RADIO SAKAMOTO

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ARCHIVE:100502


<坂本龍一×大竹伸朗 「昭和裏歌謡特集」>

「坂本龍一です。今回のRADIO SAKAMOTOは、芸術家の大竹伸朗さんと昭和裏歌謡を聴きながら、"だめ〜〜〜〜〜ん" と題して、ダラダラとお送りしたUSTREAMの中継の模様を再編集してお届けしました。まあ、こういうね、新しい試みを今後もやっていきたいと思っていますけどね。放送と通信の違いなんかも明るみになって、なかなか面白かったんですけども。ダラダラやるのって、意外と難しいですねえ (笑) なんだろうねぇ、ちょっと、修業して出直してきます (笑) 次回の放送は、7月4日放送予定です。」

<当時のLPは水増し的なものだった>

「坂本さんの方が僕よりもちょい年上なんですけど」
「そうですね」
「俺がこういった音楽の影響っていうのは、8歳上の兄貴がいるんですよ」
「あ、そうなんだ〜」
「この兄貴から、とにかく、絵から音楽から、もう叩き込まれたというか」
「英才教育されたんだ (笑) 」
「幼稚園のときに兄貴が中学生で、月に3枚はシングル盤を買ってくるんですよ、ヒットチャート調べて。俺はレコード屋さんについていく訳ですよね。それこそ、ビートルズが世界的にブレイクする直前のね…」
「ロックンロールとか、ポール・アンカとか、コニー・フランシスとかの日本盤の…」
「そういうのを、漣健児 (さざなみけんじ) さんでしたっけ。が、タイムリーに日本語に置き換えていって」

「兄貴の年代だと「LP興味ねえ」っつう訳。あの当時って、LPっていうのはやっぱこう、"水増し" 的なものであって (笑) 余計な民謡とかをアレンジして入ってたりとか、LPをA面、B面を通して聴くっていう、そういうんじゃなかったんですよね」
「そういう聴き方じゃなかったんですね」
「で、シングル盤の、A面きたらB面こうこうくるっていうね、ある種の、俳句的なね、「あ、そう来ましたか」っていうね (笑)」
「上の句、下の句なんですよね。曲も短いし (笑) 」
「だから、ビートルズの「ヘイ・ジュード」がヒットしたとき…」
「長かったですね! (爆笑) 」
「あの長さはね、衝撃でしたよね (笑)」

<ピョンヤン学生芸術団が歌う「ドラえもん」>

「坂本さんね、俺は外国人が日本語で歌う歌が好きなんですよ」
「はいはい…」
「うろ覚えの話なんですけど、一時期、外国人が日本語で歌ってるもので、例えば欧陽菲菲なんかもそうなんだけど、歌の意味、ほとんど分かってなかったって言うんですよね」
「分かってなかったんだ (笑)」
「うん、それがいいんだと思うんですよね」
「音だけで演ってたんだ」
「あれやっぱ、意味を調べて演っちゃうとね、あのニュアンスは出ないんですよ」
「なるほど」
「それの典型でね、今日持ってきた Astrud Gilberto「パリのめぐり逢い」」
「これは完全に分かってないですよね」
「とにかく日本語が追いつかないんですよ」
「全くなってないですもんね (笑) 」
「いちばん追いついてないやつを持ってきたんですよ (笑)」

「あと、大竹さんが持ってきた怪しいカセットテープ…」
「東南アジアらしき、海賊カセットみたいなものなんですが」
「これは…ピョンヤン?…学生芸術団…」
「これね、ドラえもんのうた、みたいですね」
「マジで? (笑)」
「マジで (笑)」
「これは聴きたいですね」
「(♪聴きながら) …うーん、上手いんですよ〜」
「心なしかハリがあるというか、行進曲調な (笑)」
「やっぱドラえもんは凄いんすね、世界でも」
「凄いですよね、イランとかでもウケてるでしょ…」
「なんか声が楽器みたいですよね」
「いや、すごい厳しい芸術学院みたいなところの生徒さんというか」
「優秀な人たちなんでしょうね」
「だって上手いですもん。気持ちは掴んでるよね」
「「圭子の夢は夜開く」もありますよ」
「カセットでしょ (笑)」
「これも意味分かってない感じがいいんですよね」
「聴きたいなあ (笑)」
「(♪聴きながら) もうなんか、爛れた感じがいいでしょ」
「ちゃんと精神を掴み取ってますね」
「うん」
「ちゃんとアレンジしてる、上手いねえ。フィリピン (のバンド) かなあ… (笑) だって子どものとき、あそこのディスコはフィリピン・バンドが入ってると、格が上だったんですよね」

<ラストエンペラーのボツテイク盤を出そうかな>

「東宝の怪獣映画とかね、必ず外国人が出てましたよね」
「映画『モスラ』の曲って確か、古関裕而 (こせきゆうじ) さんでしたっけ」
「♪モスラーや、モスラーってやつね。いい曲ですよね」
「坂本さん、知ってます?あれの素材バージョンっていうのがあるんですよ、9分間の」
「へぇ〜。サントラの素材みたいなやつね」
「最終盤には使われなかったっていう」
「それいいな。僕もそれ出そうかな」
「それ面白いですよ」
「ボツ…ボツテイク版みたいな」
「結構、ボツテイクの方が本質だったりするんですよね (笑)」
「(笑) それは面白いな」
「選ぶっていうこと自体、やっぱり仕事してる感じっていうのは結構、想像の世界だと逆に動いていたりするじゃないですか。理屈とかでどうしても計算入ってくるから…」
「ボツテイクねえ。いいですね (笑)」
「僕の場合はほら、映画音楽とかだと、監督がボツにしちゃうから」
「ああ、なるほど」
「『ラストエンペラー』の場合も半分がボツですから。40曲以上書いたのに、20曲以上ボツだもん。あれ、どこいっちゃったかな。ボツテイクだけ出そうかな。リベンジだな」

<著作権と原盤権>

今回の番組収録は、4月21日にUSTREAMで生配信を行いましたが、権利処理の関係でインターネットのストリーミングでは流せない音源が多数ありました。放送では使用できる楽曲がなぜ、インターネット通信では使用できないのか。その疑問に関し、株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス (JRC) 代表取締役の荒川祐二さんに伺いました。

「まず『著作権』に関して言うと、原則的には、ほぼかけられます。一部の例外として、昔の "専属作家契約" というものをしていた作家さんのものは、かけられない場合もありますが、基本的には「ルールに従ってお金を払うよ」と言っている利用者であって、著作者人格権、それから隣接権者の部分の権利処理をきちんとしているのであれば、JASRACやJRCは、基本的には応諾義務 (許諾に応ずる義務) がありますので、ほぼ問題はないです。今回のような場合、本来はプラットフォーマーとしてUSTREAMが払うのか、RADIO SAKAMOTO (J-WAVE) が払うのか、という部分の問題がありますけど、今回は「J-WAVEが払います」ということでしたので、その部分はほとんど問題なくクリアされています」

「一番の問題は『原盤』なんですね。原盤というのは、放送局の場合は「商業用レコード」という言い方をしますけど、包括的に使っていいという契約が事前にある訳ですね。そして、権利者側からすれば、後で、使われた分に関しての報酬を請求する権利『報酬請求権』があるという位置付けです。ところが、配信・通信というこころで使われるものについては、権利者、原盤権利者が持っている『許諾権』が必要になります。なので、事前に「この曲を使いたい」という申請をして、条件が合えば使える場合もありますし、条件うんぬんではなくて完全に使えないという場合もあります。それから、許諾権に関しては権利者が多岐にわたる場合もありますので、その中でひとりでもダメって言ってしまえば全部ダメになってしまう。特に今回のような古いものだと、権利者自体を追っかけられなかったり、分からなかったりという事もあります。放送の方では使えるけど、USTREAMでは使えないという、そんなところが主な理由です」

「現在『著作権』に関しては、USTREAMでも同じように使えるようにする方向に向かっています。古いものに関してはなかなか難しいのですが『原盤』についても、これから出てくる新しいものに関しては、できるだけ一括で管理できるようなルール、スキームを作れないかと、私たちも頑張っています」

<作品募集中です!番組オーディション>

今回はスペシャル企画「昭和裏歌謡特集」のため、オーディション・コーナーを休止させて頂きましたが、RADIO SAKAMOTOオーディションは引き続き、皆さんの作品をお待ちしています。音楽はもちろん、それ以外のジャンル、例えばアートや映像作品、ダンス作品、文学作品、絵画、ポエトリーなどなど、ジャンルに関しては全く制限していません。応募形態は、CD、MD、DVDプレーヤーで再生できるオーディオ・フォーマットでお願いします。あて先は、〒106-6188 J-WAVE「RADIO SAMAMOTO」係まで。プロフィールと写真も添えて応募してください (歌詞や楽曲解説なども大歓迎です) 。また、このオーディション・コーナーは、PODCASTでも配信されます。すでに著作権管理団体に登録している作品の応募は受け付けられませんので、ご注意ください。

RADIO SAKAMOTOオーディションに御応募頂いたデモ作品にまつわる個人情報の管理、作品の管理は、J-WAVEのプライバシー・ポリシーに準じております。詳細は、こちらを御確認ください。

■YMO サイン入りプレゼント! "commmons: schola" 第5巻

坂本龍一完全監修による音楽全集 "commmons: schola" シリーズから、4月21日に発売になった、ドラムとベースという楽器に焦点を当てたシリーズ第5巻。こちらに、Yellow Magic Orchestra 3人のサインを入れて1名の方にプレゼントいたします!ご希望の方はコチラから、番組の感想などをお書き添えのうえご応募ください。当選者の発表は、発送をもって代えさせていただきます。

"commmons: schola" 第5巻は、ドラムとベースという楽器に焦点を当て、高橋幸宏と細野晴臣が選曲を担当。ピーター・バラカンを案内役に迎えて行われた坂本・細野・高橋による鼎談のほか、推薦盤・年表等で構成される120ページに及ぶ本と、Yellow Magic OrchestraによるThe Beatles「Hello, Goodbye」と、Sly & The Family Stone「Thank You For Talkin’ To Me Africa」(ヴォーカルはCrystal Kay) のカヴァーの他、全15曲を収録したCDのセットです。

■ 詳しくは commmonsmart (コモンズマート) へ。
坂本龍一が教授ならぬ講師を務める「commmons: schola」の動画講義や、湯山玲子さんとの対談『男女公論』などが読めます。
http://www.commmonsmart.com/