<"Studio Session" U-zhaan+蓮沼執太>
「まずは最初のゲストをお迎えします。蓮沼執太君です」
「こんばんは、蓮沼執太です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。執太…君は、東京都出身」
「(笑) はい、そうですよ。東京生まれですね」
「最近はJ-WAVEの音楽も、だいぶ手がけてるみたいですけど」
「うん、あのー、平日に2時からやってるACOUSTIC COUNTYっていう番組があって、それの音楽をジングルとかも含めて全部やってて」
「へぇー、そうなんだ。えっと去年は、ACCの招聘でニューヨークとかヨーロッパとかに滞在されてたっていう」
「そうですね。ACC(アジアン・カルチュラル・カウンシル)っていう、アーティストをサポートするみたいな組織があって、その招聘でニューヨークに半年行って、その後アメリカ回って、ヨーロッパ回ってとか」
「そのニューヨーク行ってるとき、ちょっと僕も遊びに行って、泊めてもらったり。いっしょにインドカレーを作ったりして。何で作ったんだろう、食べに行けばいいのにね」
「食べに行った方が安かったんだよね」
「スパイスを一から仕入れるっていう」
「そうそうそう、リトルインディアがあるんだよね。で、そこでスパイス屋さんに行って買ったね。U-zhaan、ベンガル語で喋ってたもんね」
「店主がベンガル人だったからかな。ベンガル語で喋り始めた瞬間に、どんどん食材が貰えるようになったよね」
「そうそうそうそう(笑)」
「これも持ってけ、あれも持ってけっていう。コリアンダー買いたいんだけど……持ってけ!みたいな。甘いお菓子とかもどんちゃらくれたし」
「くれたくれた。粋なニューヨークだったな、あそこは」
「ねぇ。やっぱ現地の言葉を喋るっていうのは、大事ですね……現地じゃないんだけどね、全然(笑) 」
「教授も、もちろんニューヨークに居るから、ニューヨークで教授に会ったりとかは」
「うん、ご飯いっしょに行ったりとか、お話ししたりとか」
「あと、坂本……美雨さんのアルバムも、執太は」
「そう、あのー『Waving Flags』っていう美雨さんの一番新しいオリジナルアルバムですかね」
「うん。去年の春ぐらいに出た……すごいいいアルバムですよね、あれね」
「U-zhaanも1曲、参加してもらって」
「それのプロデュースを蓮沼執太が手がけている、と」
「はい。ぜひよかったら聴いてみてください」
「という訳で、今日はなぜかセッションを、スタジオで演ろうっていう話を番組スタッフさんからいただいて。ただ今日は六本木けやき坂スタジオっていうことで」
「そうなんですよね」
「このスタジオはセッションできる隙間がないんですよね、あまりの狭さに機材を置く場所がないので、セッションしてきたっていう(笑)」
「そうね。でもこのセッションも、割と何も決めずに演ってたから、ライブ感はあるよね」
「何も決まってなかったからね。1曲だけ決まってた執太の曲っていう、執太が歌うやつを演ろうとしたら大失敗して(笑)、もう決めずに演ろうってことになったんですけど」
「執太は、今年の後半はどんな活動をしていくっていう感じなんですか」
「そうですね、ソロライブありますよ。僕、アンサンブルとかフィルとかね、やってるんですけど」
「そう、"蓮沼執太" 名義でいっぱい、いろんな人と演奏するっていうのが執太のライブスタイルだったけど、6月に完全ソロを初めて演るんでしょう。チケット争奪戦になるよ」
「いやいやいや、そんな事ないと思いますよ」
「いや、みんな見たいでしょ、いっぱいいっぱいになっていく執太の姿を」
「そういうことになるよね(笑)」
<アート・リンゼイさんから届いたメッセージ>
「東京に戻ってこれて、とっても嬉しいです。6月9日・10日には、またブルーノート東京でLIVEをしますよ。今度はレストレス・サンバという別のプロジェクトで、7弦ギタリストのルイス・フィリペ・デ・リマ、そしてパーカッションにマリヴァウド・パイムとで、今までと違うスタイルでのサンバをする予定です。そして、ふたりの素晴らしいゲストも来てくれます。まずは小山田圭吾さん、彼には前回と違う役割を担ってもらおうと思っています。さらにジム・オルーク。彼とは今までいっしょに演ったことはなかったけど、ずっと演りたいと思っていました。そうそう、あとはBuffalo Daughterの大野由美子さんともいっしょにやるよね。夏の日本も楽しみだし、日本での食事も楽しみにしています。他のどこよりも日本での食事は特別な経験です、たとえ誰が作ったとしてもね。坂本さん、ラジオに呼んでくれてありがとう。あなたとの仕事は、いつも素晴らしいものばかりです。」
<リマスター盤『音楽図鑑』『戦場のメリークリスマス』>
「このパートは、オノ セイゲンが担当します。國崎さん、よろしくお願いしますー。なんと僕がMC側の立場なんですね。逆ですよね。」
「そうですね、普通、逆ですね。はい、國崎(晋)と申します。」
「この番組は、こう、仲間たちがリレー式に番組を切り盛りしているということで、なぜか、僕がこういう場所に来ていて」
「セイゲンさんは、なぜここに登場されているのかと言いますと、『音楽図鑑』であるとか『戦場のメリークリスマス』、最近では坂本龍一さんのアルバムのリマスター作業をやってらっしゃるということで、呼ばれているわけですが」
「責任ある立場ですね」
「このリマスターを、完結にどんな作業かを、セイゲンさん、説明していただけますか」
「はい。30〜35年前、CDが出始めた頃に、最近また流行っているアナログ・LPレコードが出来て、A面の1曲目は何にする、2曲目は何にする……曲順に並べたりしてアルバムというのが出来てですね、当時出来上がっているものが一度、あると。80年代っていうのはCDが出始めたばっかりだったので、当時の最先端のデジタルのメディアとしてのCDだったんですけど、今と比べて、例えば携帯電話なんかは当時は無かったわけですけど、デジタルの技術がすごく進んで……映像なんかもね、ハイビジョンになって4Kになって、今やVHSとか見ないと思うんですけどね。だんだんメディアが変わってきた事によって、そのメディアに一番ふさわしいというか、メディアがせっかくここまで器が大きいんだから、一杯いっぱい使おうよ、というところで、アナログにしても、元のデジタルのものにしても、現在できる最高の技術のところまで持ってきて、それでお聴きいただこうと。というのがリマスタリングの作業。何やるかって言うと、細かいところまで聴こえるようにするっていうことですね。何かを変えたり足したりするんではなくて」
「これ最近、流行の "ハイレゾ" って言葉がありますけど、それはもうまさに "器" そのもの、聴かせるメディアが変わるんですけれども、CDのリマスタリングっていうのは、CDという器は変わらないんですけども、それでも30年ぐらい前と比べると、そこの器に落とし込む技術が進んでいて良い音になっていると……そう考えればいいですか?」
「そうですね。一番勘違いしやすいところっていうのは、良い音、いい音っていうのがね、ハイレゾだからいい音……というのはまずないんですね。ハイレゾだと何が違うかって言うと、細かいところまで入ると。てことは、元の波形がアナログの物でもなんでも、小さなところまで全部入る。でもともとCDってうのは、16bit/44.1kHzという、方眼紙で言うと粗い目のマス目が見えるようなものだったのが、ハイレゾになって24bit/96kHzとか、DSDになってくるとそれがどんどん目が細かくなっていって、砂の粒のようにというか、ナノテクの世界まで行ってしまって見えないところまでいく、と。最後、ナノテクのところの一粒、二粒になると、電子が一個流れた/流れない……なんてところまでいくと、原理的にはアナログと同じことになるので、ハイレゾリューションになると、そのクオリティまで元の音の通りできてしまうと。当時、デジタルでレコーディングされてるものとか、アナログでもテープヒスなんかあるんですけど、それを1回ですね、最近の技術では、一番大きなデータ……僕の場合だとDSDの5.6MHzというデータに一度引き延ばします。これはね、写真なんかで考えてもらうと解るんですけど、昔の携帯電話だと小さな写真で、例えば何かポスター作るにしてもフライヤー作るにしても、もっと大きいデータありませんか。と言われたりね……」
「携帯電話で撮った写真だと解像度が低い、ってやつですよね」
「そうですね。それに対して、いわゆるデジタル一眼とか最近の携帯電話だと大きなデータの写真が撮れますね。で、大きなデータから小さなデータを焼いたりする、印刷したりするときに、大きいデータから小さい印刷物を作る方が綺麗にできるんですね。同じ大きさのものから1:1で作ると、まったく変わらなければ伝わるんですけど、そこでちょっとでもコントラストを少し変えようかなとかですね……音で言うとピアニッシモのところをもう少し綺麗に聴きたいなーなんていうことをちょっとでもいじると、崩れてしまうんですけど、それが元もデータが大きいと、崩れないように扱える」
「セイゲンさんの作業もまずは大きいデータで、大元のマスターテープを大きいデータ……そこで処理をしてからCDやハイレゾなど様々なメディアに向けて落とし込んでいると、いうことですね」
「で、『音楽図鑑』と『戦場のメリークリスマス』に関しては、今回マスタリングしてる元はアナログテープなので、アナログテープはもう無限大のレゾリューションがあるんですけど、とはいえカセットなんかでも解るように "シーッ" ていうこのヒスノイズがあって、そのヒスノイズの更に向こう側にも音があったりするので、そこまでが見えるようにもできるという」
「実際それで当時のマスターテープをリマスタリング作業のときに、セイゲンさんは聴かれたわけですけども、1984年の作品……で、いま聴いてみて、いかがでしいたか。この『音楽図鑑』というアルバムは」
「実はこれ、録音の現場にも居て、レコーディングエンジニアとしてもクレジットされていましてね。で、それはどうだったかと言うと、よくできてるなと思いましたね、まずね。よくあの時代の録音で、こんな……ヤング坂本龍一が居て、ヤングオノ セイゲンがいて(笑)、全然いまだからこそ俯瞰で見れるんですけど、23歳とかでこんな録音する奴がいたら雇いたいですね、っていう正直な感想ですね。これのレコーディングっていうのがね、特に今回、品切れになるくらい初回どーんと売れたのは、やっぱり丁寧に作った作品て強いなっていう事の裏返しだと思うんですけど。ほんとうにね、手作業でね……今回、DISC2の方に、DISC1(もともと発表されていたテイク)の作ってる途中のものだったり、最終的に『音楽図鑑』っていう隙もなにもないアルバムになる前の過程があったりしてるので、その過程を見るためにも、今回のDISC2 とDISC1の聴き比べとか、84年の音っていうのは、こんな緻密に作ってあるのか……音の重ね方とか、音楽の制作っていう、歴史的にもすごいですね。これは、まず聴いたときに、全部の過程、出してほしいな……実は今まだ2枚だけなんですけど、アルバム10枚分くらいの素材がありましてね。もの凄い数があって。最後はもう僕、何がなんだか。この3年間、ずっとアーカイブしたり聴き比べたりとか、いろんな人に聴き比べてもらって、これはどのテイクなの?時代考証のような作業が始まって、どっちのテイクが先なのか、これの後に何をしたのか、とかね。そんな一冊の本ができてしまうくらいで。もちろんジャズとかクラシックみたいに、その場でポンと出来てくる音楽もあるとすると、まあ、テンポを決めてスケッチから始まって、こういう作り方の極めつけですね」
<坂本さんが一番大事にするのは「音色」>
「オノ セイゲンさんにリマスターの話を伺いましたけれども、ここ最近のリマスタリングって、どっちかって言うとボリュームを大きくする・音圧を上げる、いろんな他の曲と合わせるために、どかーんとした音を作る、というのがリマスターだと思われている節があるんですが」
「リマスターすると音が大きくなってる、というのが皆さんの印象ですよね。これは特に、80年代っていうのは音圧を上げるという事がアナログでしかできなかったのが、その後、デジタルの段階で、バンドコンプレッションとか使うようになって、2000年前後にかけてですね、どんどんボリューム競争が激しくなっていって」
「バンドっていうのは、周波数の帯域のことですよね」
「低域、中域、高域をね、それぞれ分割して一杯いっぱいまで上げるとうかね。それぞれ上げられるだけ上げるというですね、ちょっと非常に、音楽を冒涜してるんじゃないかというような(苦笑)」
「先ほど、"器" という話がありましたけど、器を目一杯、使うようなやり方ですか」
「小さいところをぜんぶなくしてしまう、真っ黒に塗ってしまう状態……休符がない状態。ピアニッシモはメゾフォルテまで上げて、フォルティッシモはフォルティッシモのままなんですけど、曲がこう、メーターがふっと下がるのは曲が終わったときだけっていうね。波形ってのにすると、カマボコ型とかですね、ソーセージとか言われるんですけど」
「ノリって言いますよね」
「言いますよね。(波形の形が)四角いそのままペターッとしてる状態で、そういうような音づくりというのが、ミキシングでも流行ったし、マスタリングでそういう風にしてもらえるものだというものがあったりして、そうするともう、それ以上の音量は入らないんですね。で、音量ってね、音量が大きい方が人間て刺激が強くて惹かれるんですね。ボリュームが大きい方が盛上がっているように一瞬聴こえる。これ、音だけじゃなくて、光がぎらっと光ってる方がテレビなんかでも明るい方が派手に見えてる方がいいように見えたりですね。味なんかでも濃い方が刺激があるような感じがして」
「何でも濃かったり眩しかったり音が大きかったりすると派手で、良い物のように受け取れてしまうと」
「刺激が強い方に惹かれてしまうんですね、人間てね。でもこれは、そういう味のものをずっと食べ続けていたりとか、ギラギラの画面の前にずっと居るとと疲れたりですね。どんなものでもそうなんですけど、音楽っていうものは本当は、休符とか、空間とか、音楽で一番大事なのは音色なんですけど、音色が全く変ってしまうんですね……全部がぎとぎとテリヤキソースみたいな音になるんですね。それが刺激が強いものだから、前のアルバムとかひとつ隣のレコードとか、試聴機とかiPadとかで聴いたときに、刺激が強い方をかけはじめたくなる」
「坂本さん自身はそういう、派手なぎとぎとした音っていうのは好きじゃない。っていう意向をセイゲンさんの方には伝えられてたんですか」
「いや、あのーですね、テープを預かってやり始めたときに、前のいくつかボリュームが大きいものもあったんですけど、それは元のテープとは随分かけ離れた音楽のニュアンスになっていて、これは元のミックスはこういう風に聴いていたはずじゃないな。っていうのはまず作ったんですね。マスターテープに忠実にと言いますか、デフォルメしない程度に……ミキシングルームの部屋の特性も含んだぐらのもので、本来、このぐらいで聴かれていたはず、っていうのを作りまして。それ以上は、僕のルールの中でデフォルメしないっていうのをひとつ作ったんですね。で、坂本さんの場合は、デフォルメしない方を取ってくれた。一番ハイレゾリューションのDSDを、単にダウンコンバートしただけのCDっていうのが今回の『音楽図鑑』と『戦場のメリークリスマス』……わざと大きくする必要ないんですよね。元の音楽のスタイル、特に音色……坂本さんはやっぱり、一番大事にするのは音色ですね」
「最後にサウンド&レコーディング・マガジンのことを。新しくですね、判型を変えました。ちょうど発売になっているんですけれども、いままではA4サイズだったんですけど、B5サイズですね。ちょっとコンパクトにして、まあ、持ちやすく、読みやすく。iPad盤というのを去年おととしから初めてるんですけど、そことのサイズの差がちょっとあり過ぎたので、逆にiPadに近づけて、誌面を作りました。それに合わせて、iPhone版も開始しましたので。バックナンバーもいまちょっとセールをしておりますので、坂本龍一さんにしていただいていた連載の号もお安く手に入ります。チャンスだと思いますので、よろしくお願いします。」
対談の全編は、YouTube J-WAVE CHANNEL にてご視聴頂けます。
<オーディション・コーナー (U-zhaan+長嶋りかこ)>
「4ヶ月ぶりに長嶋りかこさんとですけど、いっつも緊張するんですよね。みんな、ほんとは教授に聴いてほしいと思って送ってきてるであろうデモテープを、僕と長嶋さんで聴いて、感想なんて答えていいんだろうかと思いながら、頑張って聴いています。今回は応募作が多かったです。」
オーディション・コーナーで紹介した作品はこのサイトでも試聴できます。またコーナーは、全体を世界へ向けてポッドキャスティングでインターネット配信しています。すでに著作権管理団体に登録している作品の応募は受け付けられませんので、オーディションに応募される方はご注意下さい。
※オーディション応募作品をじっくりと聴けるポッドキャスティングは近々このサイトにUPされます。お楽しみに! |
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今回のプレゼントは……
「坂本龍一 Playing the Orchestra 2014(Blu-ray / DVD)」リリース記念のポストカード5枚組
「大貫妙子 40th ANNIVERSARY LIVE (Blu-Ray / DVD)」リリース記念のサイン入りポストカード
それぞれ5名の方にプレゼントします。
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