RADIO SAKAMOTO

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ARCHIVE:120506

「坂本龍一です。今回はね、ニューヨークからお届けします。日本は夏日があったりするようですけど、こっちも暖かいです。先週も28度くらいはありましたかね。今年は暖冬で雪がほとんど降りませんでしたけど、4月末に、中部のアメリカでしたかね、吹雪が吹いて。まあほんとに世界中どこでも、かなり異常な気象なのかもしれませんけども。日本から帰ってきて、アナウンスもありましたけど、来年の大河ドラマ のテーマを書くことになってですね。(2013年 NHK 大河ドラマ「八重の桜」) 作曲、オーケストレーションをやっていました。」


<Kraftwerk ─Retrospective 1 2 3 4 5 6 7 8─>

「4月にね、ドイツのバンド、Kraftwerkがニューヨーク近代美術館 MoMAで、8日間ぶっ通しで、過去に出してきたアルバムを一枚ずつ演る。というのがありました。連続コンサートというか。(「Kraftwerk ─Retrospective 1 2 3 4 5 6 7 8─」) 僕は2日間、見せてもらったんですけど、面白かったです。ギャラリーとかミュージアムで音を出すとでですね、ほんとに音環境が良くなくて、嫌な音になってしまうことが多いんですけど、なかなか良かったので、びっくりしました。いまのクラフトワークは、メンバー4人のうち、とうとうFlorianも抜けてしまいまして、元々のオリジナルのメンバーが、Ralf Hütterという、リーダー格ひとりになってしまいました。コンサートが終わったあと、31年ぶりに会いました。それまで会ってなかったんですが、初めて会ったのは31年前の東京ですね、1981年。確か、最初のツアーで来まして、僕らYMO 3人で観に行きまして、その楽屋でクラフトワークとYMOという(笑) そのあと一緒に、当時はまだクラブがなかったので、六本木のディスコに行きまして、一緒に踊りましたね。その話をRalfにしたら、覚えてましたよ……「忘れられる訳ないだろ!」とか言ってましたけど。」

「4月の末、6日間ですけど、ニューヨークのダウンタウンのほんとに小さいライブハウス的なものがあって、ニューヨークのフリージャズのサックス・プレイヤー、ジョン・ゾーン (John Zorn) という人が持ってるところなんですけど。The STONEというね。そこでキュレーションていうか、人選ですかね……を頼まれました。90人でいっぱいになっちゃうような場所なのですが、人選とは言っても、コラボレーションというかね、僕もいっしょにプレイをしていたんですけど。……疲れましたね。初日(24日)は、キュレーションと言っても、自分ですね。自分で自分をキュレーションして、1日2回の公演で、その後は、ジョン・ゾーン、山口万葉、テイラー・デュプリー、にしなあや、大友良英、アート・リンゼイ、スティーヴン・リティエロをお迎えしました。」

今回のRADIO SAKAMOTOでは、この貴重なLIVEの音源から、4月27日に行なわれた、テイラー・デュプリーとの演奏をオンエアしました。


<"脱原発" を掲げたロック・フェス『NO NUKES 2012』>

「7月7日・8日に、"脱原発" をテーマに掲げたロック・フェスですね、音楽フェスティバル『NO NUKES 2012』というのをですね、幕張メッセで開催することにしました。去年の3月11日の事故以来、まあ、どういう形で、音楽家も声を上げていったらいいか、ということは、もちろん僕も考えていましたし、ひとつはね、大友良英さんたちの『プロジェクトFUKUSHIMA!』に参加したりですね、まあいろいろ、試みようとしてきたんですけど、バラバラにやるのも大切なんですが、音楽家同士で集まって、束ねるとね、声が大きくなりますから。それもやった方がいいんじゃないかということで、今年の1月に、急きょ、やることになりました。普通、フェスティバルっていうと、1年前から計画してやるものだそうなんですが、半年でやるというのは、ちょっと無謀だったのかもしれませんけど、幸い、声をかけたアーチストからは、予想を上回る参加の表明があって、ほんとに嬉しい悲鳴というかね。むしろ、自分も出たい。出さしてくれ。というような人もたくさん現れたりしてですね、調整が大変でしたけども。」

「"脱原発" と言ってもですね、別に音楽家の中だけではなくて、一般に、あるいは政治家の中にもね、いろいろなイメージの違いっていうのがあると思うんです。「20年後に、ぜんぶ原発をやめましょう」「〜年頃にはやめましょう」「すぐやめた方がいいんだ」──だけど、方向としては、原子力に依存しない社会を作っていこう。ということは、現政権も言ってることですから、本筋では間違っていないと思うんで、まあそういう小さな意見の違いを越えて、大きく、みんなで集まろうという主旨ですね。今回の主旨に賛同して出演を決めてくれたアーチストたちは、二日間で16組です。」

「これをやろうと思った、ひとつのキッカケはですね、あの『さようなら原発1000万人アクション』という、1000万人の市民の署名を集めようというアクションがあるんですけど、そこの会に、僕も名前が連なっていまして、そこの鎌田慧さんという原発の問題を40年くらいかな、関わってらっしゃるジャーナリストがいるんですけど、彼に背中を押される形で始めました。いまね、700万人近い、署名が集まっているみたいなんですが、ま、彼らの活動に寄付することにしています。」


<今年のWORLD HAPPINESSは前夜祭も>

「はい、それで今年の夏はですね、NO NUKES 2012 だでなくて、2008年からやっている『WORLD HAPPINESS』も、もちろんやりますね。こっちはね、8月12日(日) いつものように、東京:夢の島公園陸上競技場で開催します。そして今年は、前夜祭『WORLD HAPPINESS大前夜祭 〜音楽解体新SHOW〜』を、7月14日(土) に恵比寿ザ・ガーデンホールで行なうそうです。」


■『NO NUKES 2012 』開催は、7月7日(土)・8日(日)
http://nonukes2012.jp/

■さようなら原発1000万人アクション
http://sayonara-nukes.org/

■『WORLD HAPPINESS 2012』開催は、8月12日(日)
http://www.world-happiness.com/

<"commmons: schola" 第10巻は『映画音楽』>

「今月30日に、僕が監修している音楽全集『commmons: schola (コモンズ・スコラ)』の10巻目が出ます。全30巻を予定していますので、まだ半分も来ていないわけですけど、うーん……大変だ。今回は "映画音楽" です。僕自身も、いくつか映画音楽もやってきましたし、ポップスでもなく、クラシカルなものでもなく、即興でもなく、映画のための音楽というのは、思い入れがありますね。もちろん自分がやったものに思い入れがあるだけでなく、先輩方のものも、とても思い入れがあるし、やはり映画を観ていても、気になってしまいますね。作曲家たちの試みとか狙いとかね。」

「今回、『schola』の10巻目を作るにあたって "映画音楽とは何か?" という、そもそも論から始まりまして(笑)、映画のために作られた音楽をですね、初期に遡って、現代まで見渡してですね、随分、時間のかかる作業だったんですけど。まあ世界中で映画っていうのは作られてるわけですから、何も欧米だけではない訳で、これをね、全部網羅するとなると、たぶんscholaの全30巻を使わないと駄目かなという気がしますけども。大変でしたけども、とても楽しい作業でね、知ってるつもりでも知らないものがあったりとか、知らない知識を掘り起こしたりですね、40年以上前かな……に観た映画を、もう一度観たりですね(笑)、随分、記憶が曖昧だったりもしました。」

「映画が生まれて、約115年が経つわけです。 音が付いて、トーキーになって、85年くらいですかね。大雑把に、100年くらいの歴史があるわけですけど、まあね、俯瞰するとなかなか面白いものがありますよ。で、映画がトーキーになる前のサイレント・フィルム時代も、もちろん映画館で、音は、音楽は付けていた訳ですね。だからその、サイレント・フィルム時代の音楽の付け方を踏襲して、トーキーになってから、映画音楽というのは歴史が始まるわけですけど。最初はクラシックの作曲家もですね、随分、新しいメディアである映画というものに注目しまして、時の大芸術家、大作曲家なども、こぞって書いてる訳なんです。それがどんどん時間が経って、いわゆる映画の為に音楽を書く、専門の人っていうのも、出てくる訳なんです。」

「今回の schola 10巻 に収録されているのは24曲あるんですけども、どれもこれも面白くてね。これ自体が何百曲の中から厳選されて、ほんとは入れたかった曲もたくさんあるんですけど、その中でも僕が好きな曲は、映画「欲望という名の電車」より、アレックスノース。ほんと天才的だと思うんだけど、映画の世界では名を馳せた人ですね。それから、映画「ホゼートレス」より、武満徹さん。この曲は、日本人の音楽とは思えないですね。この時代、1950年代のフランスの作曲家が書いた音楽のように、僕には聴こえます。これを、ほとんど音楽教育らしいものを受けていない、独学に近い日本人の作曲家が書いているという、ほんとに、驚きなんですけど。しかもロマンティックでね、ボクサーのドキュメンタリーに付ける音楽としては、ちょっとこう、ロマンティック過ぎる気もするんだけど(笑)、でも、もういいんです。これだけ素晴らしければ。……という気持ちにもなってしまうくらい。」

「それから『schola』と言えば、テレビのNHK (Eテレ)の『schola (スコラ) 坂本龍一 音楽の学校』───あの番組の演奏の部分を、DVDでリリースします。長い曲もあったので、番組のオンエアでは編集してしまったりせざるを得なかったわけですけど、DVDということで、完全版と言いますか。それを出そうということになりました。」


■坂本龍一がレーベル・オーナーを務める "commons "
http://www.commmons.com/

■『commmons: schola (コモンズ・スコラ)』
commmons: schola vol.10
Ryuichi Sakamoto Selections: Film Music
http://shop.mu-mo.net/avx/sv/item1?jsiteid=CMM&seq_exhibit_id=57130&categ_id=572501

■『坂本龍一 : schola live (仮)』 Blu-ray Disc でのリリースも予定
http://shop.mu-mo.net/avx/sv/item1?jsiteid=CMM&seq_exhibit_id=58442&categ_id=572501

<オーディション総評>

いつもオーディション・コーナーへの投稿、ありがとうございます。投稿作品のフルサイズでの視聴は、こちらのページからどうぞ。今回、紹介させていただいた『フィールドレコーディング』部門の作品で、トイレの音を録音した作品がありましたが、教授もコンサート会場のトイレの音を、本番直前に収録して、そのままコンサートで使ったことがあるそうです。

「僕も3年くらい前かな、ドイツのマンハイムというところで、Alva Notoといっしょの公演のときに、本番直前にトイレに行ったら、そこのトイレの音がすごく良くて(笑) 急いで楽屋にレコーダーを取りに帰って、何分か録音して、その音をすぐに本番で使いましたけど。トイレとかはね、あれ配管のせいだと思うんですけど、結構いい音がするんですよね。まあトイレに限らず、家も街もなかなか面白い音に溢れていると思うので、耳を、こう、おっ広げてですね、歩いてみてください。最近はスマートフォンとかでも簡単に音が録れるので、気が付いたら、パッと録ると。」

そして今回から『LOVE!ハイロ』部門を新設。この部門は、藤波心さんと、かなるさんが歌う「LOVE!LOVE!ハイロ」をリミックスしていただく部門です。今回、皆さんから投稿していただいたリミックス作品について、藤波心さんにコメントを頂きました。

「リスナーの皆さん、坂本龍一さん、こないだはどうもありがとうございました。藤波心と申します、高校1年生です、今日はよろしくお願いします。わたしのことを、ご存知ない方もたくさんいらっしゃるかもしれませんが、もともと私は、秋葉原なんかを拠点に、B級アイドル (地下アイドル) をやっています。去年の震災をきっかけに、いまの日本だったり、原子力発電所というものに興味を持って、脱原発の声を上げて、そういう活動をし始めています。いろんな所に行って感じるのは、若い世代が少ないということです。この「LOVE! LOVE! ハイロ」は、若い人が聴きやすい、頭に残りやすい、いい感じの曲になっていると思うので、これからも、もっとたくさんの方にリミックスしていただきたいなと思っています。RADIO SAKAMOTO の「LOVE!ハイロ」部門、私も聴かせていただいたんですが、どれも個性があって、私の声というか歌が、こんなに変わるんだっていう驚きと感動でいっぱいでした。私もYouTubeとか結構チェックしているので、ぜひ、皆さん、どんどんリミックスを出して、アピールして頂きたいなと思います。もし良ければ、ぜひ、坂本さんもリミックスしていただけたら、すごい嬉しいです。今日は、ありがとうございました。」

■藤波心オフィシャルブログ『ここっぴーのへそっぴー』
http://ameblo.jp/cocoro2008/
オーディション・コーナーで紹介した作品はこのサイトでも試聴できます。またコーナーは、全体を世界へ向けてポッドキャスティングでインターネット配信しています。すでに著作権管理団体に登録している作品の応募は受け付けられませんので、オーディションに応募される方はご注意下さい。

※オーディション応募作品をじっくりと聴けるポッドキャスティングは近々このサイトにUPされます。お楽しみに!
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