「こんばんは、坂本龍一です。2ヶ月に一度お届けしているレディオ・サカモト。今年の夏は、猛暑……ですよね。高知県の四万十市西土佐では、国内の過去最高気温、41度ですってね。すごいなあ……。まあ最近では、寝るときに「クーラーを切らないで」なんてテレビでも呼びかけもしてるみたいですけど、雨の被害も多いですよね、地球温暖化というか大規模な気候変動を感じますよね。エジプトの情勢も、ほんとに内乱のようになってきて心配ですけど。この2ヶ月の間に、僕も、いろんなことをしました。今回のレディオ・サカモトは「坂本の夏」と称して、この2ヶ月の活動を総まとめしてお届けします。更に、前回の放送でお約束した、大友良英さんもゲストでお迎えします。題して、「坂本龍一×大友良英 "あまの桜" セッション」。今回は御茶ノ水にあります、オーディオテクニカの "astrostudio" からお届けしています。」
<坂本龍一×大友良英 "あまの桜" セッション&トーク>
前回のレディオ・サカモトで、大友良英さんをゲストに、ということになり、今回は『八重の桜』のテーマ曲を手掛ける坂本龍一と、『あまちゃん』の音楽を担当している大友良英さんによる、13分に及ぶスペシャルセッション『あまの桜』をオンエアしました。レコーディング・エンジニアは、オノ セイゲンさんでした。
「えー、大友良英さんをお迎えしてですね、"あまの桜" セッションをしたところなんですけど。まあ、なんの打合せもなしにいきなり演ったんですけども、えー、ね、8月15日に、フェスティバルFUKUSHIMA! で福島駅の商店街の所で……」
「はい、ありがとうございます。毎年来て頂いて、3回目ですよね。」
「そうですね。今年は納涼盆踊りということで、いくつも櫓を建てて、すごい感じの盆踊りだったんですけど(笑)、あの盆踊りのリズムが身体に入っていて……」
「ですね。ついつい、そんな感じのセッションに(笑)、坂本さんて盆踊りって……」
「全然やったことないですね。」
「僕も全然……むしろ嫌いなくらいだったんですけど。」
「なんかね、あんまり自分の中には、血としてないのかなと思ってたんですが、今回…… (笑)」
「演ってみたら、意外とっていうか(笑) 、すごい面白くなっちゃって……」
「ですよね(笑)」
「なんか作ってくうちに面白くなったのと、素人の皆さんにいっぱい来てもらって演奏してもらうんですけど、盆踊りのビートってちゃんと教えなくても、みんな出来ちゃう。それがちょっとびっくりで(笑)。何て言うんですか、ネイティブっていうか血に流れてるってこういうことなのかなって……」
「ですよね。だから僕らが見よう見まねで、ニューオーリンズとかね、ブラック・ミュージックの真似をしても、やっぱり血には入ってないっていうのが良く解りますよね。」
「言葉と似てますよね。ちゃんと通じる言葉は喋れるけど、ネイティブな発音にはならない。きっと音楽もそういう所があって、僕らのやってるポップスって、だからちょっと日本風に訛ってる面白さもあるんだと思うんですけど、ブラジル人の友達が盆踊り演ってくれると、なんか違うんですよ。」
「まあそりゃあね、外国の方も、能をやったり尺八やったりしてますけど、まあね、訛ってる訳ですよね、あれはね。」
「そう。こっちから見るとね。」
「だから、フリーミュージックとか即興が面白いところは、そういうのが別に、訛ってるも本家もないっていう、全く自由に演っていい訳だから(笑) 」
「たぶんそう、本家があるっていうのが、訛りが解る原因なので、本家とか血とかね。だから、20世紀の後半の新しい音楽の面白いところは、まあ、そういうのはとりあえずいいから……っていう。」
「もう、何人がどう演ってもいいと、いうことですよね(笑)。血とかじゃないからね。だけど、それでも血の部分が出てくるんでしょうね。」
「あの、面白いもんで、かえって色濃く出たりしますよね。」
「その血の部分をぐっと深く掘り下げていくような、ミルフォード・グレイブスみたいな人もいるしね。」
「はいはい。対照的にデレク・ベイリーはそういうの出さないようにしたんだと思うんですけど、でもイギリス人ぽいですよね。」
「っぽいです、出てます。絶対、アメリカ人の音じゃない……」
「ああならないですもんね。だからやっぱり出ちゃうもん、なのかなって。」
「付き合っていけば良いかなって感じですよね」
「ところで今年は、大友さんと言えば、あまちゃんという感じで、どこ行っても、あまちゃんの大友さんって……(笑) 」
「あまちゃんの大友です、って言うようにしてるんですけど(笑)」
「もう開き直ったんですね(笑)。すごいですけども、作業はもう、7月に終わってるんですよね。」
「はい終わりました。坂本さんの方も、八重の桜の方はもう作業は……」
「まだ続いてますね。中島ノブユキ君が、あの、第3期目の40曲を作って。」
「うわー、大変だ……」
「全部で、彼は120曲も作って……1年ですからね。大友さんは何曲くらい……」
「テイクで言うと300テイク越えましたね。曲で200越えてるかな。」
「うわー、すごいな……。」
「あの、でも大河ドラマは結構ちゃんとした曲じゃないですか。僕のはコミカルな、くだらないも含めて300ですから。ちゃんちゃかちゃんちゃん……みたいなジングルっぽいのもあったりするので。でもそれにしても、いっぱい、こんなに作ったことないですね(笑)、今までの人生で。」
「ドラマなんかも、今までやってきてるじゃないですか。圧倒的に多いですよね。半年近く、ほとんど毎日のようにNHKに行ってましたよね(笑)。僕がたまに行くと、居るんで。」
「なんか、ちょっと手伝ってもらったりして、ありがとうございました。助かりました。」
「ちょっと採用されたりして、ちょっと嬉しかったりして。ここ俺んだぜ、ここなんだぜ、みたいな(笑)。」
「でもまだドラマは続いてるんで、ほんと楽しみなんですけど、大友さんが発見ていうか、得たことはありますか。」
「あのー、いつもは映像を撮り終わった後に僕らが音を作ってって……いう感じなんで、コラボレーションではあるんですけど、お互いのコール&レスポンスはなかったんですけど、これはほんとに、役者さんからもコール&レスポンスあるし、宮藤(官九郎)さんもそうだし、編集もそうなんで、なんかちょっとライブに近い感じがあって、朝ドラってそんなにアーティスティックな感じがしてなかったんですけど、やってく作業としては、ふだん以上に面白かったですね。もうほんとに、音楽劇みたいな所もあるので、劇伴の指定とかはさすがにしないんですけど、作った曲に明らかに反応して、こう、劇中曲も劇伴的に効いてくるように、わざと生かしてく、みたいなやり方してったんで、そこはほんとコラボレーションしてる感じがして面白かったですよね。」
「もう、一視聴者として観ていても、ほんとにそれが、こう伝わってくるというか楽しい感じで、音楽の使われ方がこんなにドラマの中に生きている、ドラマに接合されているのは、あんまりないですよね。」
「八重の桜の方は、だから逆に言うとある意味、オーソドックスな作りの中で、坂本さんと中島さんがいろいろやってるという。」
「そうですね。僕はテーマだけやったんですけど、中島くんはほんとに大変で、あのー、さっきコラボレーションっておっしゃってたけど、八重の桜の場合は……っていうか最近の大河ドラマの作り方はそうらしいんですけど、1年を3つに分けて、1期分の40曲を、先に作ってしまうんですって。」
「映像より先に……ですか。なるほど、なんとなく解ります、そのやり方。」
「だから話の筋とか、こういう展開がほしいとか、いろいろリストがあって、後は中島君の想像で、ばさっと撮影前に作って、ドラマは後からそれを使う、みたいな……ちょっと大変だなー……。」
「ちょっと厳しいですよね。普通、映画だとだいたい映像が出来上がったところで、音楽に入ることが多いですけどね。」
「一度、音楽先行で映画作ったら面白いねなんて話は、昔、デビット・リンチとしてた事あるんですけど、でもまだ僕も一度もないですね、それはね。」
「なんかミュージカルとかは、そうですよね。あまちゃんは、劇中曲があるので、ちょっとミュージカルっぽいところがあって、曲先行で作って組み立ててくところもあって、そこがコラボレーション感があったのかな。」
「あとその、Sachiko Mさんのピィーンっていう、鋭いサインウェイブも出てきたりして(笑)、あと大友君の、いつもの、ガキーンみたいなノイズギターも出てましたねー……」
「好き放題、演らせてもらってます(笑)」
「どこで出てくるのかなと思って、待ってたら。」
「結構待ちましたけど、最初のうちは、朝ドラのふりしてたんですけど。ふりっていうか(笑)、これから、もうちょっと展開がいろいろあるので、あんまり言えませんけども。」
「八重の桜はね、八重さんの人生の最も盛上がっているところが先月くらいだったかな、7月で来ちゃったら、あと半年どうすんだろう、っていうね。ちょっと心配だったんですが、僕と岩井俊二さんがメル友で、ものすごい大河オタクなんですよ、岩井さんは。で「心配だ、こんなに早く戦争に突入しちゃっていいのか。」みたいな(笑)、彼も監督だし本も書くひとだから。いろんな心配を勝手にしてたんだけど、そうしたら、最近もう、明治になって服装も変わってきたりとか、そっから八重さんが変身してくんですよね。頑な会津の武家の女性だったのが、まあ、その変化っていうのが、意外とそっちのドラマが面白くて、結構ほっとしてるんですけど。」
「今後の大友さんの活動っていうのは、どんな感じですかね。」
「プロジェクトFUKUSHIMA!もいち段落して、あまちゃんの方も放送してますけど、僕の仕事はいち段落で、年内は、あまちゃんのコンサートとかありますけど、それも年内なんで、来年どうしようかなっていう。劇伴のオファーがいっぱい来るって思ってたんですけど、1本も来てないんですよ(笑)、なんでだろう。」
「なんかもう寂しくて、ぽっかり胸に穴が空いた感じじゃないですか。」
<フェスティバルFUKUSHIMA!2013>
<WORLD HAPPINESS 2013 終了>
「高橋幸宏です。教授、いま僕はバックステージで、教授が羽田空港に着いてこちらに向かっているのを待ってるところです。更に大サプライズになって、更にサプライズがあって、まず間違いなく盛上がるでしょう。今年はYMOがいないということで始まりましたけど、結局は最後どうなったのかは、皆さんが後でお気づきになると思いますが、次回のワールドハピネスは、もうちょっと早めに用意してですね、きちっとした情報……サプライズだけでなく皆さんにお届けしたいと思います。必ずまた来年もお会いしましょう。」
「はい、高橋幸宏さんからのメッセージでした。どうもありがとう。そうなんですよ、僕は前日が四国の高松にいまして、大竹伸朗君の展示のお助けマンというかね、トークとパフォーマンスをしたんですけども。それでこの日、ワールドハピネス当日は、飛び込み、リハなし、サウンドチェックなし、本番みたいな。割と珍しいですよね、リハなし、サウンドチェックなしっていうのはね。(最後の)花火がすごい音で……僕、知らされてなかったんですよね。なんで、ほんとに驚いてしまいまして、身の危険を感じたというかね、ドーンと後ろからきたので怖かったですけども。まあ久しぶりに、懐かしいメンバーでしたよ。小坂(忠)さんなんか、会うのは30年振りくらいじゃないかな(笑)。小原(礼)や(鈴木)茂は、もう少し……って言ってもね、たぶん20年振りくらいだと思うんだけど(笑)。おそ松くんズ……なんていうか日本の、こう、ポップ史の歴史を担ってきた面々があそこに居たという、かなり豪華なメンバーでしたよね。」
WORLD HAPPINESS 2013出演者の皆さんからメッセージも届いています。
「KIRINJIの堀込高樹です。今日はほんとに暑かったですね。KIRINJIは今回、才能のある方々に参加していただいてメンバーを一新しまして。坂本さんが大事になさってるコトリンゴさんに参加していただくことになりまして、彼女のキャリアに傷が付かないようにかっこいいKIRINJIをやりたいと思います。」
「salyu × salyuです。残暑お見舞い申しあげます。様々な素晴らしいアーティストの皆さんを演奏を聴きながら、自分たちもそこに参加させて頂けて、とってもとっても光栄です。暑い日が続きますが、どうかどうか、皆さん、そして坂本さん、素敵な夏をお過ごし下さい。」
「あ、あ、あ、縄文土器、弥生土器、どっちが好きですか。はい、台本通りに読みました、レキシです。もうほんと暑くて、汗だくだったんですけど、まあなんて言っても初出場なのにトリ前という出演順で、MCでも言いましたが「俺、つぶされるんだなー」って思いまして、その覚悟で演りまして、はい。終わってからですね、坂本さんに「キーボード上手いね」って言われて、あー……これ本当に潰されるんだなって、思いましたけども(笑)。でもそれを糧に今後も頑張ってやっていきたいので、ひとつ、潰さないで!(笑) よろしくお願いします。どっちも土器、これも台本通り。レキシでした。」
「堀込くん、Salyuさん、レキシ。メッセージどうもありがとう。Salyuさんからは残暑お見舞いを頂いちゃいましたけど、この日はほんとに暑かったのでね。レキシのライブは僕も観てましたけど、ほんとキーボード上手いんですよ、びっくりしました。レキシの池田君ね、早いうちに潰しておこうと思ってますけど。あと、堀込くん。コトリンゴをよろしくお願いします。潰さないでね、ほんと傷つけないようにしてくださいよね(笑)。」
<第70回ヴェネチア国際映画祭>
そして今回のレディオ・サカモトでは、イタリア・ミラノ在住の須藤かぐやさんによる「第70回ベネチア国際映画祭」録って出しレポートもお届けしました。坂本龍一さんはこの映画祭で、コンペティション部門の審査員を務めています。
坂本さんは審査員としては、どういう視点で作品を評価してるんでしょうか。
「専門的に言うとしたら、音楽に注意して観るわけですけど、10代の時から映画好きでもあるので、一映画ファンとしてという視点もありますし。でも専門的な見方っていうのは、あるようでないようで……っていうのはね、ベルトリッチもオープニングの記者会見のときに言ってましたけども「どういう映画を期待してますか」っていう質問があって、とにかく自分たちが驚くような、まだ観たことない映画を観たい。っていうことだけなんですよね。で、ということは映画の文法なんてあるようでないんで、もしあるとしたら文法を裏切るようなものが面白いわけで、そういうのを観たいんですね。音楽に関してもそうです、映画は100年の歴史があるから、それなりの文法らしきものがあると言えばあるけど、そんなものに従っているからいい映画音楽とは言えないのね。何でもいいんですよ。前例のないことをどんどんやっていただいて良いわけで。いい映画かどうか、みんなそれぞれ判断する訳で。」
<School Music Revival Live 2013>
2013年8月4日に行われた「School Music Revival Live」の模様もお届けしました。
「今年のこのライブは、宮城県の名取市民文化会館で開催しました。去年はね、仙台だったんですけども。市内には、震災の時、大きな被害があった仙台空港ね、テレビで皆さん観ましたよね、あの仙台空港もあります。もちろん、現在は、全面的に復旧していますけども、この「School Music Revival Live」は、東日本大震災で被災した、岩手・宮城・福島の学校1,800校以上の、壊れた楽器の調査、修復などを目的としたコンサートです。修復された楽器を、みんな持ち寄って、子どもたちが自分たちの音楽を披露するというライブですね。実は開催当日の、まあ、本番直前のリハーサル中にですね、地震がまた来まして、結構怖かったです。震源が近かったので、ちょっと聴いたことのない地響きというか、揺れる前に、もの凄いごおっていう音が下からしてきて、地下鉄でも通っているのかなと思ったぐらいなんですけど、そしたらすぐに揺れてきたというね。聴いたことない音でしたね、怖かったです。その地震も、例の東日本大震災の余震と言われていますけども、まだまだね、復興は遠いですよ。」
「去年、このライブの第一回目をやったのですけど、ものすごく去年は、出演バンドといいますか、ユニットが多くてね、正直言ってちょっと疲れました。ちゃんと真剣に聴くからね。今回は半分くらいで、福島から太鼓部が出てくれたりとか、軽音楽部と太鼓部と琴部っていうのかな、が合体して、この日のために演ってくれたりとかね、すごく、前向きの、ほんとポジティブなパワーに満ちたライブでした。NHKの「あまちゃん」のモデルになっている岩手県の久慈高校の参加もあって、演った曲は当然、あまちゃんのテーマと「潮騒のメモリー」でした(笑)。潮騒のメモリーはちゃんと吹奏楽用にアレンジしてあって、とても良かったですけど。どの学校の演奏も、ほんとに力強くて素晴らしかったんですけど、中でもとてもユニークだった学校2校の演奏をオンエアします。」
・帝京安積高等学校 (福島県郡山市) - 和太鼓部「帝京音頭 」
・仙台育英学園高等学校(宮城県仙台市) - 軽音楽同好会 Scratch「帰ってこいよ Scratchバージョン」
オーディション・コーナーで紹介した作品はこのサイトでも試聴できます。またコーナーは、全体を世界へ向けてポッドキャスティングでインターネット配信しています。すでに著作権管理団体に登録している作品の応募は受け付けられませんので、オーディションに応募される方はご注意下さい。
※オーディション応募作品をじっくりと聴けるポッドキャスティングは近々このサイトにUPされます。お楽しみに! |
|
RADIO SAKAMOTOオーディションに御応募頂いたデモ作品にまつわる個人情報の管理、作品の管理は、J-WAVEのプライバシー・ポリシーに準じております。詳細は、こちらを御確認ください。 |
|
■第70回ヴェネツィア国際映画祭の会場でゲットした、教授のサイン入りトートバック、 もしくは、Tシャツに、映画祭のパンフレットをセットにして、2名の方にプレゼント!
今回は、第70回ヴェネツィア国際映画祭の会場でゲットした、教授のサイン入りトートバック、もしくは、Tシャツに、映画祭のパンフレットをセットにして、2名の方にプレゼントします。
番組の感想やメッセージも、ぜひお書き添えのうえ、コチラからご応募ください(教授と番組スタッフ一同、楽しみにさせていただいてます)。当選者の発表は、発送をもって代えさせていただきます。
|
|
|