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<やっぱり機材を押さえましたね、悲しい性で。>

「こんばんは、坂本龍一です。2ヶ月ぶりのレディオ・サカモトですけど、今回はニューヨークのプライベートスタジオからお届けします。」

「前回のオンエアが、3月6日だったんですけれど、この2ヶ月の間、大変なことになりまして。3月11日の東日本大震災、ぼくはちょうど仕事で東京のスタジオに居て、その日が、ある仕事の初日だったんです。ミュージシャンが到着するのを待っていたんですけど、突然きまして……、やっぱり機材を押さえましたね、手で。悲しい性で。ずいぶん揺れていました。背の低いビルだったので壊れませんでしたけど、結局、そのままレコーディングを行ないまして、それから2週間ぐらい東京で仕事していて、それが終わったんで、ニューヨークに帰ってきました」

<映画『一命』の音楽は力が入ってます。>

「その3月11日から始まったレコーディングというのが、市川海老蔵さん主演の映画『一命』のサントラの仕事でした。監督は、三池崇史さん。1962年に作られた『切腹』という映画のリメイクなんですが、たぶん、これは、世界で初めての3Dの時代劇で (笑)三池さんによれば、「まあ、3Dの時代劇があってもいいじゃないか」 と、いう軽い気持ちで挑戦なさったそうですけどね」

「この映画、重たい映画でね、僕自身もそうだったんですけど、映画を観ていただけると、海老蔵さんの、あの例の、事件というのかな。この映画を観るまでは、まあ、皆さんと同じように笑ったりしてたんですけど、これ観たら、解ります。あ、しょうがないよな、っていう……。あの事件がね、撮影が終わった2日後だったんですって。でね、こんな映画の役を演ってしまったらね、通常の人間ならば、一ヶ月くらいは戻ってこれないですよ。それくらい重たい。そして、はっきり言って、市川海老蔵さん、これはもう凄いです。ちょっと褒め過ぎになっちゃうかもしれないけど、若かりし頃の三船敏郎を彷彿とさせるぐらいに凄い」

「でまあ、音楽のほうも、そういう訳で、しかもレコーディング初日が3月11日でしたから、随分と力が入っちゃって。なぜこの『一命』の音楽をやることになったかというと、『戦場のメリークリスマス』や『ラスト・エンペラー』の、プロデューサーだったジェレミー・トーマスが、(監督の) 三池さんのことをすごく買っていて『一命』のプロデューサーのひとりにもなっているんですが、ジェレミーから、もう命令のように「龍一、おまえ、これをやれ!」と (笑) すごく短いメールが来まして、ジェレミーがそこまで言うんだったらやろうかということで……。さすがに目が高いというか、これはやるべきだったな、と僕も思います」

■映画『一命』オフィシャルサイト
http://www.ichimei.jp/

<鎮魂をテーマに、30分間に込められた音たち>

4月9日にニューヨークで行なわれた、東日本大震災のチャリティ・コンサート「Japan Society presents CONCERT FOR JAPAN」に参加した、教授。そこでのエピソード。

「30分間という短いステージだったんですけど、鎮魂の意味を込めて、ニューヨークでダンス・舞踏をやっているヤマグチ・マヨさん、という方を紹介していただいて。この方はもともと、能をやられていた方なので、彼女といっしょに能の演目である『江口』というね、鎮魂にふさわしい演目を、ほんの一部ですけど、舞って、それから謡もしてもらった。僕はピアノ即興。そして、もうひとり、アン・アキコ・マイヤーズさん。カリフォルニア出身の日系アメリカ人のバイオリニストなんですが、実は僕、彼女のアルバムが好きで、単なるいちファンとして、よく聴いていたんですけど、偶然、僕の方に連絡があって「日系人なので、ぜひ何かしたい」と。だったら、4月9日に演るから、いっしょに弾かない?って誘ったんですね」

「実はこの30分の演奏の中身が、すごく濃くてね (笑) まず能をやったでしょ。その下地に、ときどきノイズがのってるんですけど、それが、大友良英くんに "こういうことやるから何か音を送ってよ" ってメールしたら、備長炭かな、でノイズを出している音を送ってくれて。15分くらい、すらーっと、ひいてあるんですね。それから、英語で詩の朗読が入ってくるんですけど、これは、デヴィッド・シルヴィアンにメールして、"なんか送ってよ" って。そしたら、ロシアの映画監督のアンドレイ・タルコフスキーのお父さんが有名な詩人なの (アルセニー・タルコフスキー)。その詩の何編かを朗読した音ファイルを送ってきてくれた。それをいくつか流して、すると、また別の音楽がはじまる。これは、クリスチャン・フェネスにメールして、送ってよって (笑) そしたら10分くらいの音を送ってきてくれたんで、それが出てくる、と。それがぜんぶ終わって、アンさんとのデュエットを演るっていうね。実はかなり濃い、30分になっておるんですけどね」

5月3日・4日に六本木ヒルズアリーナで行われるフリーライブ・イベント "TOKYO M.A.P.S" 今年のオーガナイザーは、高橋幸宏さん。もともとチャリティーのイベントなのですが、4日のチャリティバザーでは、教授の私物も出品されます。
http://www.tokyomaps.jp/

そして5月4日 (水) 9:00-17:55 オンエアの、J-WAVE GOLDEN WEEK SPECIAL"EARTH SYMPHONY" にも教授の出演が決まっています。
https://www.j-wave.co.jp/holiday/20110504/

<HoSoNoVa=細野場(ホソノバ)>

RADIO SAKAMOTO の中でオンエアする番組内番組。今回は、ニュー・アルバム『HoSoNoVa』をリリースしたばかりの、細野晴臣さんによる "RADIO HoSoNo"。そして、Cornelius プロデュースのニュー・アルバム『s(o)un(d)beams』をリリースしたSalyuさんによる "RADIO Salyu" をお届けしました。Salyuさんのアルバムは、教授も絶賛。

震災以降、音楽から遠ざかっていて、最近ようやく音楽が聴けるようになったという細野さん。ニュー・アルバム『HoSoNoVa』のジャケット写真は、細野さんのMacのカメラで撮影したそうです。ちなみに、アルバムのタイトル『HoSoNoVa』── ホソノバは "ボサノヴァ" にひっ掛けているようで、実はそうではなくて、細野さんの場所「細野場」ということだそうです。

細野さんから教授へのメッセージ
「えー、前からずっと言ってますけど、4年後の都知事選に立候補して下さい。………えーっと (笑) いやでしょ、はい、解りました。応援演説は、行きたいと思いますけどね、まあ。」
「いやですよ。前からなんか、そういうこと言ってますけど (笑) なんですか。ぜんぜん政治には興味ないですから(笑) ふっふっ、その気はないです。」

小山田圭吾さんからSalyuにメッセージ
「Salyuは、高い音から低い音まで、ぜんぶきれいに響かせることができるし、もともと持っている声自体もすごくいいんだけど、それをちゃんとトレーニングして、磨いているっていう。そういう人は、実はあんまり居ないんじゃないかな。僕なんか、ほんとについてけないくらい、すごく真面目でストイックなので、もうちょっと、ユルい感じも、これからいいんじゃないかなと思います(笑) 」

■細野晴臣オフィシャルサイト
http://www.hosonoharuomi.com/

■salyu × salyu オフィシャルサイト
http://www.salyu.jp/salyuxsalyu/

<オーディション総評『3.11以降、評価の軸が変わりますよね>

「今回やっぱり、オーディション作品を聴いていてね、3.11 以降って、音楽を聴くにしても、なにかこう、評価の軸みたいなのが変わりますよね。そりゃ、しょうがないよね。ポップスだけに限らず、クラシックでもジャズでもヒップホップでも、そうだと思うけど。だから今回の作品を聴いていて、たぶん、3.11前だったら、これOKだなっていうようなものも、聴き方が変わっちゃっていて。単に、その、厳しくなってる、っていう訳ではないんだけど。前回のオーディションとは聴き方が変わってますよね。」

そして、番組内で紹介した、番組オーディション卒業生でもある、トベタ・バジュンさんの呼びかけで制作された『東北地方太平洋沖地震チャリティーアルバム』は、iTunes や Amazon で配信予定。
http://www.bajune.com/

このオーディション・コーナーに、新たに『フィールドレコーディング部門』が設けられました。小川のせせらぎ、鳥のさえずり、雨音などの自然音から、街の喧騒、機械音などの人工的な音まで、すべてをフィールドに生録音したものを送ってきてください。

オーディション・コーナーで紹介した作品はこのサイトでも試聴できます。またコーナーは、全体を世界へ向けてポッドキャスティングでインターネット配信しています。すでに著作権管理団体に登録している作品の応募は受け付けられませんので、オーディションに応募される方はご注意下さい。

※オーディション応募作品をじっくりと聴けるポッドキャスティングは近々このサイトにUPされます。お楽しみに!

RADIO SAKAMOTOオーディションに御応募頂いたデモ作品にまつわる個人情報の管理、作品の管理は、J-WAVEのプライバシー・ポリシーに準じております。詳細は、こちらを御確認ください。

■坂本龍一 オールタイムプレミアグッズを2名様にプレゼント!

RADIO SAKAMOTO からのプレゼントです。
今回は、坂本龍一 オールタイムプレミアグッズ (いまでは入手することのできないツアーパンフレット、Tシャツ、写真集などの詰め合わせ) を2名の方にプレゼントします。番組の感想やメッセージも、ぜひお書き添えのうえ、コチラからご応募ください (教授と番組スタッフ一同、楽しみにさせていただいてます)。当選者の発表は、発送をもって代えさせていただきます。