、あ、こんなこと弾いてる、とか発見もあったりするので、初心を忘るるべからずと自分には言いたいです。」
<番組オーディション応募作品 総評>
「今回は割と作品が少なかったのですが、ちょっと気になったのは、割とイージーな、ピアノでこうなんか情景を作ってるみたいな、まあ、タイの子どもたちの声のトラックがありましたけども(Sakuma Takanari「kaerimichi」)、あれももちろん少しイージーですけど、ほんとに難しいですよね。どこまでが綺麗で、どこまでがイージーになっちゃうのかね。まあ判断する人によっても違うし、本人も1年後に聴いたら違う感想を持つかも知れないし、なかなか難しいところですけどね。つまり聴きやすいとかシンプルっていうことと、イージーっていうことは違うと思うんですよね。まあ、自戒も含めて。そこが難しい分かれ道だと思いますね、いつもね。頑張ってまた投稿してみてください。」
オーディション・コーナーで紹介した作品はこのサイトでも試聴できます。またコーナーは、全体を世界へ向けてポッドキャスティングでインターネット配信しています。すでに著作権管理団体に登録している作品の応募は受け付けられませんので、オーディションに応募される方はご注意下さい。
※オーディション応募作品をじっくりと聴けるポッドキャスティングは近々このサイトにUPされます。お楽しみに! |
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